
30分近く歩き続けただろうか
東京ミッドタウンのDEAN & DELUCA CAFEで
和美はカフェラテ 僕はコーヒー 少しミルクを入れて
お互いのニューヨークの記憶を話し始めた
僕の知ってる和美のこと
和美の知ってる僕のこと
記憶のジグソーパズルを埋め合わせるように
リュウ 外に出てみない
芝生がここ きれいなのよ
和美に誘われて
僕たちは東京ミッドタウンの広場へと出た
広い芝生の奥に
ヘンリー・ムーアの作品の様な
大きなグレーのオブジェが見える
ここはね
春になると桜がきれいなのよ
僕の好きな和美の声 僕のすきな和美の後ろ姿
10月だけど少しだけ夏を感じさせるような
陽射しと優しい風が和美の髪を揺らせている
あ しゃぼん玉だ
和美が僕を振りかえって微笑んだ
和美は変わらない 美しさが変わらない
無数のしゃぼん玉が空へ空へと
舞いあがり続ける
光をあびてキラキラと輝きながら
芝生の広場の一番奥にある木製のベンチに
僕たちは腰をおろした
東京の空の 突き刺すようにビルがそびえ立っている
リュウ 聞きたい
桃の話のつづき
和美を見つめて僕はうなづいた