かつて在籍していたZENのライブを観に行った際に対バンに名を連ねていたASHURA。


観たいような

観たくないような


後者の思いを抱いたのは、完全に出遅れている自分のバンドの進捗の悪さから来る劣等感からなのだが


複雑な思いで観た彼らのライブは


結論から言うとやはりめっちゃくちゃかっこよく、そして熱かった。

ボーカルのジュン君がライブで語っていたのだが、彼らにとってよき理解者でもあった近しい知り合いが最近亡くなったのだと。

その方への想いなども織り交ぜつつ一つ一つ言葉を慎重にかつ豪快に選んで吶々と話す姿はそれぞれがとても重みのあるものであり、熱いものだった。


この人、口だけじゃなさそう。

と失礼ながら思ったのも記憶に残っている。


だし、確かにその後のライブ展開は凄まじいものだった。

正直言ってもう出演している地元のバンドはかなり水を空けられていたように思えた。


ZENもけっこうよくなってたし、何よりきのぴーやメンバーが楽しそうにやってたのが心底嬉しかった。

お客さんノリもよくなってて、やっぱり俺の独りよがりがアンバランスを産んでたんだなと複雑な気持ちにはなってたが、これでよかったんだと本当に腹落ちした。


が。

とっても申し訳ないのだがASHURAに太刀打ちしていたかと言われたら(自分の中では思い入れもあり比べる対象ではなかったというのもあるが)そこはフラットに見て「ない」と思った。


それぐらいASHURAはすごかった。


ASHURAはASHURAだった。


自分の現状をまざまざと突きつけられて云々という感情はもはや影を潜めていて、我々のホームともいえるBe-1をまさに独壇場で揺らしまくっていた彼らに「早く挑戦したい」という高揚感でしばらく痺れていたように思う。


そこからは話が早かった。

カズポリはいい意味で囚われがなく、その性格をこの時ほど感謝した事はなかったのだが、サラッと言いのけてきた言葉に俺は急に視界が開けた気がした。


「メンバーは別に正式じゃなくてもいいでしょ。まずはライブやろうよ」


俺は結構何もかも準備しないと進めないタイプで、だからこそなかなかスタートまでが遅い。

カズポリは7割なら上出来。なんなら6割でもというタイプで(そしてなんだかんだとスタート時には10割に近い形にしている)その性格が俺にはかなりありがたかった。


そこからすぐに声をかけた二人のサポートメンバー。


まずは一人目、ベースだ。

カズポリは言う。

「いるじゃん、面白い子」


ほどなくしてカズポリから連絡が来た。

「夜海ちゃん、サポートからでも大丈夫ってさ」


そう。

hideバンドをきっかけに一緒にやってたベーシスト。

失礼ながらこれといってめちゃくちゃスキルがあるわけでもないが、「俺たちがやりたいバンドにはキャラも重要よ」と話すカズポリにとって、この上ないキャラの持ち主なのが夜海ちゃんだった。


今だから話すが俺は割とこの話には慎重だった。

別に好き嫌いで言ってるわけではないし短期間だけどバンドやってある程度の性格も知っている。

が、なんとなく、本当になんとなくだが、新しいバンドのベーシストというフレームに当てはまるかと言われればけっこう遠くにいた感覚だった。


ま、サポートなら。


最初は本当にこのぐらいの感覚でいた。

が、後に新バンドにとって代えのきかない人気メンバーになるのだから…

というのはもう少し後に語るとしよう。


これで

ボーカル

ギター

ベース(サポート)

ドラム

が決まった。


ライブできるじゃん。

と思ってもいた矢先、とある日に博多豚骨メタルバンド、BATTERYから連絡が来る。


「新しいバンド組んだって聞きましたよ。今度主催イベントやるから出ませんか?」


時は秋にも差し掛かる9月初旬。

カズポリからも「まずは最初のゴールを決めて動こう」という快諾が出てついにお披露目の目処が立つ。


本番の日から逆算すると足りないものは多いのだが、人間というものはそういうリミットをかけた方が明確に脳は動くもの。


そして、得てして最高のタイミングで必要なものも寄ってきてくれる。


それがこのバンドの

「最強の最後の1ピース」だった。


ある日、俺はチャットで何気なくとある男と会話していた。


きのぴーである。


「新しいバンドどう?」

「メンバーもある程度固まってきて今度BATTERYのイベントに出る事になった。ようやくお披露目だよ」

「へー、面白そう」


こんな会話をしていた記憶があるのだが

ここできのぴーの「ある言葉」を思い出した。


ZENでの俺にとっての最後のライブが終わった後、家まで送ってもらった時にかけられた

「お前とカズポリのバンドって興味ある」

という一言。


正直意外すぎた。

ド直球のハードロックやメタルを好むこの男から、どう見てもバッターをバカにしたような変化球しか投げなさそうな俺たちのバンドを…


いや、そんな深掘りもしなかった(できなかった)し、彼からすれば気になるなぁぐらいの事なのかなぁとは思ってたが、少なくとも揶揄したり見下げたりとかではないんだなという、一種の安心感というか、たぶん親友から一定の興味を持ってもらえたという嬉しさはあったと思う。


まぁバンドメンバーとして離れる寂しさがかなりあったから、なんだか嬉しかったんだろうな。


話を戻す。


チャットで話を進める内、話題は新バンドの見た目の話になった。


「化粧とかすんの?」

「すっぴんはないと思うよ。でも俺の性分的に美しさを身に纏いますみたいなのはないかな笑」


って話をしていたらどんどん客観的に自分のバンドのビジュアルが明確になっていくのが分かった。

今までけっこう漠然としていたのに。


そして不意に思った。


「きのぴーの顔塗ったら面白いんじゃね?」

(俺の心の声)


人間、構えずに話をしてみることも大事だ。

自由な発想をもって客観的に自分を見る。


そしてそんな時にベストアンサーに辿り着く事はけっこうあったりする。


それがこの時だった。


次回【ギタリスト・jokerときのぴー】