ある日,JR横浜駅の9・10番線ホーム(横須賀線・湘南新宿ライン)で,列車の発車案内の電光掲示板をじっと見つめている外国人女性を見掛けた.
 欧米系の人のようなので,恐らく英語で何とかなるだろうと「May I help you? Where're you going?」と話し掛けてみたところ,その女性曰く「シンフグ」と.

 ……新河豚? 何それおいしいの……?
 今風に書けば「シン・フグ」なのかも……多分違う(汗).

 いや,最後の一音は「ク」にも聞こえたが「新福」でもよくわからない.
 「G」音と「K」音は,言語によって微妙に違うので,日本人の耳には「どちらともつかない音」で聞こえることも少なくはない.
 ドイツ語でも「Tag」(英語の「day」に相当)は,日本人には「ターク」と聞こえるし,実際の発音も所謂「K」音だ.
 ハングルの「ヲ」みたいな奴と「フ」みたいな奴も,多分「ヲ」が「K」音で「フ」が「G」音だと思うのだが,日本人にはその差が曖昧に聞こえなくもない.
 英語でも,例えば「knife」「know」とかは「K」が発音には表れないし,「knight」なんかは「K」も「G」も(更には「H」も)発音には直接現れない.「K」も「G」も何だか不憫である(多分違う).

 それはともかく,よくよく「文字」にして見れば「多分『しんじゅく』だよね」と「日本人ならでは」の「補正」ができるのだが,耳で聞いているだけだと,なかなか気付けなかった.
 思うに,どうやらその女性は,EA(スペイン)もしくは南米などのスペイン語圏の人だったのだろう.
 スペイン語の「J」の発音は,日本語の「ハ」行の音に近い.そして,スペイン語だけでなく,フランス語などラテン語系の言語には,元々「K」はなく,外来語でしか使われない(日本語で言う「カ行」音は「C」が担う)こともあり,「ク」とは聞こえず「グ」に聞こえた可能性がある.

 女性の行きたい場所が「新宿」であることが判ったので,湘南新宿ラインの(北行)電車を案内すればいいのだが,ここで「問題」が発覚.
 この9・10番線ホームは,従前の(桜木町駅まで行っていた時代の)東急東横線が,みなとみらい線の開業に伴う「地下化」によって「撤収」された後,大幅に「拡幅」されたホームだ.


 そのため,10番線側に大きく膨らんだ形状になったのだが,その際に発車案内などを移設しなかったため,これらが9番線側に大きくシフトした位置に残ってしまった.

 (↑ これらの写真は後日撮影したため,本文中のシチュエーションとは若干異なる)
 

 このことによって,女性は9番線の電車(大船・平塚・逗子方面)が新宿方面に行くと思い込んでしまったようだ.

 9番線の電車を指差し,これが新宿に行くのか?と問われたので「No, track number 10. The next train following that one.」(合っているかどうかは知らんが,通じたことは通じた)と10番線を指差し,事なきを得た.10番線に次に来る列車は,湘南新宿ラインから高崎線直通だったので,問題なかろう.

 それにしても,その発車案内の電光掲示板の設置位置は,確かに紛らわしい.
 ぱっと見て,それが10番線の案内(でもある)だと気付けるか,と言われれば,日本語が理解できるかどうかとは関係なく,勘違いを生みそうな気がする.
 ホームの端のほうであれば,ほとんど拡幅されていないので問題はないのだが,中央部は2倍以上になっているため,9番線側ならともかく10番線側では,案内に気付かないこともありそうだ.
 そして,この外国人女性のように,そこに出ている列車が全て9番線に来る,と勘違いするのも無理はない.慌てて反対方向の電車に飛び乗ってしまうような事態を招きかねない.保土ケ谷で気付けばまだしも,東海道線直通の湘南新宿ラインだと,戸塚まで10分以上停まらないまま,10km以上運ばれてしまう.

 これは改善の余地があるとは思うのだが,これってどこに言えばいいのだろうか.
 というか,ここ最近の横須賀線(湘南新宿ライン含む)の夕刻は,遅延が当たり前になっていて,帰宅時に使い物にならないことが多い.保土ケ谷駅の先の踏切で「直前横断」のための緊急停止なども,毎日恒例の行事になっている.

 

 直通運転が増えすぎたせいで,全然関係なさそうな場所での「障害」が影響することもある.相鉄ならまだしも,西武池袋線の人身事故が東京メトロ副都心線から東急東横線・新横浜線を介し,相鉄に響いて埼京線直通から湘南新宿ライン経由で横須賀線が遅延……とか,訳がわからない.

 

 この状態で,案内表示も紛らわしいのでは,乗り間違えも多発しそうなのだが.
 

 余談だが,かつて学生時代(昭和末期から平成初期)に「改札内他社線乗換」ができる駅を介して,一度も改札を通らずに目的地に辿り着く経路を検索するプログラムを作ってみたことがある.使い方によっては「キセル」につながりかねないので(良い子は実践しないでね)「THEキセル」をもじって「ザクセル(ZAXEL)」と名付けたりしていたが……(ぉぃぉぃ).

 時代的に,まだ「Windows」は登場していないか,せいぜい「3.1」の頃ではないかと思うのだが,「Microsoft Excel」は既に存在していて使ったりしたこともあった筈なので,「命名」には多少影響しているかも知れないが,Excelを使った訳ではなく,当時はよく使われていた論理プログラム言語の一つである「Prolog」(今や「化石言語」だが)で作成したと記憶している.

 当時は,まだ他社線との相互乗入が現在ほど多くはなかったが,例えば下北沢(小田急・京王)や分倍河原(JR・京王)など中間改札なしで他社線に乗り換えられる駅というものがいくつか存在していて,逆に東京メトロ(当時は営団地下鉄)のように同一駅であっても一旦改札を出ないと乗り換えられない駅があったり,という条件を考慮したり,と,プログラムの組み立てで「頭の体操」的に作ってみたものだった.

 現在では,その頃では考えもしなかったような他社線直通運転が多数存在しており,行先をパッと見ただけでは「この電車,どこ行くの?」と,一瞬ではわからなかったりして,隔世の感がある.

 

 今回の案内表示の設置位置については,このようなこととは直接の関係がないので,単にJR東日本の「やっつけ仕事」の結果によるものだと思うのだが…….