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■ JR旅客6社 2020年3月ダイヤ改正 ■

 Hokkaido  East Japan  Central  West Japan  Shikoku  Kyushu 

 

 皆様こんばんは。今年もこの時期がやってまいりました(笑)。来春2020年3月のJRグループのダイヤ改正に関するリリースが12月13日に各社から発表されました。この発表が出ると年末なんだなと感じます(笑)。来年は2020年3月14日(土)にダイヤ改正が施行されます。今回は旅客6社から発表されたリリースから要約してご紹介してまいります。はじめに改正の目玉を挙げた後に各社の改正概要についてご紹介してまいります。

 

・(海)東海道新幹線から700系新幹線電車が引退

・(海)東海道新幹線全列車285km/h運転開始

・(北)快速エアポート増発

・(北)H100形営業運転開始

・(東)常磐線全線再開

・(東)高輪ゲートウェイ駅開業

・(東)E261系サフィール踊り子営業運転開始

・(西九)新幹線みずほ1往復の定期化

・(西)271系営業運転開始

・(九)YC1系営業運転開始

 

 

■JR北海道 HOKKAIDO

 

 2019年3月改正はこれまでのマイナス改正とは異なり,比較的明るい話題が多かったのですが,来春のダイヤ改正も比較的明るい改正となります。

 

 まずは新千歳空港アクセスから。近年の新千歳空港利用者の増加で終日慢性的な混雑が目立つ快速「エアポート」ですが,増便と速達便の設定が発表されました。現行ダイヤで日中15分間隔の毎時4本運行を行っているところを,新ダイヤでは概ね12分間隔毎時5本運行に増やされます。また朝の新千歳空港行きと夕方の札幌行きに新札幌と南千歳のみに停車の特別快速が2往復新設され,空港と札幌の所要時間が4分短縮されます。現行普通列車で運転される朝5時台の普通列車も快速エアポート化され,新千歳空港到達時刻が早まります。

 

快速エアポートへの733系追加投入で混雑緩和を図る。

 

 エアポート増発に伴い,運行パターンが大きく変わる千歳線を中心にゼロベースでの改正が行われるのもと思われます。同時に函館本線/小樽-岩見沢間で運行されている区間快速「いしかりライナー」は廃止され,残念ながら札幌-江別方面の速達性は若干低下してしまいます。

 

1988年から運行されてきた区間快速は廃止。

 

 非電化区間の主力として君臨するキハ40形は,製造からの年月が経過していることと,過酷な環境下を走行するため老朽化が著しく進行しています。これを置き換えるべく試験が続いていたGV-E400系と同一の新型電気式気動車・H100形がこの改正で函館本線/札幌・小樽-長万部間の旅客列車に投入されます。当区間ではキハ201系で運用する列車以外の気動車列車全てを置き換えます。

 

札沼線と日高本線の部分廃止によって余剰が出るキハ40形も数年で全数退役へ。

 

 特急列車では,現在「スーパー」を冠して運行される全列車から「スーパー」が外されます。これによってJRグループでスーパーを名乗る特急はJR西日本の4列車のみとなります。また,すずらんのみが停車している白老駅に「北斗」の大半が停車するようになります。

 

キハ283系もキハ261系へ置き換えられて徐々に退役していく。

 

 札幌都市圏を走る普通列車では区間快速いしかりライナー廃止による増発と3両から6両への増車が行われ,札沼線では夜間帯の時刻がパターン化されます。また,2019年春改正に続いて根室本線の古瀬駅と釧網本線の南弟子屈駅の旅客営業が廃止されます。

 

 ダイヤ改正施行後のGWには,1日1往復の列車のみが走ることで有名な新十津川駅を含む札沼線/北海道医療大学-浦臼-新十津川間が5月6日の運転を最後に翌7日付で廃止されます。

 

 

■JR東日本 EAST JAPAN

 

 新幹線では,東北・北海道新幹線の「はやぶさ」のうち,東京-新青森間で3往復の増発が行われます。また,東京-仙台間での運行となっている「はやぶさ33号」も新函館北斗まで延長されます。

 

 上越新幹線では,上野-高崎間の「たにがわ」で増発が行われます。現状「Maxとき・たにがわ」の16両運転を行う列車をE2系に変更し,同時に「とき」「たにがわ」の2列車へとそれぞれ分割されます。これによって増発となります。

 

E2系の拡充が進むものの,台風被害によってE4系の延命も決定している。

 

 今回の改正の目玉がなんといっても東日本大震災以後分断され続けた常磐線の全線復活でしょう。福島第一原発の事故から富岡-浪江間の運休が続いていましたがこの改正で運転再開となり,同時に仙台まで特急「ひたち」による直通列車も復活します。震災前はいわき駅での系統分離が計画されていた特急列車のしかも10両編成による全線通し運転はかなり前向きな改正ではないでしょうか。東京オリンピックの年の全線復旧は東日本大震災からの復興という意味では非常に大きな意義のあるものになるでしょう。全線再開時には筆者のYouTubeアカウント「かなまー工房」にて取り上げようと思っております。

 

9年ぶりに全線が繋がる常磐線。全区間通し運転の特急も同時復活。

 

 伊豆方面の特急「スーパービュー踊り子」用の251系は新形式であり新列車となるE261系「サフィール踊り子」に,「踊り子」で運用中の一部の185系は中央本線から転用されるE257系0番台改め,E257系2000/2500番台へと置き換えられます。国鉄型電車による特急列車消滅へのカウントダウンが刻一刻と迫っています。

 

伊豆特急のリゾート化の先駆者251系も世代交代へ。

 

 首都圏では,このほかにも富士急行線直通「富士回遊」が「あずさ」との併結運用で1往復増発され,うち下り列車は千葉始発の「あずさ」と併結運転を行います。同時に富士急行線下吉田駅が停車駅に追加され,同線内のフジサン特急と富士山ビュー特急も当駅に停車するようになります。ジャパンレールパス利用のインバウンド需要が増えている空港特急「成田エクスプレス」では,成田空港-東京駅間で全列車が12両運転を行うようになり,供給座席数が増加します。

 

 このほか,名称問題で物議を醸しているネーミングセンスのかけらもないJR山手線・京浜東北線「高輪ゲートウェイ」駅の開業,中央快速線と中央総武線各駅停車の運行体系見直しなどが行われます。

 

TGの運航再開等で利用者が増える仙台空港のアクセス改善も必至項目。

 

 東北エリアでは,利用者が増え,混雑が日常化している仙台空港アクセス線において2両で運行されている7往復の列車が4両へと増車されます。磐越西線では,E721系で運行される3往復の快速「あいづ」において指定席が新設されます。

 

 新潟地区では8月に投入されたGV-E400系が所定両数配置され,同地区のキハ40形系列を置き換えます。また,単独で新潟駅に入線できないキハE120系は只見線に転用されます。

 

 

■JR東海 CENTRAL

 

 JR東海では,東海道新幹線においてまた一つの時代が終了します。1999年に0系と100系を置き換えるために登場した700系新幹線電車が完全撤退します。これにより東海道新幹線は全列車のN700系化が完了し,線内の全列車で285km/h運転と「のぞみ」での毎時12本運転が始まります。「こだま」においても285km/h運転が行われるため,前後を走る「のぞみ」「ひかり」の時間短縮も行われ,すべての「のぞみ」が東京-新大阪間を2時間30分以内で運行されるようになります。

 

 また,三島始発の東京行き「こだま」で現行の始発列車の一本前にも列車が追加され,東京への到着時間が早くなります。

 

東海道新幹線から「カモノハシ」が消える。

 

 在来線では,東海道本線の磐田-袋井間に「御厨」駅が開業するほか,名古屋地区で普通列車の増発と高山本線の特急「ひだ」で時間変更が行われます。臨時駅の参宮線・池の浦シーサイド駅は廃止されます。

 

今春に続いて東海道線で利便性向上が図られる。

 

 

■JR西日本 WEST JAPAN

 

 JR西日本では,東海道新幹線の高速化によって東京-博多間を直通する「のぞみ」で時間短縮が行われるほか,山陽新幹線と九州新幹線を直通する「みずほ」が1往復増発され,高頻度運行の臨時列車も1往復が定期化されます。同時に停車駅に福山と新山口が加わり,本州~九州方面への利便性が増します。どんどん停車駅が増えていきます(笑)。

 

停車駅がどんどん増える「みずほ」。

 

 関西圏では,インバウンド需要が増えている関空特急「はるか」に増結用の新型車両271系が投入され,全列車が9両編成での運行となります。また,同じ阪和線を走る特急「くろしお」の全列車が日根野駅に停車することになり,紀伊方面から関西空港へのアクセスが格段に向上します。

 

阪和線系統の特急で利用者増強策が盛りだくさん。

 

 増車が各線で行われます。関西本線と大阪環状線を直通して運転されている大和路快速のうち,現行6両で運用される列車が全車8両化され,大阪環状線を走る列車がすべて8両へと統一されます。また,JR難波と和歌山線を直通する快速列車は取りやめとなり,和歌山線王寺-高田間のデイタイム列車がすべて227系に統一されます。

 

 インバウンド需要が増加の一歩をたどる奈良線と山陰本線京都口においても車両増強が行われ,昼間のみやこ路快速は全列車が6両へ,山陰本線の普通列車は一部が8両へと変更されます。

 

大和路快速から6両が撤退する代わりにみやこ路快速が6両に。

 

 福知山線では,昼間の丹波路快速・快速が宝塚~篠山口間各駅停車となる区間快速へと変更され,普通列車が宝塚止めになります。事実上の減便です。

 

 その他のエリアでは時間変更や増車等の軽微な改正内容が続きます。その中で岡山地区は宇野線で岡山-茶町間に普通列車の増発と快速が新設され,利便性が向上します。この快速は,「マリンライナー」よりも停車駅が多く,岡山都市圏輸送重視の列車となります。広島地区では土休日に久々に快速「シティライナー」が復活し,デイタイムの広島-岩国間の所要時間が短縮されます。西条方面には2本のみが新設されます。

 

中国地方では快速列車の新設が目立つ。

 

快速「シティライナー」の停車駅に横川が追加され,可部線方面との利便性も向上。

 

 

■JR四国 SHIKOKU

 

 JR四国では,本州接続改善がダイヤ改正の中心となります。高知方面の特急「南風」,徳島方面の特急「うずしお」,快速「マリンライナー」の一部列車において運行時刻を見直し,岡山駅での新幹線接続を改善する改正が行われます。また,それらに接続する一部の高徳線系統の普通列車でダイヤ見直しが行われます。

 

特急「南風」は全列車が宇多津駅に停車することに。

 

 高松駅を発車する予讃線では,昼間の発車パターンを統一し,一部の坂出止まりとなる普通列車が多度津・観音寺駅まで延長されます。

 

高徳線の普通列車において接続改善が図られる。

 

 このほか,予讃線/北伊予-伊予横田間の「南伊予」駅開業,特急「あしずり15号」の多ノ郷駅停車,特急「ミッドナイトEXP高松」の運転時刻を約30分繰り上げる改正が行われる予定です。

 

 

■JR九州 KYUSHU

 

 JR九州では,山陽新幹線直通の「みずほ」のうち,高頻度運行の臨時1往復が定期列車化されます。また,線内を運行する列車で博多方面行き列車の発車時刻を調整し,おおむね鹿児島中央発を30分間隔に,熊本駅発を20分間隔にしてわかりやすくされます。

 

門司港始発の「かもめ」が新たに設定される。

 

 特急列車では今回目立った改正は公表されませんでしたが,時刻表を解読すると面白い列車が誕生しています。博多と佐賀・肥前鹿島・長崎とを結ぶ特急「かもめ」に門司港始発が登場しています。佐賀行きとはいえ,門司港始発のかもめは久々の登場であり,博多駅をまたいで運行される定期特急列車(博多以北普通列車は除く)も九州新幹線開業以後初めての設定となります。

 

 在来線では福岡都市圏輸送に変化が見られます。今春改正で2本が投入されている821系電車が追加増備され,ラッシュ時間帯を中心に鹿児島本線でのロングシート車運用が増加し,混雑緩和が図られます。また,15年ぶりに香椎線と鹿児島本線を直通する列車が復活します。西戸崎を7時46分に発車し,香椎から鹿児島本線快速として運転する列車です。BEC819系としては初の鹿児島本線博多口の旅客列車となります。

 

今後置き換えられていくキハ66・67形。

 

 長崎地区では,大村線に新型ハイブリッド気動車YC1系が投入されます。今後老朽化が進行した高出力気動車キハ66・67形を置き換えていきます。同じく長崎地区の話題から,改正後の3月28日から長崎-浦上間が高架化され,両駅が高架駅に生まれ変わります。

 

 このほか,宮崎空港線と指宿枕崎線で増発と運行時刻の調整によるパターンダイヤが導入されます。大分でも豊肥本線の一部普通列車で増車が行われます。

 

 熊本と人吉を結ぶ観光特急「かわせみ・やませみ」のうち,朝の1往復を毎日運転から繁忙期運転に削減されます。「はやとの風」に続く観光特急のリストラとなりました。

 

 

 以上のような内容のダイヤ改正が2020年3月14日土曜日に実施されます。今回も前回に続いて比較的前向きな改正が多くある改正だなと感じました。全体的に増車に関することが多く,鉄道需要の復権に期待したいところです。また,車両の世代交代も目立っており,昭和と平成初期生まれの車両も徐々に数を減らしていきます。