白菜と言っても生の白菜ではない。玉、いわゆる翡翠でできた白菜である。

台湾の故宮博物院所蔵の故宮の至宝の一部が今、上野に来ている。その中の白菜の展示が、昨日の7日まで。薬20年前、北京の故宮を訪れた時、翡翠でできた野菜を見たような記憶があるが、こちらは全く別物であることは分かっている。


長い行列が国立東京博物館のゲートを抜けると延々と続くのが見えた。熱い日差しを避けるテントが数基張られているが、この行列に並んでまで見る気力はない。たった一個の白菜を見るために本館でこの行列だ。メインの平成館で行われている台湾故宮博物院の至宝展の会場はごった返しているに違いない。足は常設展に向かった。仏像でも見て帰ろうかと。

でもせっかくここまで来て、故宮の宝を一品も見ないで帰るなんてもったいない。平成館へ向かうことにした。外は思ったより短い行列。あと10分ほどで入館できると係りの人が言ってくれた。急ぐ人生ではない、10分くらいなら館内のビデオでも見て時間はつぶせる。

故宮は、昔昔、母が若いころに訪れ驚嘆したところ。一週間通っても見きれないほどの数の美術品が詰まっている、その美術品の一つ一つが超一級品と聞いていた。20年前私が訪れた時、何となく埃っぽく、空っぽのガラスケースがそのまま有ったり、母が感嘆した気分が伝わってこなかった。勿論玉座、その上の天井、玉で作った置物など手の込んだ細工がいっぱいあった。解説者が、「ここにあるものも素晴らしいが、もっと貴重なものは台湾に持ち出されているから、ぜひ台湾に行って見てください」と言ったのを記憶している。

その至宝の一部が上野に来たのだ。館内は人人人。書は読めないのでほとんど素通り。工芸品は目を見張るものばかり。これも玉、これも玉と玉の彫刻が、いっぱい。これだけの玉を集められたのは、権力の強さの象徴。勿論世界中でチャイナといわれる陶器は、その色と言い、形と言い、透けるほどの白磁など、足が止まってしまう。刺繍も信じられないほどの細かさ、スムーズさで、本当に人間が刺したのか。人針人針刺した女性の姿が浮かび上がる。

昔スワトウのハンカチに感激したことがあるが、あんなものではない。まさに絵画だ。

これだけの文化を生んだ大国中国。今、日本との関係がぎくしゃくしているが、為政者よ、昔の皇帝のように、ゆったりと自国の文化に身をゆだね、長い目で世界を見渡してほしい。

外が薄暗くなった頃、本館の横に並んでいた行列が、館内に収まるほどになった。まだ白菜を見るのに30分待ちとのこと。行列に加わって待つことにした。

思ったより短い時間で移動でき、白菜に出会えた。本物の白菜の大きさかと思っていたが、15センチほどの大きさ。後ろから「150円くらいの白菜かな」なんて言葉が流れてきた。意外と小さい。

葉っぱの先の方の緑が濃い。虫まで彫ってある。下部は白く輝いている。これがお姫様の嫁入り道具の一つだったとか。下馬評の高いものを、この目で確認した感動に包まれて、館を後にした。