2023年9月4日

RCマガジン10月号から一部抜粋。

今回は、RCカーのリアキャスターについて考察してみた。

①今年に入り2駆ドリで大ブレイク中の、

レーブD社RDXの追加オプションとなったリアキャスター付きサスアーム。

②タミヤの次世代MシャーシのMB01シャーシ。

この2台に共通するのは、ダブルウィッシュボーンサスのリアキャスター採用である。

そして、D-LIKEのロングセラーオプションパーツのリアマルチリンクをテキストにしてみた。

日産シルビアのマルチリンクを手本にしたという、D-LIKEのリアマルチリンクサス。
サスペンションの解説は以下の動画の26分辺りから動作解説がされている。

動画を見てから考えると、公道を走る車とサーキットを走るF1レーシングカーとでは要求される性能が違うということ…。
路面が整備され平坦でグリップの高いサーキットでは車高を一定に保つことで空力性能を安定させ速く走らせるのが目的だが、
公道を走る車は天候や路面の状態によってタイヤグリップが左右されるし、限界時までの操縦安定性や、安全性、
乗り心地も確保しなければならないから、
ある意味難しい。
サスアームの長さはF1のほうが圧倒的に長いが、上下ストロークは30mm程度に制限される。
一方で公道を走る車はサスアームは短いが、
縦方向の上下ストロークが長く対地キャンバー変化も小さくしている。
長年、ラジコンの場合はF1のダブルウィッシュボーンを手本にしてきたから、
ストロークさせないサスのほうが、走りやすい場合もある。
逆にドリ車の場合は動きを追求するから、ストロークを大きくしなければ意味が無い。
当然ながらF1と同じ設計では通用しないことになる。
話をもどして、D-LIKEのマルチリンクだが、
1つ目はストロークさせると、
進行方向に対してキャスター軸が前に倒れる。
人が杖を突く動きに似ている。
要は杖を引っ掛けて掻き上がる訳である。
2つめは対地キャンバー角を絶えずゼロに近づけることで、タイヤの接地面を確保する。
3つめは真上から見たときのトーコントロールによって直進性や制動力を上げるなど…。
フロントのハイアッパーアームも、
公道を走る車は車幅も制約されるし、前にエンジンを載せるから、
F1とは違いサスアーム長を短くする必要がある代わりに、縦方向に長くして上下ストロークを稼ぐ。
当然ながらストローク時の対地キャンバー変化も小さくしなければならない。
次はレーブD社が近日、オプションとしてリリースするキャスター付きロアアーム。
理屈はマルチリンクサスのリアキャスターをアレンジしたものになる。
タイヤ側サスピンを前傾することでキャスター軸を前倒しにすることになる。
従来は後ろのサスマウントを上げることで、逆スキッドとしてキャスター軸を前傾していた。
ストロークを必要最小限で使うダブルウィッシュボーンサスの場合は、
サスピンの前傾だけで効果が出るようだ。
当然ながらトーコントロールは出来ない。
そして最後は、
タミヤのMB01シャーシである。
タミヤツーリングカー初のリアキャスターを採用している。
前後のサスペンション部品を共用するシャーシだけに、フロントにキャスター角が付けば、必然とリアにもキャスター角が付くことになる。
※角度は恐らく2度程度だと思う。
理屈は前述の通りだが、こちらにはトーコントロールのオマケが付く。
少ない開発費用でタミヤらしく上手く設計を纏めたものと思う。
キングピンアングルを採用して、スクラブ半径を小さくする設計もタミヤ初のはず。
エンジンカーでは京商や無限などが採用してきた。
リアサスのメカニカルグリップが上がったために、従来とは違うセッティングが必要になりそうだ。
考え方は似ているが、公道を走る実車では35年前に既に実用化されている。
ラジコンカーでは、ようやくといったところか…。
タミヤではMB01のリアサスペンションを「マルチリンク」と謳っているが、
前後同じ部品を使っているならダブルウィッシュボーンである。マルチリンクとは言えない。
最近、「なんちゃってマルチリンク」が流行っているようだが、
マルチリンクサスは目的別の最低3本以上のリンクで構成しなければ、マルチリンクとは言えない…。
※「マルチ紛い!?」では意味が無い。
リアナックルにアルミパーツを使った場合は、樹脂パーツとの重量差によって、
リアグリップが上がる場合もある。
効果の有無は、同じ材質での比較でない限り意味が無いと思う。
それと、サーキットで走り込んで感覚を研ぎ澄まさないと実感出来ないから、
費用対効果も出ないことになる。
その辺りは自覚が必要だと思う。
最後にリアキャスターの簡単なテスト方法だが、
ツーリングカーの前周りを前後逆に組み立てることでリアキャスターの実験が出来る。
トーコントロールロッドも着けられる。
キャスター角はCハブの角度と同じ4度となるが、実験する価値は有るかと思う。