
白い壁に囲まれた治療室に僕はいる
足元には白いタイル張りの床
水を流して掃除ができるようになっている
完全に手術室だった
全身麻酔にするか局部麻酔にするかと
聞かれて 僕は局部麻酔にしてもらった
全身麻酔にすると 同伴者が必要だったからだ
治療用の椅子にかけている僕に
青い瞳 ブロンドのロングヘアーの看護婦さんが
英語で話しかける
麻酔が効き始めるまでの時間稼ぎと
僕をリラックスさせようとしているのかもしれない
ニューヨークにはいつ来たの
ニューヨークは好き
NYU(ニューヨーク大学)では何を勉強しているの
いろんな質問されたり 話をしたりした
僕はニューヨーク大学の生徒だと嘘をついて
ここに来た 大学生だと言えば保険証なしで
100ドル(約1万円)で治療が受けられると友だちから聞いたからだ
30分ぐらい経っただろうか
背の高い 少し頭が禿げ上がり 黒縁メガネをかけた
医者が治療室に現れた
笑顔で ハイ と僕に声をかけて治療を始めた
僕は大きく口を開け続けた
麻酔が良く効いているようだ 痛みは全くない
オーケー ダン (終わったよ)と医者に言われた
僕の首にかけられていた白い前掛けは
血で真っ赤に染まっていた
左奥の親知らずはあっという間に抜かれた
あと一本の親知らずは抜かなくてもいい
日本人のドクターを紹介するから
そこで治療してもらいなさい
そう言われて僕はニューヨークの歯科医院を後にした
日本人の医者にはさすがにニューヨーク大学の学生だと
嘘をつくことができず 保険も効かないため
1000ドル近い治療費が通院でかかることとなった
※1,000ドル 当時15万円ぐらいでしょうか