前号では、ミカンに代わる作物として、近年増加傾向にある「国産レモン」の現況とその背景を取り上げた。
1月に入り、県内では早生の八朔が顔を出し始めた。収穫量が減少傾向にあるのは八朔も他のミカンと同じ。今週は八朔の魅力を伝え、収穫量の維持や生産者の収益改善を目指した各地の取り組みについて紹介したい。


【写真】八朔を使用したサワー

2021年の農水省統計によると、八朔における全国の収穫量は約24000t。そのうち和歌山県内では約17000tが収穫され、全国の約7割を占める。
日照時間が長く、温暖な気候を好む八朔は、和歌山県、広島県、徳島県、愛媛県、大分県が主な生産地。酸味と甘みに加え、程よい苦みもあり、古くから愛される日本古来の柑橘である。
2011年の統計値を見ると、全国の収穫量は約36000tで、和歌山県内では約24000t。10年間で収穫量が3割程度減少している。

昨今、主な生産地では、生産者の所得向上を目的に、流通に適さない果実を加工品として使用する取り組みが進む。そこで着目されているのがお酒とのコラボレーション。JAなどが和歌山県産の八朔と温州みかんを使用したサワーを開発し、全国のコンビニやスーパーで販売。
他にも、有田市の八朔のみを使用したサワー、紀の川市の八朔を使ったクラフトビールなどが。
県外では、大分県産の八朔と清見オレンジを使用したサワーや、広島県産の八朔とレモンを使用したサワーなど、八朔を使用したお酒の開発と販売が加速化している。

有田市で生産された八朔が使われたサワーを飲んでみた。果汁は7%であるが、八朔特有の酸味と甘み、そして程よい苦みを感じ、口当たりが抜群。
使用されているウオッカとの相性もよく、八朔の新たな価値を強く感じた。

(次田尚弘/和歌山市)

前号では、国産レモンを使用した「レモン酒」の作り方を取り上げた。防腐剤の散布がなく外皮まで安心して食すことができる国産レモン。加工品として活用される機会が増える昨今、国内の生産量は増加傾向にある。今週はレモン栽培の動向を紹介したい。

【写真】国産レモンの作付面積と収穫量の推移

農水省の統計によると、国内の消費量は約5万トン。内訳は輸入が4.2万トン、国産が0.8万トンとされている。約84%を輸入に頼っており、その多くはアメリカやチリなど、中南米からとなっている。
その背景は価格の安さに加え、年間を通して安定的な供給体制が確立されているから。国産レモンは夏季の出荷が難しい。 レモンの栽培適地は、年平均気温が17度以上で、最低気温がマイナス3度以上。三大生産地である、広島、愛媛、和歌山が、瀬戸内海に面する比較的温暖な地域であることはそれ故である。

レモンは寒さに弱く、氷点下になる時間が数時間続くだけで、外皮の障害や枝枯れ、花の減少などが発生する、デリケートな作物である。 栽培できる地域が限られるが、昨今、ミカンに代わる高単価な作物として、国産レモンの栽培が拡大している。
統計によると1990年の作付面積は約125ヘクタールで収穫量は約2000トンであったが、2021年には作付面積が約736ヘクタール、収穫量は約8650トンと、作付面積は約5.8倍、収穫量も約4.3倍と増加傾向にある。
広島県内では収穫したレモンを長期低温貯蔵により、国産レモンの流通が難しい夏季に出荷することで、高単価で販売できる仕組みを取り入れるなど、様々な工夫が行われている。 その背景には、ミカンの消費量の減少に対し、地域の特性と柑橘栽培の技術を活かし新たな収益源を求めているという複雑な状況も見え隠れする。

(次田尚弘/和歌山市)

前号では、麦との相性が抜群で、酸味と香りが融合した「レモンビール」の味わいと家庭での作り方を取り上げた。
レモンを使ったアルコール飲料として代表的であるのが「レモン酒」や「レモンスカッシュ」。果実酒として扱われ、梅酒と同じ方法で、家庭でも容易に作ることができる。
今週は国産の果実を使ったレモン酒の作り方を紹介したい。


【写真】レモン酒の仕込み手順

レモンを使った飲料として親しみ深いのが、レモンウォーター。飲食店などでスライスされたレモンを大きな瓶に浮かべ、ほのかなレモンの風味が味わえるもの。
レモン酒の作り方はその想像を覆すものである。

レモン酒は梅酒の作り方と同様であるが、事前の下ごしらえに工夫が必要。
まず、レモンの上下をカットしたうえで、果肉に達するまでナイフを入れ、果肉の外側に沿って外皮を落としていく。
すると、まるで皮を剥いた蜜柑のような、果肉だけのレモンが現れる。

続いてレモンの果肉2個(約100g)につき、氷砂糖100gとホワイトリカー200㎖を用意。果肉だけになったレモンを3等分したものとレモンの皮(白い部分は苦みが出るので切り取る方がよい)を、保存瓶の中に氷砂糖と交互に入れ、最後にホワイトリカーを注ぐ。

冷暗所に置き、皮を1週間程度、果肉を数ヶ月程度で引き上げる。長く置いたほうが完熟し味わいは増すが、1ヶ月を過ぎれば飲み始められる。

特筆すべきは、レモン酒は国産の果実ならでは。外国産のレモンは輸送中の腐敗を防ぐため、人体に影響が無い範囲の防腐剤が散布されていることが多い。
産地だから手に入る新鮮な果実を使ったアルコール飲料。来年のレモンのシーズンに向け、皆さんも仕込んでみては。

(次田尚弘/和歌山市)
前号では、酸味と香りが強い早熟の「グリーンレモン」を取り上げた。
まもなくクリスマスを迎えるこの時期。ふと、輸入食品の専門店を覗いてみると、クリスマスにちなんだ食材のコーナーの一角で、「レモンビール」なるものを発見。
レモンとビールの相性はいかほどか。今週は、レモンビールの魅力と家庭で出来る作り方を紹介したい。


【写真】グリーンレモンを使った「レモンビール」

レモンビールはビールにレモンを加えたもの。ビールにレモン果汁を加えて製造されるため、発泡酒の分類となるものの、酒税はビールと同じ税率になるという。
レモンの果汁が加わることにより、アルコール度数はやや低くなり、概ね4%から5%程度となる。

飲んでみるとビールとレモンの相性の良さに驚かされる。ビール特有の苦みがレモン果汁により抑えられ、フルーティな味わいが広がる。
それでいて、ビールの醍醐味であるキレやのどごしもあり、飲みやすくてさっぱりした味わいを楽しめる。濃い味付けの料理とも合う。

自宅でも簡単に作ることができる。ここで活躍するのがグリーンレモン。完熟したイエローレモンと比べ果汁が少ないため、量が必要になるものの、強い酸味と香りが味わいを際立たせてくれる。

レモンの量は好みだが、インパクトを感じるのは、350㎖の缶ビールに対しレモン1個というところ。
先に果汁をコップに入れ、ビールを注ぐ。想像以上に泡立ちするので注意されたい。
ビールの苦みが苦手な方や、深いコクを味わいたい方には、メープルシロップや蜂蜜を適量混ぜることもおすすめ。

この時期ならではのレモンビール。クリスマスの食事の席で一杯いかが。

(次田尚弘/和歌山市)
前号では、ポルトガルが原産の「リスボン」と、柚子の変異種とされる「日向夏」を交配した新鋭の国産レモン「璃の香」を取り上げた。
この時期に販売されるレモンは、緑色と黄色のものがあり、緑色のレモンには「グリーンレモン」の名が付けられている。


【写真】和歌山県産の「グリーンレモン」

しかし、グリーンレモンという名称の品種は無く、あくまで呼び名。一方、一般的な黄色のレモンは「イエローレモン」と呼ばれる。
いずれも同じ品種である両者の違いと、それぞれの魅力を紹介したい。

そもそも、呼び名が異なる理由は果皮の色に関係する。果実が若く果皮が緑色のうちに収穫されるため、グリーンレモンと呼ばれる。収穫時点では緑色をしているが1ヶ月程経過すると果皮の色が黄色くなり、一般的な黄色に変化していく。
外国産のレモンが黄色であるのはそれが理由で、グリーンレモンとして収穫されたものが日本に到着する頃には黄色になっているというもの。バナナと同じ原理である。

国産のイエローレモンは収穫後に貯蔵した後に販売されるわけではなく、あくまでも樹上で完熟したものを収穫し出荷。それ故に、10月から12月頃に収穫した早熟のグリーンレモンと、1月から4月頃に収穫した完熟のイエローレモンは同じ木に成ったものである。

グリーンレモンの特徴は、酸味と香りの強さ。料理や飲料において独特の風味を出してくれる。
一方、イエローレモンは酸味が和らぎ甘味が増し、風味も穏やかになり、果汁も多くなる。

今はグリーンレモンとイエローレモンの両方が出回る時期。食材によって異なる色のレモンを使い分け、最盛期ならではのフレッシュな味わいを楽しんでほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
前号では、果汁がたっぷりで酸味よりも甘味が先行する「マイヤーレモン」を取り上げた。
全国3位のレモンの生産地である和歌山県。レモン栽培は他の品種でも。今週は2015年から栽培は始まった「瑠の香(りのか)」を紹介したい。


【写真】サイズが大きく果汁も多い「璃の香」

瑠の香は、ポルトガルが原産の「リスボン」に、柚子の変異種とされる「日向夏」を交配して生まれた品種。登録上はカンキツ属の交雑種であるが、外観や利用用途がレモンに近いため、レモンの新品種として普及が進んでいる。

果実のサイズは200g程度と大きめ。親品種のリスボンの約1.3倍とされる。外皮が薄く、種が少ない。果肉の割合が約8割と実がしっかりと詰まっており果汁が豊富。

食してみるとマイヤーレモンほどの甘味は無く、レモンらしい適度な苦味を感じる程度でまろやかな味わい。香りは日向夏との交配種とあって、レモンの香りは控えめで、春柑橘のような香りがする。皮ごと調理でき、マーマレードなどの加工品として利用されることも多い。

璃の香の強みは、レモンに多い病気である「かいよう病」の発病割合が一般的なレモンよりも低いこと。一般的に約半数といわれる発病割合が、璃の香の場合は2割以下と耐性に優れた品種である。

黄色に熟した果実の収穫期は11月下旬頃から始まる。農水省統計(2021年)によると、主な生産地は静岡県で収穫量は6t程度。昨今は各地に栽培が広がっており、筆者は有田川町で栽培されたものを購入した。

香川県では、ブランド化を目的に県内で栽培されるレモンに「さぬき讃レモン」の愛称を付ける取り組みを開始。璃の香もそのひとつとされ、今後の栽培拡大を期待されている。

旬を迎えているレモン。ぜひ、県内産のフレッシュな味わいを楽しんでほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
前号では、瀬戸内の魅力を凝縮し、サッパリとした味わいの「レモン鍋つゆ」を取り上げた。国内におけるレモンの三大産地は、広島県(約4400t)、愛媛県(約1700t)、和歌山県(約800t)と、瀬戸内海に面した地域での栽培が盛ん。レモンにも様々な種類がある。
今週は和歌山県内でも栽培される希少品種「マイヤーレモン」を紹介したい。


【写真】和歌山県産の「マイヤーレモン」

マイヤーレモンはレモンとオレンジが自然交配した品種とされる。中国が原産で、日本の実業家がアメリカから国内に持ち帰り、兵庫県川西市の専修学校で栽培。昭和35年(1960年)頃、伊丹市の農家に譲渡され栽培が広がった。現在も伊丹市内での栽培が盛んで、市のマスコットキャラクターに起用されるほど。地域の特産品として定着している。

生産量が多くないため統計データは無いが、国内で栽培されるマイヤーレモンの約9割が三重県産とされる。栽培に欠かせないのが豊富な水分であるという。豊富な雨量と水はけの良さが栽培の条件で、国内の平均的な降水量の2倍近くの降雨がある三重県御浜町や紀宝町が主な栽培地。以前、紀宝町を取り上げた当コーナーで紹介のとおり。同様の条件が揃う和歌山県内でも栽培が進んでいる。

見た目は一般的なレモンと比べると丸みを帯びた形状。輪切りにしてみると外皮の薄さに驚くと同時に、香りの高さと果汁の多さに気付かされる。皮まで食べられるレモンと言われ、お菓子やジャム作りに重宝されるほか、一般的なレモンより果汁が2~3割多いことからジュースに使用されることも。酸味よりも甘味が先行する不思議なレモンである。

収穫は10月上旬頃から。収穫の開始時期は果実が緑色で、12月に入ると黄色のものが出回り始める。果汁たっぷりで魅力的な味わいのマイヤーレモン。ぜひ、食してみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
前号では、地域の特産品を組み合わせ、冬の食卓を彩る「柑橘鍋つゆ」を取り上げた。
様々な鍋つゆが親しまれるなか、元祖の柑橘鍋ともいえる存在が「レモン鍋」である。
かつて、筆者が住んでいた広島県では、冬の風物詩として飲食店で提供されるほど。
昨今は複数のメーカーからレモンを使った鍋つゆが売り出されるなど、ファンが増えている模様。今週は「レモン鍋つゆ」を紹介したい。


【写真】白菜との相性抜群の「レモン鍋つゆ」

筆者が購入した鍋つゆは、塩気を感じる鳥ガラスープをベースにしたもの。つゆの色は少し白みを帯びた透明で、爽やかなレモンの香りが漂う。チキンがベースであるため、鍋には鶏肉を入れることにした。

一般的な鍋の具材である白菜やエノキ、椎茸などを入れ温める。食してみると白菜との相性が良く風味が際立つ。鶏肉もあっさりと食することができ、素材の味を引き立て、箸が進む。一方で椎茸は互いの香りが邪魔をするのか、筆者にとってはあまり魅力的な味わいではなかった。

鍋のトッピングにオススメしたいのが中華麺。レモンの鍋つゆは、豆乳鍋のように、つゆを多く飲むことはないため、つけ麺のような食べ方になるが、レモンの風味と小麦を使った麺の食感が合う。つゆの楽しみ方としては、チーズを入れリゾット風にして食する方法がある。

2021年の農水省統計によると、レモンの収穫量第1位の都道府県が広島県(約4400t)、第2位が愛媛県(約1700t)、第3位が和歌山県(約800t)と、和歌山県は全国シェアの約1割を占める。

瀬戸内レモンの名で、広島県や愛媛県が産地として知られるが、実は和歌山県もレモンの産地。柑橘の一大産地として、レモンを使ったご当地ならではの商品が生まれることを期待したい。

(次田尚弘/神戸市)
11月7日、大阪管区気象台は近畿地方で「木枯らし1号」が吹いたと発表。昨年より4日早く、朝晩は冷え込むようになった。秋の深まりを感じるこの時期は、お鍋の季節の到来でもある。

昨今、豆乳鍋を筆頭に、豚骨醤油鍋やキムチ鍋まで、様々な「鍋つゆ」が販売され、冬の食卓のレパートリーが増えた方も多いのではないか。
先日、とある食料品店で「柑橘鍋つゆ」なるものを見つけた。柑橘を使った鍋つゆとはどのようなものか、実際に食してみた。


写真】柑橘の果汁と鶏ガラスープで作られた「柑橘鍋つゆ」

購入した鍋つゆには3種の柑橘が使われている。「柚子(ゆず)」「酢橘(すだち)」「柚香(ゆこう)」の果汁が配合され、塩味の鶏ガラスープをベースにしている。
使用されている食材は全て徳島県産。柚香という柑橘は徳島県の山間部でのみ栽培されている希少品種。柚子とダイダイの自然交配による品種とされる。

徳島県では「香り柚子、酸味酢橘、味柚香」といわれるほど親しみ深い柑橘のひとつ。筆者が購入した鍋つゆには、3種全てが配合されており、徳島県が誇る柑橘を凝縮した逸品である。スープに使用されている鶏ガラも徳島県産の「阿波地鶏」。大手航空会社におる地域振興のプロジェクトの一環で開発されたもので、地域の特産品の消費拡大を目指している。

鶏ガラスープであるため、鶏肉をベースに野菜を入れ、鍋つゆを注ぐ。食してみると柑橘のほのかな風味に薄い塩味を感じる。鶏ガラスープであるが強調し過ぎることなく、柑橘の旨味を引き立てる程度の薄味で、あっさりとした鍋を楽しみたいときにオススメしたい。

地域の特産品を組み合わせ、人気を博す鍋つゆの領域への挑戦。あっさり味の新たなジャンルとして、食卓に浸透することを期待したい。

(次田尚弘/神戸市)
前号では、和歌山市内の温泉が、有馬温泉の「金泉」と同様の「鉄泉」と、「銀泉」と同様の遊離二酸化炭素量が豊富な「炭酸泉」の両方を含む、ハイブリッドな存在であることを取り上げた。
有馬温泉では、地域が持つ魅力を活かした、新たな旅行者の獲得に向けた取り組みが始まっている。


【写真】多様な切り口で誘客を図る「有馬温泉」

過去に神戸市などが企画し開催された「サイクルロゲイニング」のイベントでは、有馬温泉を中心に六甲エリアなど、サイクリストのレベルに分けた6つのコースを用意。完走後に有馬温泉の好きな温浴施設で日帰り入浴を楽しめるというもの。

サイクルロゲイニングとは、自転車で特定の地域を巡るイベント。ロゲイニングとはナビゲーションスポーツの一種とされ、地図をもとに制限時間内にチェックポイントを巡り得点を集めるスポーツ。
有馬温泉では、周辺地域の美しい景観や起伏の激しい地形を組み入れたコースを設けるなど、神戸の自然資源を活かしたサイクルツーリズムが推進されている。

また、世界各国からサイクリストがバーチャルで参加し、有馬温泉から六甲山を目指すオンライン上のレースが行われ、後日、実際に現地でレースを行うオフライン型のイベントを開催し、世界からの誘客を図るなど、eスポーツとの連携も進む。

和歌山県内では鉄道沿線の活性化を目的としたサイクルロゲイニングが開催されている。
チェックポイントとされる観光地を巡り完走した参加者に、土産品を提供。人気を博し、和歌山県がサイクリング王国と称される所以ともいえるイベントである。

観光資源とサイクリングを組み合わせた取り組みが進む昨今、サイクリング初心者でも気軽に楽しめるものとして、市内の魅力的な温泉が活用されることを期待したい。

(次田尚弘/神戸市)