【JABBERLOOP『NEW』楽曲解説(後編)】
【JABBERLOOP『NEW』楽曲解説(後編)】
■Honeat Word
今作、僕は大まかなビートの感じから先に作っていくのが多かったのですが、この曲はメロディとコードが先に来て、後になって、あーハチロク(6/8拍子)か、って気づいた珍しいパターンです。
最初は「恋のゆくえ」とキャラが近くて、どちらかは今作に入れずにいようか、とも検討していたのですが、それぞれアレンジするとにつれ、違うキャラクターを見出す事ができて、両方収録できることになりました。
あちらはよりバラード色を押し出して、こちらは割と思い切った感じのゴリっと荒れたサウンドになりました。
直訳すると「正直な言葉」という意味ですが、実際には、秘めたる感じ、語らない感じといいますか、結局はそれは言えなかったという、儚さを僕は感じています。
短いながらにとてもストーリー性に富んだ作品にできたと思います。
個人的には、大サビの前のピアノとドラムの荒ぶる激情のシーンからの直後、グッと言葉を吞むようなサックスのシーンが好きです。
ビートから作る、と言いつつ、大体ベースのパート自体は一番最後に考えるのですが、この曲はそれが顕著でして、僕は隙間に低音を弾いただけというか、それ以外にないくらいパーツ同士の吸着が良くて、消去法でこうなったくらいの感じです。笑
YUKI
■Red Ocean
情緒的なワルツより始まり突如高速4ビートへ、そして元いた場所のワルツへ帰る。
そして、8小節の短いテーマのみ。
決められたのはこの条件だけ、あとは個々に与えられたインタープレイ。
デビュー作でも似たようなbeatはあったが、構成は勿論の事、BPM、その他諸々枠組みはガッチリ決め込んで制作していた。
原点回帰からの新たなJABBERRLOOPが自由に爆発している一曲だ。
一聴すると只の早いJAZZに聴こえるが、随所にエフェクトやキックの四つ打ち忍ばせてあり、10年経てのジャバでしか出来ない現代JAZZが完成したと思う。
個人的にも、テナーサックスでソロ収録するのはMissing my bird以来なので感慨深い。
五人の血走り、気迫溢れる真剣勝負を楽しんで欲しい。
DAISUKE
■Private Eyes
ライブではもう数十回演奏しているだろう曲なのでご存知の方も多いかも知れません。
2013年にリリースしたツアー会場限定アルバム『JAZZ目線』のリード曲で、2014年のアルバム『魂』の収録楽曲と同時期に作っていた曲の1つです。
2013年の"JAZZ目線ツアー"はジャズ箱中心に巡るツアーだったのですが、ツアーを行うにあたってツアー会場限定アルバムのリード曲の選曲は結構重要だったのですが、落ち着いたテンポ感とジャズらしい渋い雰囲気を伴っているこの曲が選ばれました。
JAZZ目線バージョンの『Private Eyes』は、アコースティックピアノとウッドベースを用いて敢えてツアーのコンセプトでもあった"ジャズらしいサウンド"に仕上げていたのですが、僕が曲を作った時の元々のイメージがエレクトリックピアノとエレキベースでファンキーなノリだったのもあり、この形で改めてレコーディングしてリリースしたかったことと、ライブでは完全に定番曲になっていることもあり、今回の再演収録が実現しました。
この曲を作った時は、インストでジャジーヒップホップ調の曲を作ろうと何となく思ってた気がします。
タイトルの由来は”目線=Eyes”と言う風に連想したからなのですが、『Private Eyes』は日本語で”私立探偵”と言う意味。
国内外の私立探偵ドラマの主人公が持ってる独特の哀愁感と、この曲のメロディーの哀愁感がイメージにピッタリだったので、このタイトルにしました。
MELTEN
◾️Movin’ on
『NEW』の中で最後まで方向性について議論した曲。アルバムの中でも異色なサウンドなカラーで、メロディーだけを聞くとアフロファンク、リズムを聞くとアシッドジャズ。
着地点を探しながらのレコーディングだった。作者のメルテンはアシッドをイメージしていた。
当初、ソロはホーンで演る予定だったが土着的になる為、Keyへ変更。少しケミカルサウンドへ寄った事によりアシッドジャズになったのではと思う。
内容で言うと楽曲に厚みを出すためテーマを多重録音している。テナー、アルト、トランペットをそれぞれ2本づつの計6管編成。
ドラムの工藤明がパーカッションを重ねグルーヴも厚くした。
是非耳を凝らして確認して欲しい。
DAISUKE
■恋のゆくえ
YUKIの作曲。
タイトルは『恋のゆくえ』となってますが、元々の仮タイトルは『Sweet』で、レコーディング時でも仮タイトルのままだったので、僕としてはとにかく艶やかな『甘く切ない音色』と、もしこの曲に詩が付いているとしたら、主人公は、感情を胸に秘めてあまり言葉に出せないような内気な女性?とか意識して臨んでます 笑
なぜか今この文章を書きながら『明石家さんまさんが真似する大竹しのぶさん』が頭に浮かんできましたが、レコーディング時はまったく意識してないので、みなさん頭から切り離してくださいね。
この曲では甘いベースソロが聴けますね。
元々、最初の頃のリハではあの部分はピアノソロだったと記憶してますが、たぶん僕とかダイスケがベースソロにしたら?と提案したと思います。
もちろんピアノソロはとてもしっくりきてこの曲にぴったり合うんですけど、合いすぎるので、もっと作曲したYUKIの感情的なものを含んだ方が個性が出ると思った記憶があります。
素晴らしいアシストだったと自己満足してます。
ベースソロの後にはこれまた一体誰が吹いてるんだろうという甘いトランペットソロが聴けます。
はい、自己満足です。
MAKOTO
■MotherLake
2015年の初披露から2年、映画「MotherLake」のテーマ曲でもあり、今回はMVも出来て僕自身もこの曲に色んな景色を見せてもらって本当に感謝しています。
明るくない、暗くない、テクニカルじゃない、知識を必要としない、余計な事をしない、、、
結果、ジャズでもフュージョンでもポップスでもない、JABBERLOOP独自の楽曲ができたと思います。
プレイヤーのエゴが無いというか、それぞれが凄みや主張を出すわけではない、それこそが名演で、その辺り、完成美、というのが正確か分からないけど、アルバム全体の自由度とは異質の性格があると思います。
ハプニングは起こらないけど、この曲そのものがハプニングみたいなものなんです。
初披露も映画も夏だったんだけど、なんだか夏の終わりのようであり、夏の思い出に浸る冬のようであり、夏の出来事に期待を寄せる春でもあるような。
うまく言えないけど、いつも共通して一つの景色を見せてくれるような、なんか心の柔らかいところをギュッと握ってるような曲です。
あと、大サビでコード進行と、Saxがハモリに変わるんだけど、音だけで聴くよりもMVのではその変化が協調されていて、映像ってすごいなって思いました。
まだ見てない方はぜひ見てみてくださいね。
YUKI
■Bird is Alive
2008年の楽曲『Behind the Wind』のミュージックビデオの制作を担当してくれたディレクターの方から久しぶりに連絡を貰ったのですが、内容が「海外(ドバイなどの中東地域)でオンエアされるTOYOTA PRIUSのCM楽曲を制作して欲しい。」と言う何だか実感の湧かない規模の凄い仕事を頂いたのがきっかけで作った曲です。
打ち合わせの時に「1stアルバムの収録曲『Missing my bird』の雰囲気が合うだろう」と言う方向になったので、いっその事『Missing my bird』の続編を書こうと思って書きました。
『Missing my bird』の雰囲気も踏襲しつつ、どっしりとしたテンポ感と『We got Jazz』(Soft Lipaとのコラボアルバム『経典』収録曲)のようなゴージャズな感じのホーンセクションをイメージして書きました。
CMはYouTubeでもご覧頂けるのですが、通常バージョン、ジャズバージョン、ロックバージョンと3バージョンのアレンジにがあるので、そちらも是非ご覧になってください。
【TOYOTA プリウスCM】
Photographer ver.
Freediver ver.
Musician ver.
タイトルは、モダンジャズの生みの親チャーリー・パーカー(サックス奏者 愛称:バード)の葬儀の時に棺を持っているうちの1人がつまづいた時、棺の蓋が少し空いた瞬間に偶然鳥がさえずって、その時に発せられた言葉が「Bird is Alive」。と言う有名な話があるのですが、そこから引用しました。
『Missing my bird』から『Bird is Alive』って何だかタイトルも繋がってる感じしませんか?
この2曲を聴くと10年の時を超えても色褪せずに過去と今が繋がってる風に感じて貰えるかなと思います。
MELTEN
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【JABBERLOOP『NEW』Release Tour】
9/16
福岡INSA
9/23
大阪CONPASS
10/22
東京UNIT
開場17時/開演18時
前売り ¥3,800+1D
予約
https://eplus.jp/ath/word/25687