芝居「二人忠治」《「長谷川武弥劇団」・平成21年5月公演・柏健康センター》 | 大衆演劇の名舞台

大衆演劇の名舞台

全国に150ほどある「大衆演劇」の名舞台を紹介します。

    ほぼ1年ぶりに見聞する舞台であったが、昨年6月、花形役者から副座長に昇進した女優・長谷川さくらが、今日は座長・長谷川武弥と「四つに組んでの」共演、芝居の外題は「二人忠治」であった。文字通り、登場人物は忠治二人、一人は言わずと知れた国定忠治(座長・長谷川武弥)、もう一人は「偽物忠治(本名・腐れ鮪の鯖吉」(副座長・長谷川さくら)という配役で、この「偽物忠治」の「三枚目ぶり」は最高の出来栄え、「口跡」は女座長・「愛京花」風だったが、表情・所作は「さくら」風の、オリジナル(吉本もどき)で、その「滑稽さ」は天下一品である。「しっちゃかめっちゃか」、「デタラメ」になる「一歩前」のところで「かろうじて」(しかし、確実に、計算され尽<くして)とどまっている、という風情が、彼女の「ただならぬ実力」を窺わせる。その様子を、「よう、やるわ!」と「あきれ果てた表情で」(しかし、温かく見守る)「本物忠治」・座長・長谷川武弥との「絡み」も絶妙で、久しぶりに見る「実力派(本格派)の喜劇」であった。「偽物忠治」が、土地の悪親分から百両頂戴する場面、三本指を出して、それが百両のサインだと主張する。「中指が一番長いから五十両、両隣の人差し指と薬指で三十両ずつ、五十両たす三十両たす三十両、合わせて百両になるではないか」ビックリして尋ねる悪親分「親分、五十たす三十たす三十は百十、百十両じゃあないですか?」
「バカだナーおまえ、計算もできないのか、いいか?五十たす三十で八十、八十たす三十で百になるではないか」「親分違いますよ、八十たす三十は百十ですよ」「何いってんだ。その十が余計なんだ。どっからその十が出てくるんだ?八十たす三十は百でいいんだ」といった「やりとり」が何とも可笑しく、「抱腹絶倒」の連続であった。また、退場前、花道で披露した歌唱「好きになった人」(都はるみ)は、思い切り「調子を外して」唄っていたが、本物の「調子っぱずれ」とは無縁、彼女の並外れた「歌唱力」を窺わせる「見事な」出来栄えであったと、私は思う。
 さすがは、九州の風雲児「長谷川武弥劇団」、両座長に加えて新たな副座長と「戦力アップ」、さくらフィーバーで「関東一円」を席捲する勢いの「変化」(へんげ)ぶりであった。

 

 

 


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