
夜10時を過ぎると
母親は本の読み聞かせをしない
夜10時までに
寝る約束になっているからだ
夜10時を過ぎると
決まって娘は父親を呼ぶ
本を読んでもらうために
きのうの夜もそうだった
父親は娘の部屋に行き
娘の小さめの布団で横になった
娘はどの本を
読んでもらおうかと
部屋のなかで探していた
パパに買ってもらった本が
見つからないと
娘がポツリと言った
父親が言った
部屋の外の本棚に
読みたい本はないのかい
娘は
1冊の本を持ってきて
布団に横になった
この本を読むのは初めてかい
娘はうんと答えた
感情を込めて
父親は本を読み始めた
本を読んであげる
僕はこの行為が好きなんだ
父親はそう思った
読んでしばらくすると
物語の途中で
娘は眠りにおちた
父親は娘が寝た後も
読み聞かせをやめなかった
この本は
自分の心に読み聞かせる本だった
それがわかったからだ
生きることに
苦しんでいた父親は
うっすらと涙を流しながら
本を最後まで読み続けた
眠ってしまった娘と
そして何よりも
自分自身のために
父親は
葉っぱのフレディの最後のページを
読み終えると深い眠りについた
その顔は
少し笑っているようにも見えた