「見せしめの指導は体罰」 義家弘介政務官に聞く
【編集委員・西見誠一】
大阪市立桜宮(さくらのみや)高校の体罰問題を受け、文部科学省は部活動の指導のうちどこまでが体罰に当たるのか、新たな指針作りを始める方針を示している。その真意はどこにあるのか。下村博文文科相の指揮下で今回の問題を担当する「ヤンキー先生」こと義家弘介政務官に聞いた。
——なぜ部活の体罰に基準づくりを。
今回の件で、これまで議論されてこなかった部活の問題がはっきりと出てきました。部活では教師のさじ加減でレギュラーが決まる。スポーツ強豪校ではそれが大学進学にも影響します。だから余計に徒弟制度のような「絶対服従」の関係になりがちです。その中で、勘違いした指導者が出てくる。
もちろん殴る、蹴るといった行為が許されないのは当然ですが、じゃあ、そのほかの指導はどこまで許されるのか。ずっとあいまいだったその点まで議論しなければ、いま苦しんでいる子どもを守ることはできないのではないでしょうか。
例えば、柔道で顧問が「乱取り」と称して30回同じ子を投げ飛ばすのは体罰か。他の生徒への見せしめのように投げ続けたとしたら、顧問が「指導だ」と言い張っても体罰だと思います。脱水症状を起こしかけているのに真夏の40度近い体育館で延々と走らせるのも体罰にあたるでしょう。
現実にこうした事故は起きているのです。悪意を持った行為さえ「指導」として許される風潮があるとすれば、これらが体罰かどうか客観的に議論し、子どもを傷つけることをやめさせなければなりません。
——線引きは難しいのでは。
事故が起きたときや、教員を処分するときだけ議論しても、同じような
同じような問題はなくなりません。難しくても議論が必要です。
やっかいなのは、「自分が子どもの時にもあった」と体罰やしごきを容認する保護者が少なくないこと。それがまた顧問の意識をぶれさせている。教師だけでなく親や子どもに自覚してもらうためにも、「こういうことはあってはならない」という一定のラインを出さなければなりません。
——元不良で、非行問題を抱える生徒の多い学校で教師を6年務めた。義家さんも体罰と無縁ではなかったのでは。
子ども時代、私の通っていた学校には竹刀を持ち歩いている先生がいました。生徒をたたいたり殴ったり。でも不良だった私のところには絶対に来ない。やり返されるからね。教師はたたきやすい子をたたくんです。「体罰は教育だ」なんて言う人もいますが、こんなもん公教育として許されるわけがない。私は子どもの頃から「体罰はおかしい」と言い続けてきました。
教師になった後も自分から手を出したことはありません。少年時代の一時期、私は暴力と身近な世界に身を置きました。暴力から希望が生まれないことは実体験として分かる。残るのは後悔と悲しみだけです。
——具体的な作業は。
まずは全国の都道府県教委を通じて調査をかけ、部活動指導の実態を把握します。現場の声を集め、指導の現実と難しさを理解することも欠かせない。これらを同時並行で進めて統一点を探っていきたい。大前提は「自己満足として相手を追い詰めるしごきは体罰であり、認められない」ということです。
◇よしいえ・ひろゆき 長野県出身。高校で暴力事件を起こし退学処分に。北海道の北星学園余市高校に入り直し、明治学院大へ進学。1999年から6年間、母校の同高校で教壇に立った。横浜市教育委員、政府の教育再生会議担当室長、参院議員などを経て昨年の衆院選で当選。41歳。
◇ 〈桜宮高校体罰問題〉
昨年12月、バスケットボール部主将の2年の男子生徒(17)が顧問の男性教諭(47)から体罰を受けた翌日に自殺。顧問による体罰が日常的だったことが明らかになり、大阪市教委は「体罰容認の実態が改まっていない現状では新入生を迎えられない」とする橋下徹市長の求めに応じ、体育科とスポーツ健康科学科の今春の入試をとりやめた。
【朝日新聞社】
(01/27 07:16)