
ねぇ…
あなたはどんな物語を書きたいの
Kが僕に聞いてきた。
彼女の甘い髪の香りがする。
僕とKは、アイリッシュバーにいた。
ニューヨーク、外は氷点下の世界。
夜中の3時すぎ、お店のお客は僕とK。
カウンターの中の
身体の大きなバーテンダーのジムが
眠さをこらえた、
つくり笑顔をこちらに向けている。
そうね、と僕は切り出した。
淡々とした日常を描きながら、
時折、その中で見え隠れし、
ポッカリと口を開ける
非日常の世界を描きたいな。
Kが僕に微笑みながら語りかける。
自分の身近なことを
描いていると読んでいる人って
共鳴しやすいのよね。
その中で普段はね、
何気なく見過ごしているようなことが
時々、ある新鮮さを持って
姿を現してくるのよね。
僕はKが好きだった。
好きだと言えなかった恋だけど。