僕は来た道を俯いて戻る
顔を上げたら相葉が車から出て僕を待っていた
相葉は何も言わず後部座席のドアを開けてくれた
僕はゆっくり乗り込んでシートベルトを着ける
[智様…真っ直ぐお帰りになられますか?]
『うん…』
相葉は何も聞かないで車を走らせた
すっかり葉が落ちた並木道はなんかとても寂しく感じた
翔くんは…今頃どうしているんだろう
そんな事を考えたら涙が溢れてきてポロポロと頬を伝って落ちた
翔くんの事信じてるけど…
あの光景はショックだった
きっときっと何か事情があると思うけど…
僕は家に着くまで何度も涙を拭い鼻をすすった
相葉は何も言わずただ車を走らせた
夜…
翔くんから連絡がくる
「これからちょっと伺ってもいい?」
なんの用があるんだろう…
僕は訳を聞かずに
『うん…いいよ!』と応えた
翔くんに会ったら普通に出来るかな…
程なくして翔くんが訪ねてきた
あの子と一緒に…
「智くん!これ俺の妹!今日留学先から帰ってきてさ、智くんに会いたいってきかなくて!」
『え?妹さん?』
言われてみれば少し翔くんに似ている
目がぱっちりしていて美人さんだ…
僕は翔くんの妹さんと挨拶を交した
そして…
〈兄をこれからもどうぞよろしくお願いします〉って言われちゃった
僕はさっきまで翔くんを疑っていた事をとても恥ずかしく思った
でも…僕…翔くんに妹さんが居るなんて聞いてないよ
『翔くん…こんな可愛い妹さんいたんだね…』
「あれ?言ってなかったっけ?5個下の妹!こいつ留学終わったらそのままアメリカの会社に就職するって言うんだ!」
『アメリカで就職するの?なんか凄い!』
「全然凄くなんかないよ!親には就職は日本でするから学生のうちに留学させてって言って行ったのに…結局あっちで就職するって言い出してさ…アメリカなんて遠いのに…」
翔くんは少し寂しそうに妹さんを見つめた
〈アメリカなんて飛行機ですぐじゃない!翔兄はこんな素敵なパートナーがいるのに寂しいの?〉
『別に寂しくないけどさ…』
僕は姉ちゃんしか居ないから分からないけど…妹って可愛いいんだろうね
それに…女の子だから色々心配な事もあるよね
『こんな可愛い妹さんだもん心配なんでしょ…』
「……」
『なかなか会えないと寂しいしね…』
〈智さん…是非兄とアメリカに遊びに来て下さい 歓迎します!〉
妹さんは右手を僕の方に差し出した
『はい!是非遊びに行かせて下さい』
僕も手を差し出しギュッと握手した
ごめんね…さっきまで妬ましく思ってた僕を許して…
『翔くんはいいなぁ…こんな可愛い妹さんがいて…』
「は?何言ってんの?俺達が結婚したら智くんの妹にもなるんだよ!」
〈そっか!私にお兄ちゃんが増えるのか!智兄よろしくね!〉
『ぼ…僕の妹?……妹…』
こんな…こんな可愛い妹が僕にできるなんて…
『えっと…よろしくお願いします』
〈フフフッ…お兄ちゃんなんだから敬語は変よ〉
『そ…そうだね…』
さっきまで鬱々としていた気持ちが
一転!こんなに嬉しい気持ちになるなんて…
〈智兄♪〉
可愛い妹が僕と腕を組んできた
そしたら…
「おい!俺の智くんだぞ!」
翔くんは僕の手を掴むと自分の方に抱き寄せた
僕は翔くんの胸の中に収まりギュッっと抱きしめられた
〈ちょっと…取らないわよ…バカ兄!〉
『しょ…翔くん…は、恥ずかしいよ』
「あ…ごめん…」
〈フフフッ…〉
翔くんと妹さんに家に入ってもらい一緒に夕食を食べた
トシが腕をふるって美味しい和食を色々作ってくれた
妹さんは久しぶりの和食らしく〈美味しい!美味しい!〉と食べてくれた
その姿は翔くんととっても似てて可愛らしかった
僕にはまた大切な人が出来た
最初は誤解があったけど
今では大切な妹
僕はお兄ちゃんだ
翔くん…
僕にも妹をありがとう
翔くん…
大好き♡