絵描きの間には(割と周知されている)暗黙の了解があります。
──職場に「絵を描くのが好き・得意」と知られるのは避けよう、というものです。
通常業務に加えて、サービス業務が増えるからです。
絵を描くことに興味のない人は、絵を描くという作業にどんな労力がかかるかを知りません。
「ちょちょっと描いてよ!」
この言葉を発された時には般若の形相を笑顔で覆い隠すのに必死です。
ちょちょっと?
は~ん、ならその分の給料ちょちょっと払ってよ!![]()
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私は絵を描くことが好きで、漫画アシスタントをしていますが、もちろん苦手分野もあります。
イラストと似顔絵です。
なんせ漫画と違って前後のコマがない一枚絵ですので、何をどう伝えたいのかが難しく、かわいらしい女の子のようなイメージキャラクターを考える引き出しも少ないのです。
おおげさに言えば漫画特化型と言えばいいのでしょうか。
医者の方々だってまず内科・外科に分かれ、更に専門分野に分かれているじゃないですか。
そういう感じです。
ここで問題です。
このイラストにを完成させるのにかかった時間は?
「色がついてるのは背景だけだし、1時間?」
「デジタルでしょ?30分とかじゃない?」
まず構図を考えてアタリ(だいたいの配置)を置くのに1時間。
ザっと下描きを入れるのに1時間。
ペン入れ(清書)に1時間。
これはまだ途中ですが、髪の描き込みに2時間。
で、最初に載せた状態に持っていくまで更に1時間。
オールカラーなら少なくとも更に2~3時間はかかっていたことでしょう。
描き始める前に資料集めの時間もかかっています。
もうね、私はね、声を大にして言いたいんです。
自分の積み重ねてきた努力と時間と労力とお金を、安売りしたくありません。
そして、すべきではありません。
絵を描くことって、どうして軽く扱われがちなんでしょうね。
時々考えては少し悲しくなります。




