亡き母は毎週日曜日になると必ず「のど自慢」を観ながら昼食を食べ、「新婚さんいらっしゃい!」を観ながら昼寝するというルーチンだった。

そのため、子供の頃から日曜お昼の「のど自慢」鑑賞は習慣になっていた。

大人になり、結婚してからも日曜のお昼ご飯時にはNHKにチャンネルを合わせる習慣が抜けなかった。

親方に、「あなた、のど自慢好きだよね?何がそんなに面白いの?」って言われるまで何も考えずにそうしていた。

私はそこで初めて気が付いた。

「のど自慢」が好きなのは母だ。

私は母が好きではない。

だから別に「のど自慢」も好きではない。

 

その日から、私は「のど自慢」を封印した。

別に封印しなくても良いのだけど、母と同じ「のど自慢」好きと思われたくないというこだわりがあった。

あれから何年経っただろうか?

10年以上たったと思う。

その間、たぶん一回も「のど自慢」を観ていなかったはず。

 

今日、ある理由で封印が解かれた。

久しぶりに最初から最後まで観た。

以前は、出演者がみな壇上で待機していて、歌う人を応援するスタイルだった。

そして、ゲストが自分の歌を歌ってくれた人に感激してベタベタする。

私はそういう雰囲気が観ていて恥ずかしくて、そんなに好きではなかったのだが、コロナの影響でそういう演出がなくなっていた。

ソーシャルディスタンスを守りながら、よそよそしい感じの生放送だった。

途中であることに気が付いた。

バックの演奏(キーボード?)のおじさんの髪型が変だ。

何か大きな黒いものを頭に乗せているような。

それから、そのおじさんの髪が気になって仕方がなくなった。

どうでも良いけど、何者?
気になって来週も見てしまいそうだ。
 
番組が終わると、親方がすかさずチャンネルを「新婚さんいらっしゃい!」に変えた。
いつもこの時間は黙って「新婚さんいらっしゃい!」にチャンネルを合わせる。
親方は何も言わないが、間違いなく、「新婚さんいらっしゃい!」好きだ。
「のど自慢」好きを馬鹿にできないよなあ。