2020年3月に購入していたのに4年以上もほったらしにしてしまっていた。

ノーベル賞の受賞を見て、そういえばと思って急いで手に取った。

 

とても読みやすく面白かった。

国家が発展するか否かは、地理、宗教、人種、文化などには関係がない。

ひとえにどのような政治制度を採用しているかによる、と主張している。

過去のさまざまな国の事例をとりあげ、包括的制度か収奪的制度かによって国家の発展が決まると説明。

全体として納得のいく説明が多かったが、主に次の2点に疑問が残った。

  1. 包括的制度とは中央集権的で自由市場が存在する制度とのことだが、それだけで本当に国家の成功や発展につながるのかが疑問であった。また、その制度が国家をいかに成功や発展に導くかの説明が不足していると感じた。
  2. 中国は収奪的制度を採用しながらも包括的な経済を持つ国として例示されているが、個人的には包括的制度と収奪的制度の使い分けが不明瞭であると感じた。著者は根本的に収奪的な制度にある中国は早晩成長の限界に達すると主張するが、その説明も曖昧なままであった印象を受けた。

とはいえ、切り口としては面白かったし、良い勉強になった。

次は同著者の「自由の命運」も読んでみたい。

 

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  1. イングランドにおいて産業革命が名誉革命の数十年後に始まったのは、包括的な政治・経済制度によるものであり、決して偶発的に発生したものではない。
  2. イングランドの名誉革命や日本の明治維新といった政治革命によって包括的な政治・経済制度を確立できた国が繁栄の道を辿っている。
  3. 包括的政治・経済制度確立に向けた動きが一度生まれると、その流れはますます強くなるが、収奪的制度もなかなか抜け出せないという悪循環が生じやすい。
  4. 持続的な成長には包括的制度の確立が必要であり、収奪的制度の国は衰退している。中国の成長はしばらく続くかもしれないが、持続的成長には繋がらないだろう。

 

収奪的制度と包括的制度

国家の衰退と繁栄は、政治的制度の違いに基づく現象である。本書では「収奪的制度」と「包括的制度」という対照的な二つの概念を中心に述べられている。収奪的制度とは、一部エリートが富を搾取する体制を指し、包括的制度は中央集権的で自由市場が存在する制度である。歴史的に収奪的な制度を持つ国家は衰退しやすいため、包括的制度を志向すべきだと主張する。また、インセンティブ設定の重要性も説かれ、具体的事例を通じて説明される。

 

国家と企業におけるインセンティブの重要性

国家も企業も大規模なコミュニティであり、インセンティブの在り方がその存続と発展に直結する。収奪的制度の下では努力が搾取され、結果として個人のやる気が削がれる。企業においても同様で、適切なインセンティブがなければ組織の競争力が低下するため、自由市場的な仕組みづくりが重要となる。

 

お金以外のインセンティブの台頭

近年、お金以外のやりがいや社会的意義に価値を見出す人が増えているため、金銭的報酬に加え、情緒的な価値も重視されるようになった。生存を超えて人間的な欲求に近づくこの変化により、組織も適応を求められる。

 

歴史的事例の考察

  • 地理的条件説に反し、同一の地理条件でも政治体制の違いにより繁栄と衰退の違いが生じる。
  • ペストの流行によって生じた西欧と東欧の労働価値観の分岐。
  • 包括的制度がイノベーションと成長をもたらした事例として、エリザベス1世から産業革命に至る過程。
  • 分権と中央集権のバランスが国家の発展に与える影響。

収奪的制度の下での成長とその限界

収奪的制度でも成長が可能であるが、イノベーションがリスクとされ抑制されやすい。ソ連やコンゴ王国の事例が示すように、収奪的制度は革新を阻害し、衰退に繋がる悪循環を生む。

 

包括的制度の好循環と収奪的制度の悪循環

包括的制度においては、構築者自らも制度のルールに従わねばならず、好循環を生む一因となる。反対に、収奪的制度では、革命が起きても悪政が引き継がれることが多く、内戦などによってさらなる衰退に繋がる。

 

現代における収奪とその影響

現代においても収奪の形は存在し、独裁国家における資源や機会の独占がその例である。

 

第一章 こんなに近いのに、こんなに違う
地理的条件による文明の発展の差異。政治体制の影響による地域の違い。

第二章 役に立たない理論
地理的要因ではなく、政治体制の違いが国家の発展に影響するという視点。文化的な影響や支配の違いの重要性。

第三章 繁栄と貧困の形成過程
同一地理・民族条件における異なる政治体制が繁栄と貧困を分ける。韓国と北朝鮮、コンゴ王国の事例。

第四章 小さな相違と決定的な岐路―歴史の重み
ペストによるヨーロッパの分岐。労働価値の変動による西欧と東欧の異なる社会変化。

第五章 「私は未来を見た。うまくいっている未来を」―収奪的制度のもとでの成長
収奪的制度下でも成長が可能であるが、イノベーションが抑制されやすい構造。

第六章 乖離
政治体制のもろさが国家滅亡の要因になる一面。包括的政治の障害としての既得権益の抵抗。

第七章 転換点
名誉革命と産業革命による包括的制度の構築。偶然の要素による政治制度の発展。

第八章 領域外―発展の障壁
中央集権と分権のバランス、国家と民間の発展過程の違い。権力者の地位と民間成長の関係。

第九章 後退する発展
帝国主義による二重経済の強制。収奪的制度が国力格差を生む要因。

第十章 繁栄の広がり
包括的政治制度の形成と国家繁栄の関連。アメリカとフランスの発展事例。

第十一章 好循環
制度構築者自らもその制度に従うことが好循環を生む要因。法の支配の象徴。

第十二章 悪循環
収奪的制度がもたらす革命と悪政の継承。寡頭制と内戦が衰退を促進する要因。

第十三章 こんにち国家はなぜ衰退するのか
現代における収奪の形。機会の不平等と貧困化をもたらす収奪的経済の構造。