2012年 ポルトガル フランス制作

マノエル・ド・オリヴェイラ監督


キャスト

カンディディアニ:ジャンヌ・モロー

ドロテイア:クラウディア・カルディナーレ


ジェボ:マイケル・ロンズデール

ジョアン:リカルド・トレバ


ソフィア:レオノール・シルヴェイラ

シャミーソ:ルイス・ミゲル・シントラ



マノエル・ド・オリヴェイラ監督は1931年から

映画監督されているんですが、わたし、一本も


観た事がなく、この映画が初めてでした、

家族の物語を描いて、どこの国でもこう言う人達は


居るだろうなという気持ちになりました。


結末まで書きます・・・・・



物語が始まると直ぐ、大きな船が停泊している

岸壁に一人の男が佇み、不安を煽るような


クラシックな音楽が鳴り異様な雰囲気で

始まります。



シーンは変わって、石作りの小さな家の一室で

部屋の真ん中に大きなテーブルがあり、


それ以外は小さな棚のような物が部屋の隅に

あるだけで、住人が質素に暮らしているのが、


解ります、主人公のジェボは、街にある会社の

帳簿係りとして、細々と暮らし、妻のドロテイア、


息子の嫁ソフィアと三人で、住んでいます。

ジェボとドロテイアの息子ジョアンは八年前に


失踪したきり家に帰って来ず、盲目的に息子を

愛している、母ドロテイアは、夫を責め、嫁を責め


泣き暮らしています。



ジェボ



嫁のソフィア


ジェボは息子が失踪した理由を知っているのですが

妻のドロテイアは、息子さえ帰ってくれば、皆が


幸せになれると信じているので、あえて、「ジョアンは

元気だよ」と言い聞かせ、真実に気づいてるソフィアは、


ドロテイアにも、本当の事を話すべきだと、哀願しますが

ジェボは「そんな事をしたら、ドロテイアは死んでしまう」と


ソフィアの願いを聞きません。ある晩唐突にジョアンが

帰ってきて、ジェボに向かって、「父さんのような


人間は、生まれた時から負け犬だ!」と毒づき

ソフィアには、「俺は泥棒だ、一緒に金を持って、


逃げよう」と誘います。



ジェボとドロテイアの友人、カンディディニアと

シャミーソが訪れ、この家で、時々開かれる


コーヒータイムが始まります。







上の写真のランプの光りは素晴らしく、密室劇で

この部屋から、カメラが移動する事は少なく


映画の1カットがすべて、絵画のように重厚さが

あり、特に真ん中のランプは素敵で、


カルディナーレとジャンヌ・モローのツーショットは

豪華で、嬉しいシーンでした。


夜になって、皆が寝た頃、ジョアンは、ジェボが

会社から預かってきた、金の入った、カバンを


盗もうとして、必死に止めるソフィアを蹴飛ばし

カバンを持って逃げます。


騒ぎに気が付いたジェボはこの期に及んでも、

ドロテイアには「何でもないよ」と、寝室に戻します。


翌朝、ドロテイアは、ジョアンの不在を嘆くだけで

寝室にこもり、泣いているのを、ジェボは


「泣かせておこう、大切なのは、ドロテイアに

真実を知らせてはいけない」と嫁のソフィアに


まるで、遺言のように、ソフィアに感謝と、今までの

気持ちを伝えるシーンは、小津安二郎の


「東京物語」で、笠智衆が、息子の嫁、原節子に

感謝する言葉を思い出して、しんみりでした。


そこへ、突然玄関のドアを激しく叩く音がして

警察が入って来て、ジェボは、「金を盗んだのは


私です」と言うのを、何も知らないドロテイアは

口をポカンと開けて、何が起きたの?という


顔して、ストップモーションで、ラストです・・・・・



映画全体が、シンプルで、且つ大胆な演出で、

舞台劇を観たような感じで、ラスト、年老いた


ジェボの心情を思うと胸が詰まります・・・・・





画像はグーグルサイトから

お借りしました。