前号では、条例で景観や治安維持に取り組む、ワイキキビーチの対策を取り上げた。今週はハワイ州が推進する持続可能な社会づくりの取り組みを紹介したい。


【写真】「ラナイ」からビーチとダイヤモンドヘッドを望む

ワイキキのリゾートホテルの魅力のひとつであるのが「ラナイ」。ラナイとは客室から出られるベランダのことで、椅子や机が置かれ、ビーチやダイヤモンドヘッドを望みながらゆっくりとしたひと時を過ごすことができる場所。ホテルによってはラナイでモーニングの提供を受けることもできる。

客室とラナイを行き来するなかで気付いたことがある。隔てる大きな窓が少しでも開いていると、客室の空調が止まるということ。環境保護の取り組みの一環で、外気が客室内に入り温度が上昇することで、不用意に空調が稼働することを防ぐため、扉にセンサーを取り付け、空調を操作しているという。これはホテル独自の取り組みであるが、ハワイ州が推進する様々な取り組みがある。

ハワイ州は国連が進める持続可能な開発目標「SDGs」を基準に、独自にゴールを設定した「アロハ・プラス・チャレンジ」という特別なプログラムを設けている。歴史を辿ると約50年前に「ハワイを思いやる心」という意味がある「アラマハワイ」の概念が生まれ、国連総会でSDGsが採択される以前から、持続可能な社会を実現するための6つの取り組みを定め、世界に先駆けた活動を推進している。

6つの取り組みとは「クリーンエネルギーへの転換」「地産地消の促進」「天然資源の管理」「固形廃棄物の削減」「地域コミュニティの促進」「環境経営と教育の推進」を指し、官民が一体となった「レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)」が進んでいる。

(次田尚弘/ホノルル)
前号では、美しい白砂のビーチを形成する「白良浜」と「ワイキキビーチ」の歴史を取り上げた。
一大リゾート地であるワイキキビーチでは、その景観や治安を維持するために様々なルールがある。今週はハワイ州における条例について紹介したい。


【写真】パラソルが並ぶ「ワイキキビーチ」

まずは、公共の場所での飲酒の禁止。美しい砂浜と海を前に思わずビールやカクテルを飲みたくなるものだが、ビーチでアルコールを飲むことは罰金の対象。ビーチに隣接するリゾートホテルにはレストランやバーが設置されておりそこでの飲酒は問題ない。他にもルールがあり、アルコール飲料を缶や瓶のまま手にして街を歩くことは禁止されるなど、飲酒については厳しいものがある。

タバコについても同様でワイキキビーチは全面禁煙となっている。一部のビーチでは通り抜け以外のビーチの利用を禁止しているところも。

近年、海に生息するサンゴ礁に海水浴客が使用する日焼け止めの成分が深刻な影響を与えていることがわかり、有害成分を含む日焼け止めの販売を禁止。日本からの持ち込みは可能だが、環境保護に配慮したものを使用したい。

アメリカと比べマナーや治安が良いとされる日本。白良浜の場合はどうか。白浜町では2008年から白良浜を「禁煙ビーチ・ごみポイ捨て禁止ビーチ」としている。違反しても罰金は無い。訪れる観光客の意識に委ねられている。

来月には大阪・関西万博が開幕。和歌山県も世界から注目され、観光客の流入も進むだろう。条例を設けマナー違反を抑制するのではなく、観光客が訪れる地域のことを理解し、自律した行動を取ってもらえることがベスト。ますます地域の特性をわかりやすく発信する必要がありそうだ。

(次田尚弘/ホノルル)
前号では、白浜町と友好都市提携を結び、白砂が特徴である「ワイキキビーチ」の歴史と両市の関係を取り上げた。ワイキキビーチと白良浜はなぜ白砂なのか。両者の歴史を深堀したい。


【写真】湿地帯から美しい砂浜に変貌した「ワイキキビーチ」

かつてワイキキビーチが湿地帯であったことは前述のとおり。火山に近いことから、溶岩に由来する
玄武岩の黒い砂利が広がり、衛生的にも優れない環境であったという。ハワイはサトウキビ栽培などの第一次産業が盛んであったが、ハワイ州となってからは主産業を観光に変えようとする方針が掲げられ、投資家による大規模な開発が進んだ。港湾設備や運河が作られ、島内外から運ばれた白砂でビーチを形成。それに沿うようにしてホテルが建ち並び、現在の美しいリゾート地が出来上がった。港湾が整備されたことで大型客船の就航が叶ったことも発展の要因として大きい。
一方、白良浜は古くから海水浴場として知られ、大正の頃までは白砂が採取されガラス原料として使われていたほど。白砂の約9割は鉱物である「石英」であり、これを多く含む砂を加熱し溶かすことでガラスの原料になる。
かつては遠浅で、砂を踏むとキュッキュと音が鳴る「鳴き砂」が楽しめる砂浜であったが、高度成長期から周辺地域の開発が進んだことなどが原因で、白砂が流れるようになり減少。平成元年からはオーストラリアから砂を補充し、かつての姿を復元している。
歴史を辿ると白砂が特徴の美しいビーチという観点からは、原点が天然か人工かという違いから、白良浜の方が歴史が深いといえよう。とはいえ、両者は白砂を共通とする友好関係。ワイキキビーチが世界のリゾート地として親しまれる背景に触れていきたい。
(次田尚弘/ホノルル)
前号より、日本から約6600㎞離れた常夏の島「ハワイ」を取り上げている。今週はハワイ州の州都、ホノルルにある「ワイキキビーチ」を紹介したい。


写真】白い砂浜が美しい「ワイキキビーチ」

ワイキキは浜辺に沿ってホテルが建ち並び、観光客を魅了するリゾート地。約3㎞に渡り、綺麗な白砂が特徴の砂浜が「ワイキキビーチ」である。

ワイキキビーチは「コロニーサーフビーチ」「カイマナビーチ」「カピオラニビーチ」「クイーンズビーチ」「プリンス・クヒオビーチ」「ロイヤル・ハワイアンビーチ」「グレイスビーチ」「フォート・デ・ルッシービーチ」「デューク・カハナモクビーチ」の8つのビーチの総称。

ホテルから直接ビーチへ行くことができる賑やかなビーチもあれば、比較的海水浴客が少ないビーチまで、その装いは様々である。

かつては湿地帯でハワイ王朝の保養地として使用されていた。ビーチになったのは1920年頃から。島内のノースショア地域やカリフォルニアのマンハッタンビーチから白砂が運ばれ、ビーチを形成していったという。

湾曲した地形に白い砂浜といえば、和歌山県民にとって身近な存在であるのが「白良浜」。白浜町にある約620mのビーチでワイキキビーチと酷似し、ホテルが近接するリゾート地としての共通点もある。

この共通点を活かそうと、平成12年に白良浜とワイキキビーチが「友好姉妹浜提携」を締結。翌年にはホノルル市を親善訪問し、平成15年にはホノルル市から代表団が来町するなど交流が進み、平成16年には白浜町とホノルル市が「友好都市提携」を締結するに至っている。

以降、親善訪問をはじめ双方が連携した催しが開催されるなど交流が活発に行われ、昨年20周年を迎えている。

(次田尚弘/ホノルル)
2011年1月に初号を掲載した本コーナーは今日で700号を迎えた。15年目に入り当時22歳であった筆者はこの春37歳を迎える。和歌山と関係がある地域や食べ物、地域振興の先進事例を取り上げてきた。続けられているのは読者の皆さんのあたたかい応援と、スポンサーである株式会社南北様の理解のおかげ。感謝の気持ちでいっぱいである。これからも皆さんが和歌山の魅力に触れ、誇りに感じられる情報を発信していきたい。

日本から南西に約6600km。常夏の島と称され、新婚旅行先としても人気が高い「ハワイ」。真っ青の海と空が美しく、年間を通して温暖な気候が魅力的である。700号を記念して、和歌山との歴史や文化、リゾート地としての先進的な取り組みについて紹介していきたい。


【写真】ワイキキビーチやダイヤモンドヘッドで有名な「オアフ島」

筆者が渡航したのは昨年12月。関西空港からの直行便で片道約8時間のフライトである。日本との時差は19時間。日本を夜に出発すると、到着時の現地時間は日本を出発した日の朝となる。
ハワイは、中部太平洋に浮かぶアメリカ領。ハワイ州の州都「ホノルル」があるのがオアフ島。白い砂浜が美しい「ワイキキ」や、火山の噴火により形成された丘が特徴の「ダイヤモンドヘッド」など、雄大な自然が魅力の一大リゾート地である。

日本との関係は1885年、日本政府とハワイ王朝で締結された協定に基づき、現地のサトウキビ畑で3年間の契約で労働することを条件に移民が始まった。移民した953名のうち22名が和歌山県人であったという。
第二次世界大戦の悲しい歴史もあるが、日本とは関係が深い地域。和歌山とハワイのつながりに触れていきたい。

(次田尚弘/ホノルル)
前号では、熊野灘で獲れたサバが山間地域に運ばれ、郷土料理となった「柿の葉寿司」の歴史と文化を取り上げた。
サバを起点に始まった柿の葉寿司だが、現在は様々な食材を使ったものが販売されている。今週は地域性のあるバラエティ豊かな柿の葉寿司と、それぞれの食材が採用された経緯を紹介したい。


【写真】様々な柿の葉寿司(㊧ サケ ㊨ 昆布締めのタイ)

柿の葉寿司の詰め合わせに入っている代表格ともいえる存在が「サケ」。100年程の歴史があるとされ、文豪・谷崎潤一郎の小説にも登場し、塩気がサケに染み込み柔らかくなったさまを絶賛している。
サケが使用された経緯として一説には、林業が盛んな吉野地方に全国から労働者が集まり、労働者の田舎から日持ちがする魚として「塩サケ」が届き、それを柿の葉寿司に使用すると味わいがよく、地域に根付いたとされる。

続いては「タイ」。こちらは和歌山の海で盛んに獲れる魚である。これは、柿の葉寿司が生まれた経緯とつながってくる。ハレの日のめでたい場で振舞われるものであることから、「めでたい」との語呂合わせでタイが使われたという。それ故なのか、タイを昆布締めにして、さらにハレの日を飾るものとして販売されている。

他には「アジ」や「エビ」も。歴史は古くないようだが、柿の葉寿司を和歌山県や奈良県を中心とした関西圏に閉じたものではなく、その魅力を全国に発信しようと、広く好まれる食材として採用されたという。

これらは、柿の葉寿司の詰め合わせに入る代表的なものであるが、お店によって種類や味付けが異なり、同じ魚が使われていてもその味わいはバラエティに富んでいる。ぜひ、お気に入りの逸品を見つけてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
前号では、果実よりもビタミンCやポリフェノールなどの有効成分が多く含まれる「柿の葉」の魅力を取り上げた。柿の果実を購入するとき、葉を目にすることは少ないが、「柿の葉寿司」として触れる機会は多いもの。和歌山県紀北地方や奈良県の郷土料理として親しまれる柿の葉寿司の歴史を紹介したい。


【写真】サバを使った「柿の葉寿司」

柿の葉寿司が生まれたのは江戸時代中期のこと。発祥の経緯は様々な諸説がある。高い年貢に苦しむ和歌山県南部の漁師が熊野灘で獲れたサバを塩で締め、奈良方面へ売り歩き、村々で行われる催事のご馳走として定着したという説。あるいは、紀の川を使って運ばれたサバが上流の地域で、催事の際に食べられたという説がある。

いずれも、海から離れた地域におけるハレの日の食材として広まり、やがて、容易に手に入りかつ抗菌作用が期待できる柿の葉を使うことで、保存食になっていったとされる。
発祥が和歌山県なのか奈良県なのか定かではないものの、山間地域の方々の知恵が集まった郷土料理であることに違いない。

和歌山県紀北地方や奈良県の名物として広く知られるが、日本各地にも存在。石川県加賀地方や鳥取県智頭地方にも存在。これらの地域ではブリやマスが使用される傾向にある。広げた柿の葉の上に寿し飯と魚の切り身を載せて巻くという作り方の基本は同じだが、太平洋側と日本海側で使用される魚が異なるなど地域性があり面白い。

サバを起点に始まった柿の葉寿司であるが、それぞれの地域の食文化によりそのバリエーションは様々。地域の特性や文化の違いで、異なる味わいが楽しめる。ぜひ、色々な柿の葉寿司を食べ比べてみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
前号では、紀北と紀中で収穫期が異なる「八朔」の栽培について取り上げた。同じ県内であっても細かく見ていけば、地理的な条件によって、栽培される農作物に違いがある。

秋の深まりを感じはじめた11月中旬、紀北地域の農家から柿を譲ってもらった。段ボールに橙色が美しい柿の上に、果実を上回る立派な「柿の葉」が添えられていた。柿が生る農園を連想させ、産地直送の新鮮さを感じさせる粋な計らいである。


写真】果実に添えられた「柿の葉」

柿は一般的に、青果店では籠に盛られ、スーパーなどでは袋詰めにされることが一般的であり、葉が付いた状態で販売されることは少ない。しかし、年間を通して「柿の葉寿司」として目にする機会はある。今週は柿の葉の魅力に迫りたい。

柿の葉は、幅が10~12cm、長さが16~19cm程で手のひらを超えるサイズ。深い緑色をしており厚みもあるが容易に折り曲げることができるほどのしなやかさもある。

魅力は葉に含まれる成分。ビタミンCが豊富に含まれ、100gあたり1.5gあり、これは果実1個に含まれる成分の約20倍に相当する量。柿の葉を使ったお茶が健康食品として販売されている理由のひとつである。

ポリフェノールの含有量も多い。柿の果実にはポリフェノールの一種である「タンニン」が多く含まれる。酸化作用や抗炎症作用、血糖値を下げる効果があり、それらは柿の葉にも含まれる。昨今は、花粉症や糖尿病の予防・改善としての活用が注目されている。

いわゆる抗菌作用は、古の人々にも認知され、地域の郷土料理である「柿の葉寿司」にも活用。和歌山県や奈良県の山間部など、海から離れた地域で代々親しまれる。さらに柿の葉の魅力に迫っていきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
前号では、八朔に含まれる苦み成分で漢方薬にも活用される「ナリンギン」というポリフェノールの一種を取り上げた。
全国第一位の生産量を誇る和歌山県。主に紀北と紀中で栽培されているが、地域によって収穫期が異なるという。


【写真】紀北エリアで栽培された「八朔」

現在は紀北エリアの紀の川市、かつらぎ町、和歌山市、紀中エリアの有田川町、日高川町、由良町が主な産地となっている。

栽培時の八朔の特徴として、霜が降りるほどの低温になると、果実から水分が抜け「す上がり」が起きてパサパサになり、苦みが増すとされる。そのため、霜が降りる紀北エリアでは霜が降り始める12月下旬頃から収穫が行われる。収穫直後の八朔は酸味が強いため、涼しいところで1~2ヵ月の間、熟成させることにより、酸味が抑えられる。

一方、温暖で霜の影響が少ない紀中エリアでは冬の期間も樹上に果実を付けたまま熟成させることができ、さらにまろやかな食味が期待できる。これらの八朔は「木成り八朔」「さつき八朔」と名付けられ、3月から4月にかけて出荷される。

今の時期に青果店で販売が始まっている八朔は、紀北エリアで栽培されたものが多く、桜の季節の前後で出回るものや、前述の名が付けられ販売されているものは紀中エリアで栽培されたものが多いといえよう。

僅か数十キロしか離れていないとはいえ、紀の川筋と呼ばれ冬季の朝は冷え込みが厳しい紀北エリアと、黒潮の影響を受け冬でも温暖な紀中エリアで、収穫時期や熟成の方法、名称までもが異なるという、地域性の強い果実。

同じ和歌山県産でも生産されたエリアや市町村でその味わいは変わってくる。産直市場などではタグに生産地域が印字されていることも。今年の冬は生産地にこだわって、八朔を味わってみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
前号では、酸味・甘味・苦味がマッチし、続々と商品開発が進む「八朔のお酒」を取り上げた。数多くある柑橘のなかで、八朔が注目されている理由のひとつはその苦味。
今週は果実に含まれる成分から、八朔の魅力に迫りたい。


【写真】苦味成分が有効でプチプチした食感の「八朔」

八朔特有の苦みは、和歌山の方言で「ちら苦い」と言い表される。標準語で言えば「ほろ苦い」に相当すると思うが、適度な酸味と甘みが相まって、絶妙な味を醸し出している。

この苦味の成分は「ナリンギン」というポリフェノールの一種。じょうのう(中袋)に多く含まれ、抗酸化作用があり、肥満の防止や高血圧の予防に効果があるとされる。これはグレープフルーツにも含まれる成分。

果皮に多く含まれる「オーラプテン」という香りの成分は、抗炎症作用や記憶力の維持が期待できるという。そのため、じょうのうを剥いて果皮のみを食べるよりも、果皮やじょうのうも食べられるマーマレードやピールに加工し摂取する方が、より効果的である。

これらの成分を利用した漢方薬がある。「枳実(きじつ)」と呼ばれ、はっさくの生育過程で摘み取られる未熟な果実を乾燥させ、生薬の原料として活用。消化不良や胸やけ、胃もたれ、便秘など胃腸の諸症状を緩和する効果があるとされる。加えて、自律神経を整えることで咳や痰を鎮める効果や心機能を高める効果もあるとされ、様々な漢方薬で活用。

近年は、摘果し破棄されていた果実を漢方薬の原料に活用することで、生産者の収益向上を図る取り組みが始まるなど、ここでも八朔の活用が広がっている。

余すところなく利用ができ、健康への効果が期待される八朔。シーズンを迎えるこの季節。健康増進に役立ててほしい。

(次田尚弘/和歌山市)