
ねえ... わたしの話 聞いてくれる
和美があれからを話し始める
彼女の瞳に吸いこまれそうになりながら
僕はワインをひとくちそそぎこんだ
わたしって幸せなのかな
わたしって不幸なのかな
リュウと別れた後
わたしの人生のことを振りかえると
わからなくなって...
和美はサーモンの刺身を一片、口の中に入れると
僕から視線をはずして
過去という塊が空中に浮かんでいて
そこをじっと見つめていた
言葉を探してた
リュウは しあわせなの
わたしはね
リュウと別れた後
信也とつき合って
結婚することになったの
信也のことは知ってるわよね
信也もリュウに似て
とってもわたしに優しかったの
帰国してお互いの家族に
お互いを紹介しあって
結婚式の日取りも決まったの
わたしの誕生日に合わせて
5月6日にしてくれたわ
ねえ
マリッジブルーって言葉
リュウは聞いたことあるかしら
わたし だんだん不安になってきちゃったの
結婚って
好きな二人が一緒になって幸せになる
ただ そのくらいにしか考えてなかったの
でも結婚が決まると
わたしの両親や信也の両親が中心になって
いろいろと動いていく
なんだか大きなうねりの中にわたしがいる
そんな感覚にだんだんなってきたの
誰々さんを式には呼ばないといけないだとか
両親同士が喧嘩をしたりとか
たいへん そうたいへんだったの
それから いろいろとあって
和美が目をつぶって 深く息を吸い込んだ
4月30日 夜7時39分
携帯がなったの
携帯に時刻が出てたから
7時39分という時刻は忘れないわ
信也の母親からの電話だったの
信也が亡くなったって