少し歩きましょう 

わたし歩くの好きなの

10月の光の中でリュウがうなづいた



リュウが私の右を歩いてる

ニューヨークでなく ここ東京で

不思議な感覚




リュウ 

もう少しだから

まだ歩けるよね 


私がリュウの顔をのぞきこむ



リュウの事 

なぜ好きになったのか

思い出した



リュウの瞳が好きだった

茶色い瞳が好きだった

光が宿るの 

そして透きとおる色へと変わるの

じっと見つめていると吸いこまれそうになるの



初めてリュウの瞳を見たのは20年以上も前


ニューヨーク・ミッドタウン

55丁目のブロードウェイで彼に呼びとめられたの

振り返るとリュウが立っていた

彼は日本食レストランのウエイター

私は食事を終えて夏の夕暮れの光を浴びながら外を歩いてた


私を追いかけて来たみたい 

ちょっと肩が揺れている

ちょっとはにかんで緊張してたかな


私びっくりしちゃったの

どうしたんだろう 

チップ足りなかったのかなって思ったの

ニューヨークに来てまだ1週間も経ってなかったから

チップの事もよくわからなくって



今度の日曜日 あいてないかい

良かったらMOMAに一緒に行かないかい


リュウが誘ってきた 

ちょっと緊張したリュウの声 

私に恋してるってわかった



ちょっとだけ考えた 

ゆっくりとうなづいたの




これがリュウとの一日目




東京を二人で歩いてる

リュウの手が私を探してる

私もリュウの手を探してる



リュウの懐かしい左肩 心が優しくなれる

こんな気持ちになれたのって久しぶりなの


リュウを好きだった時の感情を思い出してる

思い出して歩き続けてる



リュウにだけは私の秘密を話せるかもしれないわ