
彼女の横顔が見える
BAR Moby-Dick のカウンター
僕と彼女だけが座っている
バーテンダーのJim は 店を閉める準備を始めたのか
チップを数え始めている
時計が明日になった
ニューヨーク 外は凍てつく寒さの12月
彼女の横顔 言葉を宙に放つ
僕に語りかけるより 自分に語りかけるように
子どもの頃に 富士山の五合目で
焼きとうもろこしが食べたくなって
父に車の後部座席から おねだりしたの
父はね 車から降りて露店で買ってきてくれたの
その時ね 食べたとうもろこしの味
わたし忘れられないの
彼女は僕の目を見る 大きな瞳で僕を見る
昨年 日本に帰ったの
両親を驚かそうと思って 内緒で家に帰ったの
夜 8時頃だったかな 家についた
お帰り そろそろ
お前が帰って来るのではないかと思って
父が そう言って
冷蔵庫から取り出して ゆでてくれたの
とうもろこし
涙が止まらなかった