一年くらい前からお香を毎日炊くのが習慣になった。

お香の種類は白檀、沈香くらいは知っていたが、お茶や檜など色々あった。

当初は、自分で好きなものを選んで買っていた。


そのうち、親方が実家で使わずに仏壇の引き出しにあったお香を持ち帰ってきた。

ラベンダーやバラの香は実家で使わなさそうだから勝手に持ってきたそうだ。

これでしばらくお香を買わずに済みそうだと思った。


先月、母の一周忌で普通の緑色の墓参り用のお線香を購入した。

しかもイオンで最安値のもの。

全部使いきれず半端に残ったので、持ち帰って、家で炊くことにした。

最近では、あまり香りの種類にこだわることはなくなっていた。

安かろうが、高かろうが、炊けば落ち着く。


先日、親方が、また実家から線香を持ってきた。

箱からしてちょっと高そうな物だった。

早速、親方が炊いた。

ん、この香りは…。

そうだ、親方の実家の仏間の香りそのものだ。
親方にそう言ったが、まったくピンと来ない様子だった。
家には個々に染みついた匂いがある。
住んでいる当人は気づかないものだ。
しょっちゅう実家に帰っている親方には分からないのだろう。
そもそも嗅覚が鈍いタイプかも知れないが。

香りで記憶が呼び戻されることは多々ある。
ヒットした「香水」のように。
だから、私はこのお香を炊くたび、親方の実家を思い出す。
仏間で寝起きしていた義祖母を思い出す。
それで精神状態がどうなるか?という点は微妙だ。
できれば、お香で何も思い出したくない。
香りの記憶は時に厄介だ。
色々考えたら、私が1番好きなのは蚊取り線香かもしれない。
蚊から守られている安心感、これが1番落ち着く。
なんと言ってもコスパが最高だ。