長男の高校の「修学旅行」は今年,「広島・関西」方面になった.
「広島」と言っても,意外に広い.
そもそも,旧律令国としては「備後」と「安芸」両国に相当する.現在の広島市や呉市,宮島のある廿日市市などを包含する「安芸国」と,福山市,尾道市などを中心とする「備後国」では色々と「差異」を感じることもある一方,「備後」というだけあり旧備前(美作を含む)・備中とともに,古来は「吉備国」として一体だった岡山県,また安芸国の南西端に当たる大竹市などは,隣の山口県岩国市や和木町(ともに旧・周防国玖珂郡)と一体の経済圏を形成するなど,山陽道としての「連続性」も有している.
今回は,まず広島市内で原爆ドームなどの見学をはじめとする「平和学習」に始まり,山県郡(北広島町・安芸太田町)内で「民泊」に分宿しての「農山村体験」という内容.従って,旧・安芸国の中部ということになろうか.
呉などはともかく,宮島にも寄らない.3泊4日の全行程のうち,1・2泊目が山県郡での「民泊」なので,ここが「メインイベント」という形である.
このパターン,小学校の時とよく似ている.
中学校では,新型コロナウイルス感染症の影響を受けて,修学旅行が何度も「延期」になった挙句に,卒業直前の「最後のチャンス」も「第6波」の直撃により逸してしまい「中止」になってしまった.
そのため,修学旅行の経験は2回だけということになるのだが,そのどちらも「農山村体験」がメインというのは,内容の「重複」もさることながら,別の意味でも大変だった.
長男の身体障礙に伴い必要となる医療処置を,毎晩・毎朝する必要があるのだが,場所や広さ,設備面での制約があるため,宿泊先の設備面の「条件」がある.
小学校の時にはこれが満たされなかったため,宿泊先の民宿から車で1時間弱の市街地にあるビジネスホテルを確保して,夕食後に自家用車で連れ出し,翌朝の朝食前に送り届ける,という形を2日続けて対応した.この時は群馬県だったので,自宅から自家用車で追いかけていく,という方法を採った.
成長とともに,処置自体のほとんどは「自力」でできるようになってはいるのだが,時々「トラブル」も発生するため,保護者が近くに泊まるほうが無難ではある.
流石に広島県まで自家用車で,というのは厳しいのだが,業務都合で「もしかすると日中は出勤しなければならないかも」という事態が懸念されたので,最悪の場合は「夜通し走って翌朝出勤し,夕方また広島に向かって走る」という「不眠不休」で対応(しかも2往復)が必要かと思った.
これ,よく考えると大阪でも同じ.大阪は新幹線でも対応できるかも知れないが,その場合でも「最初に広島に向かう分」と「最後に自宅に車を戻す分」で更に1往復が必要になる.広島でレンタカーを借りる形であれば,この分は減らせるが,それでもほぼ丸2日間ずっと「運転しているか仕事しているか」の状態が続くことになるため,絶対途中で「事故死」する自信?がある.
そのため,実際にこうなってしまったら「退職」するつもりでいた.結果的にどうにか3泊4日連続で不在にしても大丈夫,となったため杞憂に終わったが.
どうも筆者は「修学旅行」との「相性」が良くないようである.
小学校の修学旅行で,観光バスで乗物酔いを起こしてグロッキーになってしまい,高校の修学旅行も「観光バスでの強行軍」が前提だったため,不参加にした.中学校での修学旅行は,そもそも設定されていなかった.
高校の修学旅行で行くような場所は,当時既に「独力」で行ったことがある,あるいは行ける,という場所ばかり.しかも自分で同じように回るプランを立てたら,5~6万円(当時)で行けそうだ,と思えた.ところが修学旅行費用としては約10万円が提示され「団体料金の筈なのにぼったくりだな」と思ったこともあった.
小学校の修学旅行は6年生の5月頃だったと記憶しているが,5~6年生の頃は担任との折り合いが絶望的に悪く,かなりの不登校気味だったので,それが尾を引いて高校の修学旅行までキャンセルすることにもつながり「わざわざ行くんじゃなかった」という後悔しかない.
そうかと言って,長男に「行くな」とも言えないので,色々と計画を立てた.
一番困ったのが,この山県郡内での「民泊」の場所が,ギリギリまで特定できなかったこと.
山県郡は,北広島町と安芸太田町の2町からなるのだが,それぞれが相当に広い.そもそも「平成の大合併」によって,それぞれが3~4町村の合併によって誕生した町であり,両町合わせた面積は約988平方キロメートル.これは,香川県や大阪府の半分以上に当たる.
端から端までだと,車で走っても1時間では辿り着かない.しかも,地図で見てもかなり山深い地域であり,直線距離ではそれほどではなくても,直線的に移動できない可能性もありそうだ.これは宿泊場所の選択を誤ると,結構大変なことになってしまいかねない.例えて言えば「伊丹空港と関西空港」とか「ひらかたパークとUSJ」くらい違う場所,みたいな感じだろうか.
結局,出発の半月ほど前になって「北広島町のほうになりそうです」との連絡があった.
これも「処置の関係で近くに泊まらなければならないので,宿泊地が決まったら早目に教えて欲しい」と学校側に要請しておいたからで,普通だと出発の直前までわからないようだ.
よく説明書きに「修学旅行中に万一体調不良その他により継続ができなくなった場合には保護者に迎えに来てもらう」みたいな記載があったりするけれど,実際,これってかなり大変だ.
正直なところ,筆者のような人間ならば「住所」を言われれば(少なくとも日本国内ならば)辿り着ける自信はある.「日本中に『土地勘』がある」ような自負もあるが,流石に全区市町村の町名・字名を網羅(そこまで来ると「歩く郵便番号簿」である)はしていないから,最後は「検索」することにはなる.ただし,その検索結果を地図で一瞥すれば,そこにどのような交通手段を使えば良く,そして概ねどの程度の時間で辿り着けるか,は,ほぼ瞬時にわかるだろう.
しかし,そのようなことを「難しい」と感じる人も少なくない筈だ.
国内ならまだいい.
最近物議を醸している東京都港区ではなくとも,海外への修学旅行は珍しいものではなくなっている.
しかし「迎えに来い」と言われても,有効期間内の(更に当該渡航先に対する残存有効期間を有する)パスポートがなければならず,なければそこから申請することになり,迎えに行けるのは半月先,などということになりかねない.
当家の場合は,長女も(学校は異なるが「双子」なのでやはり高校2年生)今年が修学旅行なのだが,「北海道」だから万一「迎えに来い」と言われても,どうにでもなりそうだ.それに新千歳空港発着で,札幌市内とかせいぜいニセコ・ルスツ辺りまでのようなので,それこそ先日,長男と「電車の旅」に行った(それまでにも知り尽くしている)界隈だから「庭みたいなもの」だ.
そのため杞憂に終わったが,筆者のパスポートは再来年(2025)年5月まで有効なので,海外であっても「修学旅行」で訪れるような場所ならば,航空券さえ確保できればすぐに行けるだろう.JGCもSFCも持っているし,「(同伴1名無料の)プライオリティパス」もあるから「快適な空の旅」も不可能ではない.まあ,また搭乗券に「SSSS」の刻印が入るかも知れないが.
閑話休題.
北広島町の予定と聞き,町内のどの辺かはわからなかったものの,そろそろ「宿」を確保しておかなければ,と思った.
北広島町は,千代田,大朝,豊平,芸北の4町が合併して誕生しているが,そのうち最も人口が多く,役場の本庁舎も置かれ,商業施設や飲食店などが多いのが旧・千代田町だ.旧4町のいずれにも道が通じているし,比較的大きなホテルもある.
ただし,旧4町の中で唯一,芸北町だけは北西に少し離れている.距離だけで見れば,現在の町役場としては,北広島町役場よりも安芸太田町役場のほうが近いような位置だ.

しかし,安芸太田町には大きめの宿泊施設が少なく,芸北町以外の地域だった場合には裏目に出てしまうこともあって,旧・千代田町にあるこの「広島北ホテル」を予約した.
ところが出発の数日前になり,学校に問い合わせると「北広島町中祖」という地名が判明.「中祖」は旧・芸北町の一集落で,「広島北ホテル」からだと道なりで40kmほどありそうだ.
改めて地図を見て,南に15kmちょっとで(かつての可部線の終点でもある)三段峡があり,ホテルなどもあることが判明.しかし,三段峡のホテルに問い合わせると,22時以降は玄関を閉めてしまう,という回答.そうなると,長男の泊まっている民泊から戻ってくるのが間に合わなくなってしまう可能性が出てくる.
旧・芸北町エリアに何かないか,と調べてみたら,1軒見付けたものの,予約画面では平日にもかかわらず「満室」表示.観光客がそんなに多い地域とも思えないし,そんなに用務客が押し寄せるとも思えないので,これは修学旅行を引率する先生たちの宿舎になっているのではなかろうか,と推察した(後に「正解」であることが判明).
小学生の時とは違い,処置自体は自分でできるし,その後も調子が悪くなければ,そのまま友達と一緒に泊まっても差し支えなさそうなのだが,万一調子が悪くなってしまうと朝まで連れ帰らなければならなくなる可能性が残っている.
そのため,基本的に筆者が一人で泊まる予定で「シングル」や「セミダブル」という設定もあるものの,敢えて少し広い部屋にする.

料金的には「ツイン」のシングルユースとほぼ同じくらいで「和洋室」というものがあり,シングルベッド2台の「寝室」の他に8畳の「和室」も付いている.最大5人でも泊まれる部屋らしい.
これで朝食を付けても2泊で何と18.4K円(入湯税込).
「入湯税」という単語でわかる通り,温泉の大浴場もあるため,風呂なしの部屋も設定されているが,予約した部屋はバス・トイレ付.

夕食は付けていないが,館内に小さなダイニングコーナーのような「お食事処」があり,2泊目はそこで「芸北高原豚のカツカレー」(サラダ付)を食べた.税込1.2K円なので,ごく普通の値段だろう.

どちらかというと,何か飲みながら軽く食べる……くらいの利用が主なのだろうが,後で長男の民泊までレンタカーで往復しなければならないため自粛.戻ってきてからでは閉店後になってしまう(実際に22時過ぎに戻ったらクローズしていた).
朝食は和洋バイキングで,それなりの品揃えがあったが,素泊まりと朝食付の料金差が1泊当たりで1K円もないため,数百円でこれならばかなりリーズナブルだと思う.
大浴場は,深夜と昼前後は閉鎖になり,男女入換制.
早朝には行かなかったため,片方にしか入れていないが,至って普通の大浴場だった.サウナはあったが,極端な暑がり屋なのでパス.所謂「露天風呂」はなかったが,もう一方にあったかどうかは不明.

実際に部屋に入ってみると,1人で泊まることになってはいたのだが,ベッドメイキングは2台ともしてあり,浴衣等が1組しか置かれていないというだけ.

玄関にはスリッパが,大人用×4+子供用×2で置いてあり,このくらいまでは泊まれるよ,ということらしい.

結局,大浴場を利用したので使うことはなかったが.
和室も8畳もあるので,十分な広さ.

押し入れに布団も仕舞ってあり,3人以上ならここから出すのだろう.
設備は新しくもないが,全体的に小綺麗にしており清潔感がある.手入れも行き届いているようだ.
万一,長男を連れ帰ってきて泊めることになった場合は,料金的には追加が発生するのだろうと思われる料金設定だが,倍にはならないだろうと思われる.
設備的には充分なので,フロントに相談すればすぐにOKが出るだろうと思われたが,そのような事態にはならなかった.
なお,フロント業務は22時で終了,とあったものの,それ以降も正面玄関は施錠されないことは確認済で(そうでなければ利用できない),業務はしていないもののスタッフはフロントの近くに常駐してはいたようだ.
