
ねえ... わたしの話 聞いてくれる
和美があれからを話し始める
彼女の瞳に吸いこまれそうになりながら
僕はワインをひと口そそぎこんだ
わたしって幸せなのかな
わたしって不幸なのかな
リュウと別れた後
わたしの人生のことを振りかえると
わからなくなって...
和美はサーモンの刺身を一片、口の中に入れると
僕から視線をはずして
過去という塊が宙に浮かんでいて
そこをじっと見つめているようだった
言葉を探してた
リュウは しあわせなの
わたしはね
リュウと別れた後
信也とつき合って
結婚することになったの
信也のことは知ってるわよね
信也もリュウに似て
とってもわたしに優しかったの
帰国してお互いの家族に
お互いを紹介しあって
結婚式の日取りも決まったの
ねえ
マリッジブルーって言葉
リュウは聞いたことあるかしら
わたし だんだん不安になってきちゃったの
結婚って
好きな二人が一緒になって幸せになる
ただ そのくらいにしか考えてなかったの
でも結婚が決まると
わたしの両親や信也の両親が中心になって
いろいろと動いていく
なんだか大きなうねりの中にわたしがいる
そんな感覚にだんだんなってきたの
誰々さんを式には呼ばないといけないだとか
両親同士が喧嘩をしたりとか
たいへん そうたいへんだったの
それから いろいろとあって
和美が目をつぶって 深く息を吸い込んだ
4月30日 夜7時39分
携帯がなったの
携帯に時刻が出てたから
7時39分という時刻は忘れないわ
信也の母親からの電話だったの
信也が亡くなったって