2000年 アメリカ、イタリア制作


ジュゼッペ・トルナトーレ監督


エンニオ・モリコーネ音楽


マレーナ・スコルディーア:モニカ・ベルッチ

レナート・アモローソ:ジュゼッペ・スルファーロ


レナートの父:ルチアーノ・フェデリコ

レナートの母:マティルデ・ピアナ


ボンシニョーレ教授、マレーナの父:

ピエトロ・ノタリアーニ







この女優さん、モニカ・ベルッチと言って、その美しさ

から”イタリアの宝石”と呼ばれてるそうなんですが


私、全然知らなくて、この映画は彼女の代表作となり、

大ブレイクしたそうです。秀作でした。



物語はシチリア島の小さな漁村カステルクトが

舞台で、主人公の一人、レナート少年の目を通して


第二次世界大戦によってドイツ軍に占領され

翻弄される村人達の様子をリアルに残酷に


描いています。


マレーナはその美しさから村中の男たち、思春期の

男の子達の憧れ、女神の様な存在



しかし、村中の女達は彼女の美しさに嫉妬し羨望と

憎悪のまなざしを向ける。


前半は、12才のレナート少年のエピソード中心に

コミカルに描いて、後半はリアルで残酷な戦争を


思い知らされます。


レナートは12才ながらマレーナに夢中で寝ても

覚めても、父親に買ってもらった青い自転車で


彼女の行く所どこにでもついてまわって、今なら

完全にストーカー扱いです。







ある時は、マレーナの家の庭に忍び込み

干してある洗濯物の中から、彼女の黒いパンティを


盗み頭から被って恍惚となり翌朝までそのまま眠り

朝、父親が起こしに来て気が付き家族中から変態


呼ばわりされ、そのパンティを妹が「これ、わたしもらっていい?」

と言って今度は母親が大騒ぎして燃やして一件落着。


夜になると彼女の家の石壁の小さな穴から彼女の

行動を覗き観て、結婚式で旦那と写ってる写真を抱いて


一人踊るのをじーっと見て翌日彼女が踊っていた曲

”わたしの愛”をレコード屋で買って夜ともなれば



聴きながら、彼女を想う・・・




そんなある日、彼女の夫ニノが戦死したと公報が

入り街中の男たちが彼女とヤレるとニヤつく中、


レナート少年だけは、彼女が夫の死を哀しみむせび泣いて

いるのを観て、今まで性の対象としか観て来なかった


彼女に深い憐憫の情を表わし,彼女に対する気持ちがプラトニック

だけど、大きな愛に変わります。

葬式には、男がたちが寄ってたかって下心見え見えに

「困った事があれば私を訪ねて来なさい」と親切ごかしに


言い寄るのを聴き、苦々しく思いながらも自分の力では

どうすることも出来ません・・・






モニカ・ベルッチさんは映画の中でセリフがほとんどありません。

美しさをひけらかすことも無く、それでも女達からは、嫉妬され


男たちからは、好奇の目で観られ友達はいない感じの

マレーナを12才の少年レナートは彼女を守ってやりたいと


思うのでした。


そんな中、戦局が激しくなり、シチリアの小さな村

カステルクトもドイツの爆撃を受けてマレーナのお父さんは


建物の下敷きになって亡くなってしまいました。

父親の葬儀でも男たちは、力になれることがあったら


是非頼ってくれと囁きますが、それまでに体験した

嫌がらせや、裏切りによってマレーナの心には


何一つ響かず笑顔一つ見せず無表情に聞いているだけでした。


夫と父親を亡くし収入もないマレーナは今日を生きて

行くために娼婦になります。



長かった綺麗な黒髪をバッサリと切り、真っ赤に

染めて街の娼館の前の広場に覚悟を決めて座り


タバコを吸おうとすると四方八方からライターを差し出す

男たちの手を観てマレーナの絶望の表情が痛々しかったです。





街のうわさはどんどんエスカレートしていき「あばずれ」

「ドイツ兵とも寝る女」、そんなうわさにショックで倒れるレナート


母親は悪魔祓いを受けさせますが、お父さんが「そんな事で

治るか!女と一発やればすぐ直るんだ」と風俗店に連れて


行きマレーナと似た娼婦相手に初体験させるんですね、

このシーンには驚きましたね、イタリアのお父さん、お国柄


なんでしょうか・・・


でも、この体験によってレナート少年はコールガールに

なってしまったマレーナを受け入れる事が出来て


以前の様に追い掛け回す事はしなくなり、静かに

見守る様になったと思います。


それから月日が経ち、やがて戦争は終焉を向へ

その解放感に村の人々は狂喜するが、一方で


戦争のために溜まっていた鬱憤が一気に爆発

するようなことが起こります。


村の女達がナチスドイツ相手に稼いだとして

下着姿のマレーナを引きずり出して、ハサミで髪の毛を


むしり取り、血が出るほど打たれ凄まじいリンチを受けます

ナチスを相手にしていたのは、マレーナだけではないのに


他の女達は逃げてしまったのでしょうか、このシーンは

ほんとに観るに耐えなく、あんなに「困った事が有ったら


助けてあげる」と言っていた男たち、誰一人マレーナを助けず

皆高みの見物する始末です。


レナート少年もただ涙で観ているしかありませんでした。








村の女達に「この村を出ていけ」と叫ばれ、マレーナは

怒りで獣のような悲鳴をあげて、ヨロヨロと娼館に戻り


翌日、マレーナは黒のスカーフで顔を隠し汽車に乗って

村を出ました、それからひと月過ぎた頃マレーナの夫ニノが


村へ帰ってきました。戦死は誤報で、戦で右腕を失い

捕虜になったけど、無事に帰って来ましたが、村の人間は


後ろめたさもあって、マレーナの行先を言えず、レナートも

会う勇気がなかったのでニノに手紙を書き自分を名乗り


マレーナの行先を告げ、村の人達は皆マレーナさんを

悪く言いますが、マレーナさんが好きだったのは


貴方一人だけだったことを、僕は知ってます。それを

読んだニノは直ぐ出かけて行きました。


一年が過ぎた頃、なんとニノとマレーナは村へ帰って

来たのです。



リンチした女達が「よくも帰って来れたものだよ」と言うと

別の女が「だってシチリアの女だもの」・・・・・



観終わって、この映画は、レナート少年とマレーナを

通して、村の人々の羨望、欲望、嫉妬、ねたみ、ひがみ


憎悪などをはっきりと描いた群像劇のように思いました。

戦争になれば、この村だけでなくどこの国の人間も


この様になると言う人間の本質を描いて重厚な作品に


なっていたと思います。


モニカ・ベルッチさんが素晴らしかったですね。




画像はお借りしました。