
心に大きな穴がぽっかりと開いていた
朝 目を覚ますと感じたんだ
そして何かを
思い出せないことに気がついた
探して探してみた
思い出せないことを思い出した
それは僕の名前だった
どうしても僕の名前を思い出せない
そんなことはない
そう思って赤いカバンのなかの僕を探す
携帯 定期 免許証
すべて僕の名前だけが真っ白に消えている
そうだ 郵便物には名前が書かれてるはず
黒い木製のデスクの一番上の引き出しを開ける
最近届いた封筒・葉書をとりあえず収める場所
無造作に重なってる
愕然とした なまえ 名前だけが消えている
そろそろ家を出ないと仕事が始まる
乱れた心のまま なんとか会社にたどり着く
IC型の定期は使えた
おはようございます!
と会社のオフィスのドアを開ける
10人いる僕の同僚と上司
いつもなら僕の声でこちらを見るのだが
誰一人として僕に気づいてくれない
次の瞬間 僕は 僕は
この場所から逃げ出したくなった
僕は 僕は 僕は…
いつもの僕の席には僕が座っていて
僕を見て会釈したのだった