今年の農協祭は台風被災のおかげでギリギリまで実施が危ぶまれたが、復興応援ということで実施が決まった。
母のカラオケ教室では2曲歌う予定で練習をしていたが、被災して参加できなくなった仲間がいたので全体の3/5ほどの人数になった。
母は人数が減ったから絶対自分が参加しないといけないと言い張った。
しかも周りからは、「大病したあなたが舞台の真ん中に立つことでみんなに勇気を与えるのよ!」って言われたそうだ。
はい、もう止めませんから。
止めてもどうせ行くんでしょ?
大儀名分が出来て強気になった母は私に「当日は2曲歌ってさっさと帰ってくるだけだから、それで満足だから送迎してね。」と依頼してきた。
農協祭の数日前、カラオケ教室から帰った母は舞台で使うおそろいのスカーフを借りてきた。
スカーフを首に巻いて、楽譜を持ってポーズをとってみた母。
母「あら、なんかこのスカーフ臭いわ!」
母はそのまま洗濯機につっこんだ。
私「いやいや待て待て!それはジョーゼット素材だからネットに入れねばダメでしょ。あなたのダルダルの下着はネットに入れても意味ないけど。」
母「そうかしら?」
私「イベント用衣装は用意したの?」
母「まだ。」
私「じゃあ、持ってくるわ。」
私は、イベント用衣装置き場(?)から白いブラウスと黒いパンツを持ってきた。
あれ?なんか臭いぞ。
母に言った。
私「スカーフよりこっちの衣装の方が臭いんだけど?」
臭いを確認する母。
母「あら、別に臭くないわよ。自分の臭いは気にならないから。」
私「.....。洗います。」
農協祭当日、衣装を着てみた母。
寒いからと中にカットソーを着ていた。
白いブラウスの首元とウエストからピンク色のカットソーがはみ出ている。
しかも上下ともにパツパツだった。
去年はこんなんじゃなかったという母。
病気したくせに太ったってか?
みっともないが、本人が良いというのでそのまま車で送って行った。
私は舞台は見たくないので車で待っていた。
しばらくして母は戻ってきた。
母「一番遅く行ったからみんなに心配されたわ。」
私「指示された時間通りに送ってきましたけど?」
母「集合時間間違ったかしら?でも間に合って良かったって喜ばれた。急に来れなくなった人もいたからね。」
私「じゃ良かったね。で、一番前の真ん中で口パク?」
母「だってぇ、身長低い人は前に行かされるんだもの。だから、はみでたシャツはみんなに直されてギュウギュウにパンツに突っ込まれたわ。」
さぞやみっともなかったんだろうな。
逆に写真撮ってやればよかったかな?
まあ母は満足した様子だから良いだろう。
家に帰ると母に電話があった。
聞けば、母が帰った後にくじ引きの抽選があって、知り合いがトマトジュース1箱当てたという話だった。
要らない情報を吹き込まれた母は、くじ引きしてこなかったことを悔やんでいた。
「2曲歌ってさっさと帰ってくるだけだから、それで満足」って言ってたのはどこのどなたですか?