■手術に向けての準備
術前検査(MRI)や、一般的な健康診断と同じ内容の検査)を経て、家族同席のもと手術の説明を医師より受ける。
MRIの結果、右卵巣の嚢腫は6cm大。奇形腫という種類で、中身はおそらく油や水のようなもの、髪の毛や皮膚の組織などの柔らかいものだろうとのこと。
「まあ、ありふれた症例でよく行う手術です」との説明に、半分安心したような、半分不安なような不思議な気持ちになる。
診察室を出て時計を見ると、名前を呼ばれてから6分。
家族同席のわりには短いが、それでもこの医師の診察では一番長かった。


■手術前日
◆10:00
入退院センターで手続きを済ませる。
入院書類とともに高額療養費の「限度額適用認定証」を提出(重要)。
病棟に案内される。
前回(繋留流産手術)と同じ部屋、同じベッドだったので驚く。

◆12:00
昼食を食べる。

◆13:00
下剤(甘い液体)を飲む。
翌日の手術についてのオリエンテーションを受ける。

◆16:00
手術室の担当看護師と面談。手術の手順や予想される体調の異常などを説明される。
手術は全身麻酔。麻酔を始めると自発呼吸が止まり、麻酔を止めると自発呼吸が復活することを説明され、怖気づく。手術中は気管に挿管するため、目覚めた後に喉が痛くなることがあるらしい。

次に麻酔科の医師と面談。飄々とした雰囲気の気さくな男性。
「目覚めて激痛だったらと思うと不安です」
と私が申し出ると、
「ああ、それは大丈夫です。僕らもプロですから」
と言われる。
手術後は麻酔から目覚める前に、神経ブロック注射(?)という痛み軽減の措置を行うとのこと。

ちなみに、雑談で、前回の繋留流産手術で使用された静脈麻酔ケタミンには幻覚作用があり麻薬指定されていることを聞く。
「どんな夢を見ました?」と問われ
「カラフルな光の渦の中を飛んでいくような夢で、なんとなく看護師さんの手などの現実の感覚もあるんですけれど、まるでそのカラフルな夢の方が現実で、現実の方が夢であるような、不思議な感覚でした」
と、私が答えると、医師は、
「悪夢じゃなかったですか?良かったですね~」
と、あっけらかんと言う。
……いや、良くないですよ!!

翌日の手術の入室時間が12:00に決まる。
「えっ?H先生(産婦人科の担当医)は12:00まで外来がありますよね?いつお昼食べるんですか?」
と私が言うと、
「いやー大丈夫ですよ。彼はちょっと他の人にはできないくらい、よくやってくれるから」
などと濁される。

◆18:00
夕食。
重湯が出る。
21:00以降は絶食。ただし手術2時間前までは水はOKとのこと。

◆21:00
消灯。
少し本を読んだりしてから眠る。


■手術当日
◆06:00
起床。
ベッド上で血圧や体温測定など。特に異常なし。
血栓症予防の着圧ソックスを渡され、履くよう指示される。

◆11:50
担当の看護師さんに付き添われ、中央手術部へ。
エレベーターがなかなか来ない。
「ここ、前の手術の時も時間がかかりましたよ」
「そうなんですよ~!いつも混んでるんです」
などと世間話をしながら向かう。

中央手術部で、手術室の担当看護師二人に引き継がれる。ベテランっぽい方々。
前回の手術同様、とても明るく気さくに話しながら手術室へ連れて行ってくれる。
手術室に入ると、前日に面談した麻酔科の医師も待っており、手際よく準備を進める。予想外にアットホームな雰囲気で、あまり緊張しない。
ちなみにH先生(産婦人科の担当医)はまだいない。
「そうですよね。12:00まで外来ありますし。っていうかH先生、いつお昼食べるんですか?病気を治すのが仕事なのにご自分が病気になっちゃいますよ」
などと、全く要らない心配をする。

そうこうしているうちに、看護師さんが点滴の針を刺す。
だが、脳波を調べるヘッドセットを額に着ける方に気を取られて、まったく気づかなかった。手術中に、きちんと深い眠りに落ちた状態であるかを確認する装置らしい。

一通り準備が終わり、全身麻酔の薬を点滴に入れていく。
「冷たいような抵抗を感じますか?」
と聞かれるが、特にそのような感じはしない。
気が付くと眠ってしまう。

◆??:??
手術が終わり、声をかけられる。
「よく眠れましたか?」と問われ
「はい、お洒落なスーパーマーケットで買い物をしている夢を見ました」
と答えたことと、見ていた夢の内容は覚えている。
全身麻酔は、一瞬で意識が途切れて数時間が経過するようなものを想像していたが、実際は違った。しっかり眠って、夢を見ているような感じだった。普段の夜の眠りと同様に、しっかりと時間の経過が感じられた。

それからベッドに移され運ばれたのだが、意識が途切れ途切れでよく覚えていない。

◆14:00~
気づいたら病室のベッドに戻っている。時計を見るとちょうど「14:00」
意外と手術が早く終わったことに驚く。
口には酸素マスク、胸元には心電図、腕には点滴、膝から下にはフットポンプ(血栓症予防のためのマッサージ機)が取り付けられている。喉がいがいがとして、息が苦しい。そして、フットポンプの動きがわずらわしい。手術した腹部は以外と痛くない。ただ、意識が朦朧として、全身が重苦しく、火照ったように感じる。
体温を測ると37.8度ある。
医師が病室へ来る。
「体温が37.8度ありますが、大丈夫ですか?」と尋ねると、
「まあ、そんなもんでしょう」との回答。
まあ、そんなもんなのか……?と、回らない頭で納得する。

二時間ほどで、喉の痛みは治まる。全身に倦怠感があり寝返りも打てないので、そのままうつらうつらとベッド上で過ごす。
夜、看護師が点滴の鎮痛剤を入れてくれる。
「痛みが楽になりますか?」と聞くと、
「いやー……痛みがなくなるというより、眠くなるお薬ですね!」との回答。
実際、その点滴を入れるとすぐに寝入ってしまった。
正直、これが一番効いた薬だった。翌朝までにこの薬を二度ほど使ってもらう。

■手術翌日
点滴抜去。午前中に歩行開始。最初は看護師に付き添われる。立ち上がる時、激痛かと思いきやそうでもなかった。内臓の癒着を防ぐため、病棟内をよく歩き回るよう指示される。食事は昼食から再開。この日はまだお粥。

■手術翌々日
痛みがだいぶ楽になり、病棟内をぐるぐると歩き回るようになる。
二階にある売店やカフェに行ったりと、入院生活を満喫する。

■手術3日後
退院診察。てっきり内診するのかと思ったら、腹部に貼った傷痕保護テープを剥がしただけだった。
午前10時退院。一人で荷物を持つのが苦でないことに、自分でも驚く。

■手術から約3週間後
再診。特に問題なく、順調に回復しているとのこと。
「再発の可能性はありますか?」と尋ねると「もう片方に同じように嚢腫が出来ることはよくあります」との回答。
「ただ、ごくありふれた病気ですので、検診で見つかった時にまた手術すれば問題ないでしょう」とのこと。

また、「次の妊娠も、もう可能です」との医師の言葉が嬉しかった。
「妊娠したら、またこの病院に来ても良いですか?」と尋ねると、医師は「いいですよ」と快諾。
半年後の再診の予約をして、診察室を出る。

その後、手術をした右卵巣と思われる部分に時折鈍い痛みを感じ、受診。
ボルタレンやロキソニンを処方され、服用して様子を見る。
痛みは徐々に治まっていく。


■所感
初めての全身麻酔による手術ということで緊張したが、怖いものではなかった。
手術後の患部の痛みも、激痛ではなく筋肉痛のような痛みであり、痛み止めでなんとか耐えられるものだった。。
むしろ喉のいがいがとした痛みが辛かった。
次の朝を迎えるまでは高熱が出たりとそれなりに辛かったが、それ以降は日に日に回復していく。
腹腔鏡ってすごい!と感動した。

それから、手術が終わって翌月から妊娠可能というのも、妊娠を希望する身としては嬉しかった。

費用は、高額療養費制度の限度額+自費部分4,000円ほど。
また、医療保険(ア〇ラック等)から入院給付金(5日分)と手術給付金が下りたので、収支としてはプラスになった。