心こそ大切なり。


日出男Green's中野名曲堂♪ 

2010.10.29(金)聖教


小説「新・人間革命」
2010年 10月29日
母の詩24

 山本伸一の、母の思い出は尽きなかった。
 終戦の年となる一九四五年(昭和二十年)の春のことであった。それまで住んでいた蒲
田区糀谷(当時)にあった家が、空襲による類焼を防ぐために取り壊しが決まり、強制疎
開させられることになった。
 やむなく近くの親戚の家の敷地に、一棟を建て、越すことにした。家具も運び、いよい
よ、皆で暮らすことになった五月、空襲があった。その家も、焼夷弾にやられ、全焼して
しまったのである。
 伸一と弟が、やっとの思いで、火のなかから、一つの長持ちを運び出した。しかし、そ
こに入っていたのは、雛人形と一本のコウモリ傘であった。
 落胆して、言葉も出なかった。
 その時、母は、快活に言った。
 「このお雛様が飾れるような家に、また、きっと住めるようになるよ……」
 この言葉に、皆、どれだけ元気づけられたことか。
 「明るい性格は、財産よりももっと尊いものである」(注)とは、アメリカの実業家カー
ネギーの洞察である。
 そのころ、こんな出来事があった。
 やはり、空襲を受けた時のことだ。夜が明け始めた空に、一つの落下傘が見えた。高射
砲で撃墜された、「B29」から脱出した米軍の兵士であろう。
 落下傘は、見る見る地上に近づき、伸一の頭上を通り過ぎていった。
 彼は、その米兵の顔を、しっかりと見た。二十歳を過ぎたばかりだろうか。
 十七歳の自分と、それほど年齢も違わない、若い米兵の姿に、伸一は、少なからず衝撃
を覚えた。
 「鬼畜米英」と教えられ続けてきたが、目の当たりにしたのは、決して「鬼畜」などで
はなかった。色の白い、まだ、少年の面影の残る若者であった。
 伸一は、この米兵のことが、気がかりでならなかった。

■引用文献
 注 「富と福音——カーネギー自伝」(『世界の人間像5』所収)坂西志保訳、角川書店




名字の言
2010年 10月29日
 沖縄県内外の団体が集った「2010全国エイサー大会」。21団体が出場した創作エイ
サーコンテストで、創価大学イチャリバチョーデーズが審査員特別賞に輝いた。“平和の心
を広げたい”との思いを乗せた、息の合った演技は「躍動感あふれる演舞」と、地元県紙
でも大きく報道された▼沖縄男子部にも、伝統芸能のエイサーを通し、地域おこしの中心
を担う友がいる。昨年、「青年会エイサー」を立ち上げた。数人で始めたが、今や高校生か
ら20代前半まで総勢約50人の陣容になった。「一人一人が成長し、地域に元気を届けた
い」と語る彼。同じ志を担う後輩を育てようと激励を続け、規模も演技力も、ぐんぐん伸
びていった▼秋本番、全国で地域の行事がたけなわ。高齢社会の今、少なくなっている若
者を育て、地域を元気にしていくことが課題になっている▼どう青年を育てるか——この
問いに、池田名誉会長は答えた。「根本は、大人がどう生きるかです。そのうえで、やはり、
『青年が青年を呼ぶ』のです。青年は、青年の触発で成長する」と▼まず一人の青年を育
てたい。一人の青年が立ち上がれば、社会を支え、発展させる人材の波は、万波と広がっ
ていく。これが「青年学会」の在り方である。(碧)