【選んだ理由】
日経の書評で見つけて興味を持ったため、購入。


【内容】
 ある結果を出力する際のコンピュータと人間の違いに焦点を当て、各々の得手不得手からコンピュータに代替される仕事について述べている。また、ホワイトカラーや子供の教育がどうあるべきかについても論じている。

 人間は単にパターンの暗記で解を選んでいるのではなく、たまたま知り得た経験の意味を理解し、全く異なるシーンに適用できる(一を聞いて十を知る)。これはコンピュータには苦手である。そのため、「一テラを聞いて十を知る」低レベルの知性が研究されている。つまり膨大なパターンを覚えさせ、判断を下すということ。結果的に人間が高度に考えた結果と同じ出力になればよい。 

 コンピュータは知識を蓄積したり、手順どおりの作業をしたり大量データから傾向をつかみとることが得意。つまり、暗記と計算とパターン認識を最も得意とする。一方で、脳の働きのうち、論理と言語を駆使して高度に思考し表現する仕事は苦手。また、人間の多くにとって容易な、見る・聞く・感じるなどの五感を使った情報処理も比較的苦手。

 コンピュータが得意なことは全て彼らに代替されてしまう。一方、人間にしかできないこととしては、まったく見かけも様相も異なる事象の中に共通項や意味を見出だし、それに対して理論を与える活動。

 この能力を鍛えるためには言葉に出さずにじっと論理的に考えて答えを出すことが重要。もっと重要なことは長時間かけて自然を観察したり、実験したりしながら物理や生物の仕組みや法則を体感して脳の中で概念構築を促すことが有効。


【感想】
 人間の思考パターンについての記述が非常に興味深い。人間の思考の特徴は、帰納と演繹のブレンドである。一般に、帰納の方が省エネルギーで済むため、放っておけばこちらを使うようになるらしい。確かにわかる気がする。なんとなくやってしまうことのなんと多いことか。論理的に考えているつもりでも、その思考はパターン化されていないか、常に問わねば。

 著者が述べているように、コンピュータは情報の収集、出力においては劇的に進化を遂げるだろう。求めている情報に精度良く、早くアクセスできるようになるはずだ。しかしながら蓄積された情報は人間が過去に行った結果である。未来は人間にしか創ることはできない。温故知新は人間にしかできないはずだ。真に革新的なものは言語化できない人間の能力から生まれる。そのようなものはごく一部の人間からしか生まれないが、論理的に思考し、さらに非論理的であってもアイデアを出し続けることが一人一人に課せられた使命だ。



 数学を勉強したくなる良書。細野数学が懐かしい。この人の本をもう少し読んでみよう。

★★★★★




コンピュータが仕事を奪う/新井 紀子

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