私にはずっと忘れられない舞台がある。
それは、
三谷幸喜監督の『決闘!高田馬場』
(三谷幸喜 作・演出(2008,パルコ))
歌舞伎のお芝居になるんだけど、言葉もわかりやすくて、非常に面白かった。
中村勘九郎(当時勘三郎)、市川亀治郎、市川染五郎がメインをつとめていて、3人とも2〜3役を務めるという。
2006年の舞台なので、当時私は10歳。
舞台を観に行ったわけではなく、テレビ放送で鑑賞した。
その時の衝撃は本当に凄かった。
その頃までも、父の仕事柄、何度か歌舞伎は観に行っていたけれど、内容や言葉が難しくて、鑑賞ガイドをつけないとストーリーおろか笑いどころも理解できていなかった。
でもこの舞台はわかりやすく、なんとなく雰囲気で好きだった(着物や化粧、全てが華やかだから)歌舞伎を、ちゃんと好きになった(気がした)。
あの番組を録画していたHDDが壊れ、もう観られないのが惜しい。

私の中で三谷幸喜って名前と顔が一致したのはこの時だったはず。
youtubeで動画上がってたけど、あれ絶対に不正だからURLは貼らない…。

さあ今回見たのはそんな三谷幸喜監督の映画、
ラヂオの時間
(三谷幸喜 脚本・監督(1997,東映))

私思い返してみると、三谷幸喜作品って知ってるけどあんまり観てない。
観たことがあるのは王様のレストランとやっぱり猫が好きくらいな気がする。
でも彼の映画が面白いことは知ってる。

今回見たラヂオの時間は、何度かテレビで奉公してるのを見て、部分部分見たことがあった。
真剣に見たのは今回が初めて。

まず一つ感動して震えた点は、
各自の仕事に対するプロ意識。
自分の仕事に誇りを持つってだいじなこと。あこれはバイプレイヤーズの感想でも語ったけど。
ドラマラジオコンテストで優秀賞とった作家先生(鈴木京香)の作品が、声優さんやスタッフの都合で次々に書き換えられていく話なんだけど、
それに耐えられなくなって、
『最後に私の名前を読み上げないで!』的なことをいう。
それに対する牛島さん(西村雅彦)のセリフ。

我々がいつも自分の名前が呼ばれるのを満足してきてると思ってるんですか、何もあんただけじゃない。

私だって名前を外して欲しいと思うことはある

しかしそうしないのは私には責任があるからです。どんなにひどい番組でも作ったのは私だ。

そっから逃げることはできない。

満足いくもんなんてそう作れるもんじゃない

妥協して妥協して自分を殺して作品を作り上げるんです

でもいいですか、我々は信じていつかは満足が行くものができるはずだ、その作品に関わった全ての人とそれを聞いた人全てが満足できるものが。

ただ、今回はそうじゃなかった。

それだけのことです。

悪いが名前は読み上げますよ、なぜならそれはあんたの作品だからだ、まぎれもない。』

(引用:三谷幸喜 脚本・監督(1997,東映))


これを聞いて私は震えた。

まず、当たり前なんだけど、

仕事には責任がある。

金銭が動いてるし、自分だけの仕事ではないから。

金銭が動くということはそこにいる人たちの生活がかかってる。

バイトの身だとこれを忘れがちだから、責任とはかけ離れた業務をこなしてた。

まず仕事をするにあたって最初に大事なのがやる気云々ではなく、この責任だと思った。

この責任こそがプロ意識を構成しているんだと思う。やる気云々は、この責任についてくるはず。

次に、その責任に対する自分の方向性

これも大事。

大事っていうか、これが誇りになるのではなかろうかと。

牛島さんは責任持って最後までやり遂げることが大事、そうしていけばいつかは皆が満足できるものができる、そう信じて日々仕事に励んでるんだと思う。っていうか、このセリフがそう語ってる。(と私は捉えてる。)

その部下である工藤さん(唐沢寿明)は、作家先生の本の結末に沿わせるべきだと主張して牛島さんとぶつかる。その後のセリフもまた私は打たれた。

勘違いするな、

あんたのためにやったんじゃない

それほどのもんじゃない

ただ、どんなくだらない本でも作家の書いた通りに作るのが俺たちの仕事なんだ

(引用:三谷幸喜 脚本・監督(1997,東映))


っょぃなぁ〜、

これが工藤さんの主張であり、仕事への誇り。

牛島さんも工藤さんも、自分の仕事への誇りのためなら全力で頑張る。

全力の工藤さんこちらです。

(引用:三谷幸喜 脚本・監督(1997,東映))
いやただ、走ってるだけやん?と思うかもしれない。

わかってほしい。工藤さん、セーターをADのように羽織っててクールに決めてる人なんだ…!
(引用:三谷幸喜 脚本・監督(1997,東映))
こんなクールなのに、仕事のためなら全力疾走で廊下を駆け巡るんですよ。
かっこいい。いや、もちろん、私が唐沢寿明好きだという邪念もある。ないと言ったら嘘になるけどさ…。
仕事をしている人はかっこいいとはよく聞くフレーズだけど、それって、ただ仕事してればみんなかっこいいのか!って感じだよね。
無愛想なコンビニのバイトとかかっこいいと思わないじゃん。
仕事をしている人がかっこいいのではなく、プロ意識と誇りを持って仕事をしている人がかっこいいんだと、
この映画を見て思いました。

セリフから説明したから牛島さんと工藤さんが素敵みたいになってるけど、
彼らだけじゃない。
スタジオにいた全員がめちゃ素敵だった。


(引用:三谷幸喜 脚本・監督(1997,東映))
写真の通り、彼らみんな、キラキラしてるんだよね。
このキラキラがきっとかっこいいの元なんだろうと思うます。

4月から社会人になる私、この映画を見習って頑張っていきたいし、社会人になったらもう一度見ようと思った。

こんな真面目な感想書いたけど、
普通に声出して笑える楽しい映画だった。
スピード感があってワクワクした。
また三谷幸喜作品はちょくちょく見ていきたいと思う。

それにしても、
唐沢寿明かっこいいな〜〜〜!