第140回芥川賞受賞作

津村紀久子著「ポトスライムの舟」を読んだので感想を少々。


この作品が掲載されている『文芸春秋』3月号を随分前に買ったものの、

読みたい本がたくさんあって、ずっと放ったらかしにしていたのだが、

手にとってみると、短い作品だったので、

何気なしに読み始め、一気に読み終えた。


主題はタイムリーなワーキングプアを扱っている。

でもみじめさは微塵もなく、たくましく生きていく女性の姿が描かれている。


受賞作「ポトスライムの舟」は、作者と同世代の契約社員の女性が主人公。

29歳のナガセは工場に勤めながら、友人のカフェを手伝ったり、

パソコン教室の講師もこなす。

目標は世界一周クルージングの旅行代金をためること。

2人暮らしの母親、ナガセの家に子連れで居候を始めた女友達ら

周囲の人間関係が淡々とした筆致でつむがれる。(産経ニュース1/15)


僕は日本人の作家の作品や女流作家の作品はあまり読まない。

日本人で女性というと瀬尾まいこさんの作品を数冊読んだ程度だ。

津村さんの作品にも瀬尾さんの作品に見られるユーモアと温かさを感じた。


「ポトスライム」は、女性から見ると、男性的な視点でものを見ているように

感じられるかもしれないが、男からみると繊細な女性的感受性が感じられる。

女性性と男性性の両方がうまくミックスされている印象を受けた。


頭の中がマッチョな僕からすると、こういう人の心の機微を捉えた作品は

自分には絶対書けないと思うので、ただただ感服するのみだ。

あと、この作品とても笑える。お客さんで賑やかなカフェで読みながら、

何度か笑いをこらえなきゃならなかった。


すばらしい作品。他の作品も読んでみたいと思う。


ちなみに「ポトスライムの舟」という文字を見た時、

ドラクエのモンスター、スライムが舟を漕いでいる姿を想像してしまった(-^□^-)