近頃……高校生の兄が、知らない女を家に連れてくるようになった。
知らない、といっても同級生。
自閉的で周囲とあまり拘りを持たない私と違って、双子の兄のほうは交友関係が広い。
だから私がそいつに気がつかなかっただけなのかも。
だが、だからこそ憎い。
憎くて憎くて堪らない。
兄は私がトラウマを抱えていることを知っている。
あと少しで精神のストッパーが切れてしまうことも知っている。
だから小さい頃、誓ってくれたのに。
――僕がずっと、ずぅっとずぅっと……れいなを守ってあげるからね。
父さんと母さんが死んでしまったときも。
いじめられて学校に行けなくなった私を守ってくれたときも。
親友が死んでしまったときも。
兄は言った。
私が何よりも大切で、何よりも守るべき存在であると。
私のことを一番理解してくれるのは、彼だけだった。
私のことを思ってくれるのも。
私のことを守ってくれるのも。
私に話しかけてくれるのも。
信じてたのに。
それなのに、兄は私の知らないところで知らない人を自分の一番にしてしまった……。
私以外の一番なんて、必要ない。
必要ない。
要ラナイ物ハ抹殺セヨ――
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ギシ……
足元で、床板が音を立てた。
慌てて動きを止めると、レイナは深呼吸を二度三度繰り返す。
焦るな――ゆっくり、落ち着いて。
そう自分に言い聞かせ、再び忍び足で歩きだした。
今度は、衣ずれの音さえせぬように慎重に足を運ぶ。
息を殺し、頭上の張りを足掛かりに目的の場へとゆっくり進む。
体勢を低くして、膝をつけたまま歩いたほうがバランスを崩しにくいのだが、その場合音を立ててしまう可能性が倍になる。
この場合、多少関節が痛んでも此の格好の方が都合が良かった。
背に腹は変えられない、という奴だ。
現在レイナが歩いている場所は、家の天井裏。
まるで忍者のようであるが、彼女は大真面目であった。
元々暗闇を好む彼女にとってこの場所が苦になることは無かったし、もっと言うならここは彼女のテリトリーである。
そして、彼女が現在目指しているのは兄の部屋の上――兄とその恋人が現在”何か”している場所の上である!
出来ることなら彼らがそこで何をしているのか突き止めたかったし、そして其の行動は絶対にバレてはいけなかった。
兄はたしかに自分の一番を他に作っているようではあったが、まだレイナは嫌われているというわけでもないのだ。
ただ、”2番目”に降格しただけ。
しかし、その”だけ”が彼女にとっては何よりも辛いのだ。
レイナは、兄の部屋の上にとうとうたどり着いた。

