熱い思い出のSRX400改
たかだか398ccの単気筒エンジン。
それが何故、スカイラインR32や、ドカティF3、
出たばかりのHONDA CBR400RR,そして
並いる2st250ccに対抗できたのか?
一律に、対抗馬は、数段、馬力が上だったこと。
でも、
彼らは、その馬力を使い切る前にボクが勝利を決していたことなんだ。
山奥のきついヘアピンの下り。
フルブレーキで並んでツッコミ、なおブレーキを残したまま旋回してゆく。
その時、パワーの差はほぼ無い
その下りのヘアピンからアクセルをどれだけ開けられるか
そこが勝負。
相手がインを閉めていても関係なし。
アウトから、下りにも関わらずウィリーして立ち上がれる気合い。
並走する相手はそこでメンタルをやられる。
何故か?
そのコーナーの進入で、フルブレーキ競争でいかに車速を保つか。
つまり、フロントブレーキと、サスペンションのセッティングがものを言うのだ。
話を変えよう
GTR32を追い付かせなかった理由だ。
場所は、片側1車線の有料道路。午後2200になると無料開放される。
時間ジャストにボクは料金所に飛び込んだ。
と同時に、R32の咆哮を背後で聞いた。
長いストレートの先は左へのカーブ。すぐ右へと進路を変える。
平均速度60km/hで設計されている道路は、四つ輪には厳しい。
ボクはそれらのコーナーを平均130km/hでクリアしてゆく。
コースの最後の方でストレートが続く。
GTRは、そこで一気に車間を詰めてきた。
折り返しの料金所を出てすぐスピンターンをして再びコースに戻る。
戻ったかどうかのところでGTRとすれ違った。
全力でストレートを加速しつつバックミラーにはきらりとライト。
『げ、本気にさせちまった』
でも、カーブの多いここでは、簡単に追い付かれない。
最終コーナーを回って、坂を駆け上がる途中、バックミラーに現れた。
料金所はボクの方が先にでた。
すぐ、左へそれ、GTRの進路を開けた。
彼は、料金所を出ると、減速、助手席の窓を開けてサムアップ。
そして2人にしかわからない短いホーンを鳴らして漆黒の闇に消えていった。
ボクは思った。
軽い単気筒だからこそ、複雑なカーブを高速で回り切れたんだと。
そして、きちんと組んだ足回りがあったからこそ130km/hのコーナーリングが可能だったんだと。
よくある湖の湖岸道路。
平面だけどさまざまな複合カーブの入り乱れる難所。
いわば、初見殺しと言っていいだろう。
こう言うところには、根付いた走り屋が君臨する。
ちんたら流していたボクは、そんな彼らに遭遇してしまった。
ボクを確認した途端、ペースアップ。
どんどん先へと逃げてゆく。
こちらも負けられない
彼らの見える距離まで追いつくと、後ろから、コーナーの進入速度を盗んで、
真似して突っ込んでゆく。
そうするうちに、彼らに絡む形になり、彼らもペースアップし始めた。
前方には2stの250ccが3台ほど連なっており、カストロールの香りが漂ってきた。
しばらく走ると、ダム側に広場があり、彼らはそこへ傾れ込んだ。
ボクも少し距離を置いてバイクを停めた。
ぎこちなくだけど、声をかけてみた。
すると、ここは自分らの庭みたいなもんで、あのペースで追われたのは初めてだったとか。
ボクは、後ろからコーナーの進入速度を真似して走っただけだと答えると
3人ともびっくりした顔をしていた。
思ったんだけど、ビッグパワーをもて遊ぶくらいなら、
自分のピークパワーをコントロールし切ったほうが楽しいんじゃ無いかって。
パワーを使い切って、適切に止まる。
これが一番楽しいんだと思うのです。
もう一度、SRXが手に入ったら、また、いろいろやってみたいなと思います。