芝居「裸の大将放浪記」《「新川劇団」(座長・新川博也)〈平成24年2月公演・浅草木馬館〉》 | 大衆演劇の名舞台

大衆演劇の名舞台

全国に150ほどある「大衆演劇」の名舞台を紹介します。

     芝居の外題は「裸の大将放浪記・母の味はおいしいので・・・」。幕が上がると、そこは駅前の大衆食堂。その女主人(峰そのえ)と息子二人に、山下画伯(リーダー・新川博之)が「絡む」物語である。息子のうち弟(新川貴之)は母思いの真面目な性格で、近々、社長さんの娘と祝言を挙げる段取りになった。一方、兄(座長・新川博也)は、十数年前、プイと家を出たきり行き方知れず、どうせまともな生活はしていないだろう・・・、と母・女主人は案じている。案の定、一見すればすぐにヤクザとわかる風情の兄が、舎弟(新川笑也)を連れてやって来た。そこは駅前近くの川の土手、よく見ると、ランニングシャツに半ズボン、いがぐり頭の、「けったいな奴」が横たわっている。山下画伯である。舎弟が声をかけたが反応がない。「兄貴、こいつ死んでると違いまっか?」「アホ抜かせ、腹が動いてるやんけ」などと言いながら、兄が画伯を叩き起こす。その後の三人の「やりとり」が、何ともおもしろかった。兄は、どこまでも柄が悪く極道そのもの、髪はリーゼント、黒シャツに真っ白なスーツ、草履履きのスタイルが決まっている。舎弟は舎弟で、柄物のシャツを粋に着こなして、眉毛もそり落としている。「それにしても、おまえは地味やなあ」という兄貴の評価、腕の刺青を見せられて、「体に落書きをしてはいけないんんだなあ・・・、ハハハイ」といった画伯の様子が魅力的で、私の涙は止まらなかった。やがて、通りかかったのが若い男女、舎弟、「反射的に」からかい、恐喝の景色を見せたが、兄貴分も「反射的」に、それを阻止する。その若い男こそ自分の弟であったから・・・。兄貴、弟が近々結婚することを知り、祝い金を山下画伯に託す。以後、画伯の天衣無縫な「とりもち」で、母・兄弟の家族が再会、これまでのことは「水に流して」大団円、という筋書きだが、一貫して流れる眼目は「おむすび」に象徴される「母の味」とでもいえようか、山下画伯が愛する「おむすび」を弟分が調達、それを兄貴もほおばって、「母の味」を噛みしめるという場面が、ひときわ「絵になっていた」、と私は思う。役者全員が、文字通り「適材適所」、だれもが「主役」のような舞台模様で、この演目は、まさに「新川劇団」の十八番、大きな元気を頂いて帰路に就いた次第である。

 

 


にほんブログ村

アクセスカウンター