こんな色だった


背伸びして


大人になりたくて


手にとった


夕と夜の間みたいな


グラデーションの美しい香水瓶


あの頃


月は浮かんでいなかったな


きっと子どもの私には


見つけられなかった


今は


この景色が見られる満足感を


空っぽになった瓶につめて


踵を地につけ


抱きしめていられるよ


あせらないでゆっくりね


あの頃へ送った言葉は


高く浮かぶ月のように


見つけてはもらえないでしょう


それでもここに辿り着くから


大丈夫


秋風の吹く窓からは


ふんわり金木犀の香りがしていた