小学生になるまでは、血が怖かった。
赤いペンキの染みが直視できないくらい。
でも、小学校の図書室に、「かこさとしかがくの本」があった。
そのシリーズはどれも科学を判りやすく教えてくれて興味深く、何度も繰り返し読んだが、なかでも
『あか しろ あおいち』
『ほねはおれますくだけます』
の2冊は頻度が高かった。
かこさんの絵はなんだかちょっとぴりっとエッジが効いてキャラクターが知的に感じる。
でも、怖かったり意地悪な感じはなくて、とても優しい。
その優しい絵と小学生になりたてでもよくわかる説明でもって、ビビりの私でも怖いもの見たさで本を手にできる絶妙なレベルまで降りてきてくださっていた。
そして、絵本を通してかこさんの教えてくださる人体の不思議はとてもとても面白くて、私はいつしかやみくもに怖がることはなくなった
(今でも色々ビビリだし、スプラッタは苦手だけど)
血がどういう風にできているのか。
人体の中でどんな役割をしているのか。
それがわかったおかげで「ただ怖い」のではなく「大事だから、失われることが怖いから、怪我に気を付ける」というところまで考えが及ぶようになったのではないだろうか、と今は思う。
「作者」という概念が身についたとき、『だるまちゃんとうさぎちゃん』と同じ作者だと気がついて驚いた。
普通の絵本や科学だけでなく多彩なジャンルをわかりやすく子供に伝える造詣の深さ……!
初めて触れたマルチな作家さんはかこさんだ。
姪や甥が小さい頃は一緒に『とこちゃんはどこ』を楽しんだ。
人混みにまぎれるとこちゃんを探す絵本。
いま調べたら、とこちゃん初版は1970年。『ウォーリーを探せ』は1987年。17年も前。エポック……!
遅まきながら最近、かこさんが亡くなられたのを知った。
情報に疎い自分がなさけない一方、知りたくなかった気もする。
最期まで第一線で描き続けて素敵な作品を世に出しつづけてくださったことに心から感謝しています。
子供じゃなくなったいまも、これからも、かこさとしさんの作品がずっと好きです。
ご冥福をお祈りいたします。