いよいよ年末も近くなりましたね。

毎日仕事で息つく暇もないですが、そんな中、この寒い年末押し迫った時期に、妙に聴きたくなるのが、わたしの近年の定番、スティリー・ダンです。

まあ、こんなのを読む方はみな知ってはいるかと思いますが、スティリー・ダンは1970年代にメイン活動した、アメリカのバンド。

アメリカでも、ちょっと洒落た雰囲気の、都会っぽい音楽を演奏する、2名のメンバーのほぼワンマン(ツーマン?)バンドです。

 

というわけで、憔悴して帰宅し、こんな時こそのスティリー・ダンの1972年の記念すべきファーストアルバム、キャント・バイ・ア・スリルをチョイスし、さっそく流しました。

 

1曲目、全米6位を記録したというDo It Again

この曲は彼らの曲としては長い気がします。

 

とまあ、スティリー・ダンのアルバムは、突出して路線が違うというようなものはなく、大体どれも似た雰囲気で、すべて甲乙つけがたく良い。

そんな中、今日はあえてファーストを選んだのは、同じようにしんどかった2年前の年末の今の時期、このファーストばっかりを聴いていたことを、懐かしく思い出したからです。

 

個人的なお話ですみませんが、あの頃、わたしは家族と離れ離れになることが決まり、また長年の不摂生や疲労からか、体を壊してしまい、毎日部屋で一人、今後どうなるんだろうという気持ちで生活していました。

こういうの、本来なら思い出したくない、辛い記憶なはずなんですが、あの時の冬の晴れ渡った空が青い町の様子とか、「ああ、これで長年頑張ってきたわたしの家庭は終わるんだな・・・」という淋しい気持ちみたいなのが、どういう訳か嫌な記憶で残っている感じではないんですよね。

(もしかしたら、薄幸で寂しい境遇が嫌いではないのかもしれません。わたしのような人間が幸せでいいはずないという刷り込みというか、それが良くないのかもしれないですが、暗いんですよ性格が・・・)

 

あの時の、淋しく切ない感じを癒してくれた、あの染み入るような感覚を、スティリー・ダンの楽曲を聴くと、まだわずか2年なのに懐かしく思い出すんですよね。

とはいえ、優しい、いかにもな、狙ったかの癒し曲ばっかりというわけでもないんです。

なんか、真面目じゃなく、かといって陽気でふざけている感じでもなく、上手くてマニアックなのに独特の緩さがあり、非攻撃的なところが彼らのいいところで、気負わずに聴ける。

 

特にしんみり浸れるのが、この優しい雰囲気のDirty Workです。

大好きな曲です。

 

彼らは器用なのか、独特な人柄からなのか、ラテンな感じのリズムだったり、ジャジーな雰囲気だったり、カントリー風味があったり、明るいブギーだったりと、ホントどのアルバムも感心するほどバラエティーに富んでいますが、どれも計算してる感がなく自然な感じで、「ああ!」と思わせるスティリー・ダン色があるのは流石という感じです。

この初期は、凄腕スタジオミュージシャン録音の後期の作品よりはカチッとしておらず、バンド色も幾らかあり、ふんわり暖かい音なところもいいんです。

 

こちらも軽快なラテン風味が心地いい、大好きな曲Only A Fool Would Say That

もう全曲紹介したいくらい好きで仕方ないアルバムですよ。

 

ちなみに、このアルバムや次の作品まで、影の薄いリードボーカリストがいるんですが、半分くらいかそれ以下しか歌っておらず、いつのまにかバンドのクレジットから消えているという、そこも他のバンドにはあまりないところなんじゃないでしょうか。

ご存じ、スティリー・ダン=ドナルド・フェイゲン&ウォルター・ベッカーで、他のメンバーも徐々に、いつの間にやらという感じでフェードアウトしてゆき、やがてこの2人+凄腕スタジオミュージシャン録音化してゆくのですが、繰り返しになるけれど、サウンドの基調は一貫しているのが凄いです。

 

というわけで、近々また、このスティリー・ダンについては語りたいと思います。