玉三郎さんを観に行ったのは今年の3月のことだった。

その時は歌舞伎そのものを観に行く予定は全くなかった。

いつかは行きたいと思っていたが、それが今日実現した。

おときゅうパスとお友達のお誘いのおかげだ。

玉三郎さんは初めて歌舞伎を観に行く時は事前勉強せずに何も考えずに観てくださいと語っていた。

それを信じて予備知識は入れなかった。

それでも姉のすすめでイヤホンガイドは借りることにした。

幕間で食べるお弁当を選びワクワクしながら着席した。

当然禁止事項等のアナウンスやらを係員の方々がしつこいぐらいやっていたにもかかわらず、由々しき事態が発生した。

席が暗くなってからも前の席のマダムのスマホが光を放っていた。

スマホは電源をお切りくださいと言っているのに切り方が分からずに設定を開いたり検索したりしているのだった。

そこじゃないっしょ!と思いつつハラハライライラしていたら、係員のお姉さんが渋い顔で近づいてきて注意を始めた。

それでも気づかずにスマホをいじるマダム、業を煮やした係員がスマホを手渡すように指示した。

結局色々触ってみてもどうやら電源の切り方が分からなかった様子だった。

どうしようもなく、結局返されたスマホは電源が入ったままバックにしまわれた。

そのころすでに幕は上がっていた。

おかげですっかり気が散ってしまったが、一幕目の華やかな踊りは絢爛で美しく嫌な気持ちもどこかに行ってしまった。

2幕目までの幕間、前のマダムたちは20分ほどの時間にお弁当を食べ始めた。

もう食べるのか?と思って観察していたら、ギリギリな感じで食べ終わっていた。

ほっとしたのもつかの間、ガサガサ探し物をし始めた。

既に5分前のアナウンスが流れていたのに、バックから出したのはゼリー状飲料だった。

まさかと思っていたら、幕が上がってもそれを平然と吸い始めた。

2幕目は6代目菊之助の初々しい荒事の披露だった。

まだ11歳のかわいらしさと力強さの共存に参ってしまい、また嫌な気持ちもどこかへ行ってしまった。

3幕目までの幕間は少々長めなのでそこで私たちはお弁当を食べた。

お弁当は上品でとても美味しかったが、前列でもう一つ気になっていることがあった。

前の席の多分一人で来ているおじさんが、幕間毎にスマホを開いて麻雀ゲームをするのだった。

なんか興覚めだ。

3幕目は2幕目と話が続いていた。

8代目菊五郎の見せ場だった。

最初は子役たちがたくさん出ていてほほえましい感じだったのが、実は悲劇になっていくストーリーだった。

イヤホンガイドが無ければ多分ストーリーを追えなかったかもしれない。

借りて正解だった。

すっかり引き込まれて悲しい気持ちで3幕を見終えた。

4幕目、粋でいなせな踊りで締めくくる舞台だった。

思い出したが、この舞台での主役の片岡仁左衛門さま、まだ片岡孝夫を名乗っていたころから好きな役者さんだった。

生きているうちに観れて良かったと感激していたところ、また前の席で始まったカサコソ音。

マダムたちが買い込んだお土産を披露しあっていた。

そして幕があいてからもチラシをガサゴソと探しだして、何やら語りあっていた。

こらあ、公演中は私語禁止なんですけど(怒)。

椅子を蹴ろうかと思うほどだったが、そこは大人なので我慢した。

舞台は次第にアクロバティックになっていった。

思わず「ほうっ!」と言ってしまうような動きに目を奪われまた嫌な気持ちも忘れた。

何より片岡仁左衛門様はご高齢とは思えない若い役者たちに負けぬ切れのある動きと恰好良さだった。

もう、前の席の人達のことなどどうでも良くなった。

こういう人達と遭遇しないよう、次は絶対もっと良い席に座るようにすればいいのだ。

そして自分もこうならないようにしないと気をつけないといけない。

そうは言っても良い席は高いなあ。