誰だったか忘れてしまったが(椎名誠?)、紹介されていた本書。

英語の Audible が出ていたので聞いてみた。

 

内容が難しくなかなか追い切れなかったが、雰囲気はなんとなく掴むことができた。

タイトルの The Panda's Thumb は一つのセクションにすぎず、

基本的には進化論における諸々のトピックを扱っていて興味深かった。

 

進化論は結局試行錯誤の結果であり、

現状の環境下、適応しようとしてきた結果でありつつも、多くの偶然性も生み出しており、

必ずしもベストとは言えない。

この過程をAIやMachine Learningで短縮化できるような世界に突入しているが、

これまでの進化論とAI/MLを掛け合わせるとどのような考え方を持ち出しうるのかは興味深い。

 

https://secure-web.cisco.com/1dTbhZSgy_pH8FskoDFvmDsoBGpR1wsROMvbGvfCaKEEX6MK5RO9srXkHp-dnH_yyl9_fLSkPL6mrCygkKxfko5TiBniW-6CWvr_lSZbg2pPejmjaaEITE_DO4IJVssTGr6OcSUPws4kRKaaA1KA_aH2IGoSf57LD_4gF44oJAXioS4GUIEQWBvBG-xfeDKQk1CtVcEhcBpuxi0WRUKNHqAhCjJY5ertmW9GfEiyYp8dpbxcCQVrfIDyGfCk_ZhwoWcHSxK9WJAqfzLAsa9z8qPG8c-1W9RkYr1YXcpe7mLkMHACieKZ-HZcMrLa91cvg/https%3A%2F%2Fwww.audible.co.jp%2Fpd%2FB0C6V5TGTF%3Fsource_code%3DASSORAP0511160006%26share_location%3Dpdp

 

  • 書籍概要:1980年に出版された科学啓蒙書。著者はハーバード大学の古生物学者スティーヴン・ジェイ・グールド。自然史雑誌の連載「This View of Life」に掲載された31本のエッセイを収録。進化論に関する科学的・社会的・政治的な問題を扱う。
  • 表題作「パンダの親指」:パンダの「親指」は実際には手首の骨の延長であり、他のクマと同様に5本の指を持つ。この不完全で非効率な構造は、進化が既存の構造を改良する試行錯誤の結果であることを示す。「知的設計説」に対する反証として提示される。パンダは竹を食べるために手首の橈側種子骨(radial sesamoid bone)を拡張し、親指のように使う。この構造は他のクマには見られない。この「親指」は機能的ではあるが、洗練された設計とは言えない。知的設計者が作ったとは考えにくく、既存の構造を改良する進化の過程を示している。進化は「奇妙な配置」や「おかしな解決策」を生み出す。理想的な設計ではなく、試行錯誤の結果としての構造が進化の本質を物語る。
  • 科学的誤謬とその批判:ピルトダウン人の化石捏造事件を取り上げ、神学者ピエール・テイヤール・ド・シャルダンが関与していた可能性を示唆。ランドルフ・カークパトリックの「ヌムロスフィア」理論(地層はアメーバ状化石の単層から成るという説)を紹介し、科学界からの嘲笑を受けた事例として言及。科学的発見は純粋に客観的なものではなく、文化的背景、個人の偏見、社会的な価値観に影響される。
  • 進化論の歴史と誤解:アルフレッド・ラッセル・ウォレスが人間の意識を進化の産物と見なさなかった理由を考察。ウォレスはすべての形質が自然選択によって直接選ばれたと考えたが、ダーウィンは偶然や副産物による形質の出現も認めた。高度な意識(数学や芸術など)は生殖成功に直結しないため、ウォレスは進化以外の要因を想定した。
  • 適応主義への批判:すべての形質が単一の最適な目的のために存在するという考え方に異議を唱える。形質には多様な用途があり、自然選択に「見えない」まま残る場合もある。
  • 進化論の応用と誤用:女性の脳に関する性差別的見解や、狩猟採集社会に基づく性役割の固定観念を進化論で正当化することに反対。ナチスの優生学など、進化論が人種差別の「科学的根拠」として誤用された歴史を批判。ミッキーマウスの「進化」を例に、キャラクターの変化が環境に応じて起こることを示す。「A Quahog is a Quahog」では、動物の名前と分類学との対応関係を考察。種レベルでは驚くほど一致するが、上位分類では乖離が大きい。
  • 種の違いと進化の跳躍:一般言語と科学が種の違いを認識していることから、種間の「ギャップ」は実在すると主張。このギャップは進化が段階的ではなく、跳躍的に進むことを示唆する。
  • 評価と影響:1981年に全米図書賞(科学部門)を受賞。一部の科学的内容は現在では古くなっているが、進化論の理解を深める入門書として今なお有用。