気になっていた Paul Auster の原著を、Audibleで試してみた。

タイトルの Leviathan に惹かれて、この本を選んだ。

 

物語の流れを細かく追いながら聴けたかというと、正直まったくそうではない。
けれど、繊細な人間関係や精神の揺れを描こうとするこの作品の魅力は、

ところどころで確かに感じ取れた気がする。

 

原著を耳で追いながら、自分もいつか、Paul Auster が描く物語の深みに唸れるようになりたい。
それができるようになるには、やはり愚直に読み続けるしかないのだろう。
懲りずに続けていきたい。

 

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『リヴァイアサン』のあらすじ
物語はベンジャミン・サックスの命を奪った爆弾事件から始まる。親友であるピーター・アーロンは、ベンジャミンの変貌を振り返る。かつては有望な作家だったベンジャミンは、やがて孤独と暴力の世界へと転落していく。その転機となったのは、火災避難階段からの転落事故だった。死にかけたことが彼の精神を不安定にし、被害妄想に陥らせた。ピーターはベンジャミンの人生を探る中で、最終的な爆発に至るまでの過程を明らかにしていく。

主要人物とその関係性
語り手であるピーター・アーロンは、売れない小説家。彼は複雑な人間関係の網に絡め取られている。彼の回想によって、ベンジャミンとの絆が、共に文章を書く中で培われたことが明らかになる。ただし、二人の人生の道は次第に分かれていく。ベンジャミンの妻ファニーや、ピーターの最初の妻デリアも物語をさらに複雑にする。登場人物たちは、深い結びつき、裏切り、そして年月を通じた個々の成長を体現している。マリア・ターナーは物語の鍵となる人物で、実在のアーティストであるソフィ・カルをモデルにしている。彼女はベンジャミンの複雑な内面にさらに層を加え、アイデンティティや創造性というテーマを浮かび上がらせる。対照的に、元娼婦のリリアン・スターンは、多様な人生の選択肢とその結果を象徴する。すべての登場人物が互いに関係しあい、時の流れの中での人間関係の複雑さを際立たせている。

アイデンティティと変容のテーマ
オースターは、探偵小説的な要素を用いながら、アイデンティティと生きる目的というテーマを探求する。人が下す選択がどのように変化を生み出し、個人だけでなく社会全体も変えていくかが描かれている。ピーターは、なぜベンジャミンが暴力の道を選んだのかを理解しようとする。その過程で彼自身の選択や、それに伴う結果にも向き合うことになる。個人的な物語と社会的な観察が交錯していく。ベンジャミンは、イデオロギーや社会的同調への抵抗の象徴であり、その結果として過激化していく。タイトルの「リヴァイアサン」は、政府や社会的期待といった抑圧的な力のメタファーとなっている。彼の精神状態が悪化するにつれ、現実から遠ざかっていき、やがて破滅的な結末を迎える。ピーターの調査は、友情への追悼であると同時に、無関心と幻滅がもたらす危険性への警鐘でもある。

偶然の本質と人生への影響
オースターの語り口では、偶然が物語の中核を成している。一見無関係に見える出来事が、登場人物たちの人生を不思議に絡めとっていく。運命が重要な役割を果たし、個人の意思と選択の背後にあるものを問いかける。登場人物たちは、予期しない状況に巻き込まれ、それによって人生の方向が大きく変わっていく。この人生の偶然性に対する考察は、自分の運命をどこまでコントロールできるのかという哲学的な問いを投げかけている。物語の中のつながりは、現実の人生のように複雑で予測不可能なものとして描かれ、あらゆることが起こり得るという実感が、作品のテーマと深く響き合っている。

結論:社会と自己の反映としての物語
『リヴァイアサン』は、単なる友情の物語ではなく、現代社会の在り方への鋭いコメントでもある。オースターは、複雑なアイデンティティの問題に直面する社会の本質をとらえ、個人と政治の交差点を探っている。ピーターがベンジャミンの物語を完結させることで、自身の真実や果たせなかった夢の影とも向き合う。物語のメタ構造や哲学的な考察が、物語そのものをより深い次元へと引き上げている。オースターの巧みなストーリーテリングは、読者に社会の価値観を問い直させると同時に、登場人物たちへの感情的な共感を呼び起こす。人生、友情、裏切り、そしてアイデンティティに対する深い探求が、読後に強い印象を残し、『リヴァイアサン』を現代文学の中でも重要な作品として位置づけている。

 

「いったん自分自身に背を向けるようになると、他の誰もが自分に敵対しているように思えてしまう」― Paul Auster "Leviathan"

「サックスが写真を撮られるたびに、自分自身を演じなければならなかった。自分が自分であるふりをするというゲームに加わらざるを得なかった。しばらくすれば、それが彼に何らかの影響を与えたに違いない。(…)カメラは人の魂を奪うことがあると言われているが、この場合はまったく逆だったと思う。このカメラによって、サックスの魂は少しずつ取り戻されていったのだと信じている」― Paul Auster "Leviathan"

「本がどこから生まれるのか、それを言い当てられる人間はいない。書いた本人でさえそれが最もわからない。本は無知から生まれる。そして、書かれたあとも生き続けるとすれば、それは理解されえないというその一点においてのみだ」― Paul Auster "Leviathan"