またまたポッドキャスト番組「とうもろこしの会」の『僕は怖くない』の影響で、

DVD『フォース・カインド』を観る。


これはいわゆるフェイク・ドキュメンタリー作品で、

内容もありきたりの宇宙人によるアブダクションものだ。


今更こんなものを見せられて信じている矢追信者みたいな人間もいないだろうが、

一応言っておくと、これは完全なフェイクなので、安心して夜寝てもらいたい。


宇宙人による拉致というアメリカでよく見られるオカルト現象のメカニズムは

すでに科学的に解明されている。


これは日本で言う金縛り現象のアメリカ版なのだ。

興味ある人は有料ポッドキャスト番組『ヴォイニッチの科学書』のバックナンバーをチェック!!


そもそも金縛りというのは脳が起きていて体が寝ているという現象である。

脳は起きているわけだから、脳は覚醒時同様に体に様々な指令を出す。

しかし人は睡眠中に体を動かすことができない。


これにはもっともな理由がある。

もし睡眠中に体を動かすことができれば、我々は夢を現実と取り違えて、

体に指令を出し、その結果寝ながらにして暴れてしまいかねない。

大けがで済めばいいが、他人に危害を加えかねない。

だから睡眠中は脳の指令は脊髄までしか届かないようになっている。

脊髄から脳へは信号が遮断されているのだ。


ところで脳が起きていて、体が動かない状態は体にとって苦しい状態だ。

息苦しく、胸が抑えられるような苦しさを感じる。

そんな時、我々の脳はその原因を作りだそうとするらしいのである。

「胸が苦しいのは胸の上に誰かがのっているからに違いない」というふうに。

それで脳はその原因を映像として作りだしてしまう。


それで老婆や落武者が枕元に立つことになる。

これが金縛り現象のメカニズムだ。


『フォース・カインド』の宇宙人による拉致はどう関係あるのかというと…。

金縛りにはご当地バージョンというものが存在する。

老婆や落武者が映像として現れるのは日本での話で、

アメリカやおそらくアフリカ、日本以外のアジアの国ではたぶんない。

というのもそれは脳が作り出した映像に過ぎず、

脳は我々が怖いと思うものを利用して映像を作っているからだ。


ヴォイニッチの科学書の中で言及されていた科学者チームによると、

アメリカ人は金縛りの最中に、老婆や落武者を見るのではなく、

宇宙人に拉致されるという幻視を見るとのこと。


これで分かりましたよね?


なぜアメリカ人は老婆や落武者を怖れないのか?

それよりも宇宙人による拉致を怖れるのか?

日本人はなぜ宇宙人に拉致されないのか?

メキシコ人はあんなにも拉致されまくっているというのに?


ちなみに宇宙人についてもう一つ。

宇宙人がこの宇宙のどこかにいる、

しかも人間並みの知的生命体がいるというのは、

おそらく多くの科学者が認めることだろう。


でもその宇宙人が光並みのスピードで地球に来ている可能性はゼロに等しい。

宇宙はあまりにも広い。

だが、アインシュタインが言ったように、この世界で一番速く移動するのは光である。

光をもってしてもこの大きな宇宙を移動するにはあまりにも多くの時間がかかる。


だからロマンのないことを言って申し訳ないのだが、

この地球に宇宙人が飛来している可能性はほぼゼロだと思う。

ましてや『フォース・カインド』のように人間を拉致している可能性はもっと低いと思う。


でも『フォース・カインド』という作品は巧みだ。

あの不思議な現象全てが女主人公の学者の想像にすぎないという解釈の余地を残している。

そういう意味でこの作品はなかなか優れたフェイク・ドキュメンタリーだと思う。