僕は書店の店員をやっているのですが、こないだいつも来る馴染みの出版社営業の女性社員に、個人的な身の上話をされた後、
「jagさんて本当に話しやすくて、癒し系で、心のもやもやを聞いてもらうとほっとしますよ~。」
な~んて言われてしまいました。
これは、サラリーマン、組織人、庶民としては自慢であり、俺って中々人のためになってるかも! いい人かも! なーんてうぬぼれてしまう。
しかし、僕が自分で勝手に思っているだけかもしれませんが、もう一つの面・・・
つまり、アーティスティックな側面。。
何かを創造して人に訴え、刺激を与えるという点になると、こんなこと言われている自分はぜんぜん駄目だ・・・・。
やはり、どこまでも、人の波に埋もれるだけの凡人だな、とつくづくガッカリする・・・。
まあ若い頃はギラギラしていましたから、自分のこのような普通っぽい面を認めたくありませんでした。
まあ僕は昔から、みんなと簡単にどうも馴染めないタイプというか・・・、そんな孤高のアーティストを地でやってた部分もあるんですが、無理に気取って狂気をオーバーに演出、強調していた部分も大きい。
でもやはり、生まれもった天然のアーティスト・・・、カリスマには太刀打ちできないものなんですね。
曲にしても、ステージにしても、その存在感や面白さにおいても、至って普通という顔で、強烈なことをサラッとやってのける、自覚してない変人がいるんですよね~。
この「自覚してない」という部分が重要でして、わたしのように意識してそう振舞うのは、その時点でもう負けなんです。
かつてのバンドマン時代、身近なアマチュアにも、少なかったけど、そういう人って確かにいました。
まあ、スケールはけた違いに大きくなりますが、例えばジョンレノンとかマーク・ボランとかアクセル・ローズなんかを見てたら、アーティスティック、独自性、スター性・・・言いたいことわかるでしょ?
そういう華というか、生まれ持っての個性がある人間を見て、正直死んでもあそこの半分も、自分は面白くなれないな、と悟ってしまった部分もあります。
そういえば、話はかわりますが、こないだうちのバイトで、パンク寄りロックンロールバンドをやってる子が、仕事を辞めてゆきました。
別の、給料のいい重労働をしながら、自分の力で本気で音楽で食っていくことを目指すとのこと!!
彼ら僕が出会ってきた中でも、本当に音楽好きな奴らでしたね!
探究心もとても旺盛だし、僕と普通に話せるほど古いロックにも詳しい!!
いつも作品を作ることが楽しくて仕方ないという感じで、才能もなかなかあると思う!
彼ら、メインは三人いるのですが、三人とも人として、若いのに本当に立派な奴らだったなぁ~。
仕事は最初から器用にそつなく覚えたし、人格も冷静で控え目で、余計なことは一切言わない。
協調性があるから仲間うちでも、凄く愛されている。
ここ数年で、彼らが下手なドシ踏んだり、こちらが迷惑こうむったことは一度もなかった。
いつも本当気持ち良くて、付き合いやすい素直ないい奴!!
一緒に仕事するには最高ですよ!
「はいわかりました! やっておきます!」って、本当に使いやすいしね!!
そうそう、彼らの演奏も何度か見たことがあります。
楽器もなかなかだし、まとまってるし、乱れてること、不自然なこと、恥ずべき勘違いの類がほとんどないのが凄い!!
いや~その若さで、すばらしい!!!
でも彼ら、パンクバンドなんですよね・・・・
彼ら先日、僕に「ライブをこなしてるが、どうもファンが増えないし反応がない。曲も自信があるし、俺達悪くないと思んですけど、どう思いますか?」と聞いてきましたが、いつもそのたびに僕が彼らに言ってた事は、
「モエヲ(仮名)」か「ジェロさん(仮名)」、またはあれくらいの奴を一人入れるべきじゃない?
ということです。
それを聞くと彼ら、そして周囲にいるみんなが、「出た~!!」と言ってドッと笑った。
みんな僕がふざけて言ってると思っていたみたいで、僕もそのままなんとなく一緒に笑い、いつも話はそこで終わってしまうのだが、でも実は僕は毎回大真面目に言っていたんですよね!!
僕が名前を出したこの二人ですが、まあ同じ我が店のバイトだった奴らなんですけど、「モエヲ(仮名)」は、毎回女のバイトが入るたび真剣に好きになってしまい、告白するような男だ!
楽器できるのかどうかも怪しいが、毎回ギター抱えて、どう見ても妖しい不気味な格好で現れては、(本人曰くガクト風)朝から晩まで店にいる。
ある時、女ノコの気をひこうとしたのか、自分が大事故に合い生死をさまよい、仕事に行けないという電話を、友人にさせてきた事がある。
その担ぎ込まれたという病院に確認したら、そんな方は本日は見えておりませんという、かなり迷惑というか、わけのわからない男だ。
その後退社したけど、彼がどのように今後生活してゆくのか、皆目見当がつきません・・・。
そしてもう一人の「ジェロさん(仮名)」
彼は月に3回もクルマのタイヤがパンクして、遅刻するような人だった。(ちなみに、半年に一回洪水で遅刻する・・・。)
彼は、絶対「はい」、「すみません」と言わない男!
「こうしてください!」と言うと、いつも「いやそれは、というか・・・・」
「 というかじゃなく、黙って言われたとおりしなさいよ!」と言われると、「 いや、いわゆる効率と時間の検討において・・・、会社の損益の点で・・・。」
「 うるさい! いいから黙ってやれや!!」
とにかく、やることはしっちゃかめっちゃかだが、何にでも口を挟み、理屈をうんざりするほど語る。
彼ら二人とも、音楽は好きみたいで、モエヲは口パクでラブソングを一度。
ジェロさんはギターを一度弾いてくれたことがある。(デスメタル!)
それは、
もう参った!! こんなの無理!!
という、予想をはるかに超えるぶっ飛びようでした。
CD-Rで焼いて、一度身内に聞かせたら、みんなハラをよじって笑うは、唖然とするは・・・。
でも、これだけ空気が読めない、濃厚でインパクトある人たちなのに、そんな人に限って何かを創造したり、本気で表現していこう、アーティスティックな活動をしようという意欲がないんだよなぁ・・・。
ちなみにこの人たちのことは、いなくなった今でも、話題が絶える事がありません!!
ある時、別のとあるバイトに、
「jagさんは、Aくんのパンクバンドの話になるたび、必ずモエヲとジェロさんの話をしますよね?なんでですか?」と聞かれた事がある。
僕はそれにこう答えました。
「おまえ、もしあのバンドにこの二人が入ったら、絶対ライブを見てみたいと思わない?」
「ああ、言われてみれば、絶対行くし、ぶっ飛びすぎてて病みつきになり、通っちゃうかもしれないですね・・・。」
「でしょ?そういう何が起こるかわからないスリルが、あの二人にはない?」
「なるほど、そういうことだったのかぁ~!!」
「Aのパンクバンドに決定的に足りないのは、その面白さ、ハチャメチャさだと思わないか?」
「なるほど、そんな真面目な話だったんですね!jagさんの言いたかったことが今はじめてわかりました!!」
多分彼らのパンクバンドは、このままだと、五年後のライブもきっと同じだろうな~、というのが目に見えてしまうんですよね。
その雰囲気というのは、表向きはクール気取りだが、控え目で、万人に愛される性格の、本気で不満のない人間がやるパンクロックなんですよ。
まあ彼らは純粋に楽器が好きで、演奏が楽しくて、曲作ってるのが好きなんだろう。
あと、自分が好きな、憧れのアイドルみたいになりたいってことも!
うん、わかるよ!
俺もそうだった!!
そういう人がロックな人生求めるのは、何にも悪くないよね?
でも彼ら、ライブでのしあがり、音楽で食うと言っている。
ライブってさ、見せるものだし、ショウだからね。
演奏も、パフォーマンスも何か飛びぬけた売り・・・例えば、世界一メロディーがいいですとか、詩が凄いですとか、サンタナ級のギターですとか、初期のアクセル・ローズなみの破天荒なキャラしてますとか、どこか華がないとなぁ・・・。
でも前回書いたように、近頃の日本のロックバンドは優等生風にしか見えない、健全な、いいヤツっぽいパンク、R&Rバンドも多い。
なので、もしかしたら、彼らでもデビューできるかもしれない。
デビューしたら、僕は知り合いだからCDくらい買うだろうけど、映像までは買わないし、きっと、タダでチケットでもくれない限り、自分からライブには行かないだろうな。
僕に思い込みがありすぎるのかもしれませんが、やはり、ロックンローラーとかパンクス、モッズ、そしてオリジナルを作って金を稼ぐ、アーティストと言う奴が、普通の平凡ないいヤツじゃダメでしょって思うよね。
俺みたいな、いい人ですね~なんて言われてる、本屋のおっさんが歌う熱いメッセージなんて、何度も見たく、聴きたくないでしょ?
まあ僕は趣味で、自己満足でやってるので、多分何度も見せちゃうけどね(笑)