”先に帰るね”


彼女はそう言って文化部の部室を出た。


足取り軽く、階段を降り


一階の下駄箱についた。


彼女はこっそり大好きな人の下駄箱を


緊張しながら、開けた。


”まだいる”


彼女は、校庭が見渡せる下駄箱の柱にもたれかかって


落ちゆく夕陽を浴びながらプレーする彼を探した。


柱に背中をもたせかけ


お尻を浮かせて、鞄をポンポンとリズミカルに弾かせながら


思い人を探した。


部室にいた時間より


ずっと長い時間を彼女はそこで過ごした。


思い人と学校から数百メートルしかないバス停まで


ただ、一緒に歩くために。



僕ら(昭和)の高校生はそういう恋愛をしていました。


図書館で勉強中の意中の相手のそばに座ったり・・・・


甘酸っぱい恋をしてきました。



しかし今、どうでしょう?


ハラスメント3兄弟


セクハラ、パワハラ、モラハラ。


全ての言動をこの言葉で犯罪化されてしまいます。


今、就労支援施設にいますが、


利用者さんに一言も声がかけられません


間違った発言などすれば


たちまち支援員に報告され


厳重注意です。


いや、施設内で恋愛する気など毛頭ありませんが


ゴタゴタするのは嫌です。


結果、遠くから会釈するにとどまっています。


昭和を知る自分にとってなんとまあ、居心地が悪いのなんのって。


とにかく消え失せたもの。


フランクな声かけ


軽いジョーク


笑い話


などなど。


空気はどんよりしています。


笑顔もありません。


グループワークなど地獄です。


言葉を精査して最小限の発言にとどめます。


取り巻く3〜4人はメモを片手に固唾を飲んでいます。


証拠を残さぬよう、ピリピリと発言します。


最悪の時間です。


全て保身のためです。


全ては37年前のあの青春時代の思い出を守るためです。


時代は繰り返す、と言います。


近い将来、昭和が見直され、回顧される日が来らんと望みます。


平成生まれの皆さん。


昭和をクソミソに言わないでください。


良き時代でした。


あの恋愛事情を


不適切な時代だなんて括らないでください。


傾く夕陽を浴びながら


下駄箱で待ち続ける女子高生を


犯罪で括らないでください


ハラスメントを連発するあなた方のこと


ボキャブラリィハラスメンター


と呼ばせていただきます。


いわば“言葉狩り“と言うことです。


平成生まれの諸君。


少しは先輩を立てることも覚えたらどうだね?