僕は待ち続けた

横開きの戸が左へとスライドされた

僕が待ちつづけて三回目の戸が開いた


白い光を浴びて一人の女性が入ってきた

僕はすぐにわかった

和美だった 昔のままの姿の和美だった



喜びとも悲しみともつかない表情で

言葉を放つことなく僕を見つめてる

僕も同じ顔をして彼女を見つけてるのだろうか



言葉なく僕たちは見つめ合った

言葉が見つからない

どのくらいの時が流れたのかわからない



僕から声をかけた


「和美さんだよね 変わらない 

ニューヨークで会ったままの和美さんだ

変わらないね」


少し彼女が微笑んだ



僕たちはカウンターから少し離れた二人席に通された

老舗の鰻屋 BGMが流れることもなく

客の静かな会話だけが聞えてくる

カウンター8席とテーブル席3つの小さな店



仲居さんが温かいおしぼりを彼女に僕に広げてくれる


彼女がENOTECAの縦長の紙袋から白ワインを取り出した


「持ち込みだけど いいかしら」


仲居さんは静かにうなずいた




「PIETRABIANCA イタリアの白ワイン

和食に合うワインなの

一緒にあなたと飲もうって思って」


彼女が少し首を傾けて僕に微笑む



仲居さんがワイングラスを運んでくるまでの間

僕たちは言葉なく見つめ合っていた

言葉は 言葉はいらなかった



彼女が目の前にいることだけで僕は幸せだった