
いつものように
お父さんは
家を飛び出した
3ヶ月に一度のペースでしか
家に帰らない船乗りの父
無口な父
すぐにカッとなる父
お父さんは
家を飛び出した
理由は夫婦喧嘩だ
テーブルの
料理の入った食器が
庭へと飛び散り
母が泣く
いつもの日常の光景
お父さんが
家を飛び出して
しばらくして
黒電話が鳴る
泣いている母親を見ながら
僕が受話器をあげる
お父さんからだった
ガソリンスタンドそばの
小料理屋にいるから
来いと言う
小学生の僕は
いやいや
小料理屋に向かった
木でできた店の戸を開けると
お父さんがカウンターの一番奥に座り
何処を見るでもなく熱燗を飲んでいた
カウンター五席の小さな店
お父さんは
入口で立っている僕に気づくと
うまいから
ふぐ刺
食べろ
ただ
それだけ言うと
また
熱燗を飲み始めた
その後
お父さんは
何も話さなかった
何も話さなかった