最終話「最期」



もうどれくらい歩いたのか、


どれくらいの時間が経過しているのだろうか、


わからない



ここは、横浜市内なのか?神奈川県内なのか?


隣接する他県なのか?


もはや わからない 


いや 知る意味もないといった方が正確か



なるべく人と擦れ違わぬように、

なるべく人のいないような場所は目指したが、

それでも数人の人と擦れ違ってしまう。


さすが、経済大国「日本」

そうそう人のいない場所などない


不本意ながらも擦れ違ってしまった人達に、

不快な思いをさせてしまったと、

その度、心の中で


「ごめんなさい」


と、謝った。




「助けて」


と、何度も口から出そうになった。何度も。


今更、「助けて」だなんて・・・


自分でも笑ってしまう・・・


”神様”はちゃんと見ているんだ


今までさんざん楽して生きてきたのだから


「最期」ぐらい苦しんだらどうだ?と・・・




ここは、まだ、人が通りそうな場所か・・・な?


でも、もう、動けないんだ、動かないんだ、


次、ここを通る人、「ごめん」


「本当にごめ、ん、な、さい・・・・・・」



それが、私の最後の「ごめんなさい」だった。

小説も全部書けずに、遂にタイムリミットですw


マネーリミットかなw



人間て怖いね。


切羽詰まると、とんでもないことを考えたりするんよ。


その辺の、子供や老人からお金奪ってやろうとか、

考えちゃうわけよ。


ホント、自分でもビックリしたわwww


今までそんなこと考えたこともなかったのに・・・w


私に腕力が無くてよかった、よかった。

あったら、もしかしたら、もしかしてたかも知れないし・・・(恐い、恐い)



んで、最後の悪あがきで体売ろうとして、

出会い系サイトに何個か登録したけど、

なんかサクラにかかって、チョー時間無駄にしただけで終わったw

(もちろんお金は取られてない、つーか取られるほど持ってないしwww)


まぁ、こんな感じが自分らしくていいかな、って思えるから

いいんだけどw


もう少し、ゆっくり小説とか思うこととか書きたかったなぁと、、、

どんなにあがいても、もう遅いけどねw



退路を断っておいてホントよかった


結局、どんな状況になっても弱いままだったしね


おつかれさん

第11話「メイド喫茶~魔法のチカラ~




3月28日(土)


”風俗”に続き、次は”メイド喫茶”


”メイド喫茶”と言えば”秋葉原”


というわけで、”秋葉原”で有名だと思われる”メイド喫茶”へ行くことに



正直、あまり乗り気ではなかった。

おそらく”風俗”の時、同様”楽しめない”だろう、、、と思ったからである。


心の中ではもうすでに、

何が「ニャン、ニャン」だ、

何が「萌え~~~」だ。

と、完全に馬鹿にしている。。。




「横浜」→「品川」→「秋葉原」と、電車を乗り継ぎ、

午前11時、”秋葉原”の街に降り立つ



たぶん、この街に来るの生まれて初めてである。



土曜日ということもあり、駅周辺の道は人の群れで賑わっている。


オタク、コスプレ、メイド、ばかりが歩いているかとイメージしていたが、

そんなことなく、道行く人は至って普通の人ばかりだ。


しかし、信号待ちなどで無意識に入ってくる会話は、

どこかオタクっぽさを感じる”あの独特”の口調が多い。



専ら人ゴミは嫌いな私であったが、

それでも、この街の空気、雰囲気に、何か心地良いものを感じたていた。


さすが”電気街”ということだけあり、

そこかしこに電気屋の看板や店舗が見うけられる。


だが、こと”メイド喫茶”に関しては、特に目立つ看板などは見当たらず、

なかなかお目当ての”メイド喫茶”も見つけられずにいた。


たまに、”メイド喫茶”の呼び込みであろう、

メイドの格好をした人を見かけるが、

どれも、私の目当ての店のものではなかった・・・



1時間ほど、”電気街”をグルグルと歩き回り、

ようやく、お目当ての店のあるビルの前へと辿り着いた。


(それにしても、わかりにくいトコロにある・・・)


他に、3,4軒の”メイド喫茶”を見つけたが、

そのどれもが、地下だったり、ビルの上層だったりと、

ただ普通に歩いているだけでは、なかなか見つけにくい

場所にあったのだ。



そのビルの4階~7階まで、すべて同じ店の名前だ。。。

私はエレベーターの前で少し悩んだが、

とりあえず4階のボタンを押した。

(まぁ、どこでも一緒だろう・・・)


エレベーターを降りると、狭い踊り場の先に店の入り口がある


店の入り口の前には、先客と思われる若い男性2人が立っている。

おそらく、案内待ちであろう。

私は、”その”後ろについた。



10分程待ったところで、スーツを着た男性店員に中へ入るよう促された。

店の中に入る時、自動ドアの前に貼ってある紙に一瞬目がいった


”入場料 700円”


(なんだ、そりゃ、、、)




店の中に入ると、少し太めのメイド(以下 デブ)が、

「おかえりさないませ、ご主人様。」と、お決まりのセリフを言い、

奥の席へと案内した。



5、6人掛け用のカウンター席の左から2つ目に案内された。

私の左側には、真面目そうな男性が(以下 左野郎)

右側には、先ほど店先にいた男性2人が(以下 右2人)

それぞれ腰掛けている。



慣れない空気に気持ちを落ち着けている間もなく、

私が初来店ということで、デブがメニューの説明を始めた。


メニューの内容など、どうでもよかったので、店内を見渡したりして

聞き流ししていた。


カウンター、テーブルなど、全部で50ほどある席は、

ほとんど空きがなく、満員御礼、大盛況だ。


メイドはパッと見、全部で7,8人ぐらいか・・・

正確には数えなかった

皆せわしなく動いていて、結構、忙しそうだ。


中央の壁に沿って、設置されているステージのようなところで、

頻繁に客とメイドが撮影会のようなものをしているのが気になった・・・



デブのメニューの説明は、まだ終わる気配を見せない。

私が”それ”にあきれるように、小さくため息をついた時、

突然、左側から


「萌え、萌え、キューーーーン!!!」


と、男女の息のあった掛け声が聞こえた。


左野郎の前に置かれた小さなコーヒーカップには、

双方の両手の指で形作られたハートが、

挟み込むように掲げられている。


その光景に思わず、吹き出しそうになったが、必死に堪えた。


(こういった事が、頻繁に当たり前に行われるような

 場所だとは十分わかってはいたが、

 いざ、それを目の当たりにすると・・・しかも、隣で・・・)


”堪えた” といっても、顔は笑っていたはずで、

 おそらく目の前で必死にメニューの説明をしているデブは

 気づいているだろう・・・


”それ”がうまく決まったからなのだろうか、

左野郎は満面の笑みだ、、、


私が気持ちを落ち着けていると、ようやく、長ったらしい

メニューの説明が終わった。


”入場料に700円かかっており、

 ここに居られるのは1時間”  だそうな。


(何も知らない年配の方などが、”喫茶店”だと思い、

 気軽に入ってきたりすると、何かと面倒だから、

 店構えが少々わかり辛くなっているのか・・・)


後に、営業形態が”風営法”に抵触しているらしいことを知る。



目の前に置かれたメニューをおもむろに開いた。


といっても、頼む物は大体決まっていて、

”オムライス”これは、まず外せない。

(ケチャップで絵を描いてくれる、例のアレだ。)


そして、飲み物だが、普通のを頼むのもつまらないと思い、

”オリジナルカクテル”というのにした。

(これは、色々な味や好きな色のカクテルを作ってくれるらしい)


”オムライス” 1100円

”オリジナルカクテル” 1000円


まぁ、割高感は否めなかったが、それほど気にもしなかった。


その他、”メイドと写真撮影”

     ”メイドとゲームで対戦”(勝つと景品アリ)

それぞれ、500円であったが、さすがにそれを頼むほど勇気は出なかった。


その辺をウロウロしていた、デブにオムライスとカクテルを注文すると、


「カクテルは何色よろしいですか?」

と聞いてきたので、

「味や色はテキトーで、少し弱めで・・・」


・・・・・これでは、

何の為に”オリジナルカクテル”頼んだかわからないのだが、

これといって、気の利いた返答も即座に思い浮かばなかった・・・



しばらくすると、デブとは違うメイドがシェイカーを持ってやってきた。

少々エラが張っている顔立ちの子である(以下 エラ)



「私が今から、おいしくなる”魔法”をかけながらシェイカーを

 振りますので、ご主人様は私の後に私と同じように

 ”魔法”をかけてくださいね。」


私は、それを聞いて一瞬固まった。。。


「ど、どうしてもやらないとダメかな・・・?」

私は当然拒否の態度をとる。


「できればやっていただだきたいですぅ、

 恥ずかしかったら、小さな声でもいいですので。」


「いや、、、でも、、」



不穏な空気がカウンター内を支配する・・・


左野郎は妙にソワソワしている、

彼からすれば、なぜ私が”そんな羨ましいこと”を

拒否するのか分からないのだろう。


「できますよね?」

エラも引き下がらない。


「えっ?でも、、、」

私も負けるわけにはいかない、断固拒否だ。


「では、いきますよ?」

更に、エラは押してくる。


そして、次に私が「で、」っと言い掛けた瞬間、

エラの眉間にしわがより、厳しい目つきになり、


「わかりました。では、ワタクシ一人で作らせていただきます。」

と、少し強い口調で言い、シェイカーを振り始めた。

表情は”笑顔”に戻っている。。。


(なぜ、断ってわいけないのだ。私は”客”だぞ?)


「シャカ、シャカ」 「きゅん、きゅん」 「萌え、萌え」 「・・・、・・・、」


エラの声に合わせて、左野郎は小刻みに体を左右揺らしている。

声には出さないが、あきらかにエラの言葉と同じ口の動きをしていた・・・・・


7,8回振ったのだろうか、最後に

「おいしくな~~~れ」と言って、

グラスにカクテルを流し込み、エラは無言でどこかへ行ってしまった。。。



グレープフルーツを基調とした、

そのカクテルは思っていた以上に飲みやすかった。


それを、2,3口飲んだところで、私はとんでもないミスに気がついた・・・


私は、酒が飲めないのだ


全く飲めないというわけではないが、

ビール2杯も飲めば、もうダメだ、といった状態になる。

長い間、酒を飲む機会がなかった為、すっかり忘れていたのだ・・・。


そして、何より困るのが、とても酔いが顔に出やすく、

元々、色白な為、一層それがわかりやすい。


今日とてそれは同じで、次第に体中が熱くなり、

目の周りは赤く火照り、耳もみるみる赤くなっていくのがわかる。


見る人によっては、私は”泥酔”しているようにも見えただろう・・・


サラリーマン風の男が昼から”メイド喫茶”で”泥酔”て・・・

アホ丸出しである。


しかし、こればっかりはどうやっても抑えようがない。

今すぐ、店を出たかったが肝心の”オムライス”が、

まだ、来ていない。


私は、しばし、落ち着かない様子で、

あたりをキョロキョロしたり、うつむいたりしていた。




いつの間にか、左野郎の前に、また別のメイドが立っていて

なにやら、やりとりをしている。


そのメイドは、首から”聴診器”をぶら下げていた。

一瞬、「?」と思ったが、きっと彼女は医学生なのだろう、

アルバイト中でも、その志は忘れないということなのか、

真面目なメイドもいたもんだ(以下 医者)


どうやら、左野郎は医者とゲームをするようだ(例の500円のやつ)


医者は、後ろの棚から猫の型をしたおもちゃを取り出し、

カウンターの上に置いた。


2人は、そのおもちゃのボタンを押し合い、

勝った、負けた、だの言っている。

左野郎はすこぶる楽しそうだ。。。


時折、そのおもちゃから「にゃー」という鳴き声が聞こえるが、

どうなれば勝ちなのか私にはさっぱり分からなかった。


何度かの鳴き声の後、医者が

「時間ですぅ」

と、言った。


勝負(笑)がついたようだ。



左野郎jは、相変わらずの笑顔ながらも、

少しばかり肩を落としがっかりとした様子だ。

     

どうやら、彼は負けてしまったらしい・・・


「また、勝負しましょうね~」

医者はメッセージカードのような小さな紙に何か書き、

それを左野郎に渡すと、どこかへ行ってしまった。


左野郎は、その小さなカードを両手で大切そうに持ち、

にやけた表情でそれを見つめている。

その様子は誰が見ても”幸せそう”ではある。


彼は、おもむろにイスの下に置いてあったカバンを

カウンターの上に乗せ、中からファイルのようなもの取り出し、

誰かに隠すような素振りも見せず、それを開いた。


そのファイルの中身を見た瞬間、

私はまた吹き出しそうになった。


パッと見ではあるが、”それ”が何であるかは大よそ検討がついた。


それには、メイドとの写真やカードやらが、

大事に綺麗に並べられており、その数は相当なものであった。

50か?100か?いや、それ以上かも知れない・・・


新たなコレクションをファイルに収め、じっと何かも確認し、

満足したのか、ファイルを閉じ、大事そうにそれを

カバンにしまいこんだ。



別に、人の趣味をあれこれ否定するつもりはないが、

理解できないものは、理解できないのである・・・・・


しかしながら、彼にとって”あのファイル”は、

命の次、いや、命よりも大切なものなのかも知れない

おそらく、週に何度か訪れる、この場所での出来事が

彼にとっては何よりもの”生きがい”なのだろう。

”生きる意味”を持たない、”生きがい”のない

私よりは、全然ましである。何より、彼自身”幸せ”そうだ。


そう考えると彼が少しばかり羨ましく思えてきた。




酔いがいい感じに回り、そんな事を考えていたら、

ようやく、待望の”オムライス”が運ばれてきた。


また別のメイドだ。

(まぁ、エラは持ってこないと思ったが・・・)


まだ垢抜けない、どこか田舎を感じさせる女性だ(以下 田舎娘)


「何か、ご希望の絵はございますかぁ?」


「いや、別にないから好きに書いていいよ」

私が赤い顔を隠そうと、少しうつむき加減でそう言うと、


田舎娘は慣れた手つきで、ケチャップで何かを描き始めた。

耳と髭がある。おそらくネコかウサギであろう。

敢えて、何かは聞かなかった。


「では、これからおいしくなる”魔法”をかけますので、

 私と同じように、手でハートの型を作ってください~。」


”魔法の言葉を一緒に”とは、言われなかった。

(きっと、エラが何かを言ったのだろう・・・)


私は手でハートの型を作るのも嫌だったので、

それも断ろうとした瞬間、

左側から強烈な視線を感じた。


しっかりと、左を確認したわけではないが、

左野郎はこちらをガン見してるようだ・・・


「大丈夫ですから、ねっ?」

田舎娘も念を押してくる・・・


少し間をおいた後、私は生まれて初めて、

胸の前に両手の指でハートの型を作った、作ってしまった・・・


左からの視線も妙に怖かったし、

何より、酔いが回っていて、

正直もうどうでもよくなっていた。


「おいしくな~~れ!!」の、

掛け声に合わせ、私はハートを”オムライス”の前に掲げた。


「それでは~~」

軽くおじぎをし、田舎娘は去って行った。


左では(そうだよ、それ、それ)と言わんばかりに、

満足気な顔の男が田舎娘に軽く会釈をしていた。。。


ふと、店内の時計を見ると、ここへ着てから

45分ほど経っていた。

15分でこれを食べなければならないのかよ・・・


”魔法”の効果なのだろうか、カクテル”

この”オムライス”も、とてもおいしく感じた。

ここ一週間まともなモノを食べてなかった

ということもあったのだろうが・・・




少し急ぎ気味にオムライスをほおばっていると、

先ほど、左野郎とゲームをしていた医者が、

今まであまりその存在を気にしなかった

右2人と何やらやりとりをしている。


こちらも、例のゲームとやらをするようだ。


左から、ただならぬ殺気のようなものを感じたが、

私は気にしないフリをした。


先ほどの猫のゲームとは違うゲームをするようだ。

(人形が2体いて、飛び出た方が負けというゲーム)


「では、3分です」と言い

医者はタイマーのスイッチを入れた。


(なるほど、アレで時間を計っていたわけか・・・、

 3分ねぇ、、、それで500円か、、、)


右の方で繰り広げられる賑わいを感じつつ、

私はオムライスを食べ切った。


それと、同時に右での勝負がついたらしい。

右2人の勝ちのようだ。


心なしか、左からの殺気が強くなった気がした・・・


「負けちゃいました~~」

医者が後ろの引き出しからコインを取り出し、

それを右2人に渡し、共にどこかへ行ってしまった。


あのコインで、店のどこかにあるガチャガチャができ、

そこから何か”景品”が出るという仕組みのようだ。


1分も経たないうちに彼らは戻ってきた。


”特製ステッカー”なるものが当たったらしく

「おめでとうございます~~」と、医者は言い、

後ろの引き出しをガサゴソ探している。


「あった。」


医者は、何か”小さなモノ”を右2人に手渡した。。。


その”特製ステッカー”と思われるものを見て、

私はまた、吹き出しそうになったのだが、

右2人の反応も私とさほど変わらない感じで、

2人顔を見合わせて笑っている。


彼らがそのような反応をするのも無理もない。


その”特製ステッカー”なるものは、

直径2cmほど(10円玉ほど)のシールに、

その店のロゴがプリントされているだけのものだったのだ。


医者は、

「非売品ですから、貴重ですよ~」と言っているが、

私にはどう見ても貴重なものには見えなかった。


それは右2人も同じようで、

「これ、景品で何番目ぐらいのものなの?」と、

必死に食い下がっているが、

医者はそれを笑顔であしらっていた。


(500円を支払って、且つ、ゲームに勝った見返りが”アレ”では・・・)

右2人の気持ちは痛いほどよくわかった。


あのステッカーが、一体どれほどの価値があるものなのか、

左野郎に聞いてみたかったが、気づくと彼の姿はなかった。

1時間経っていたようだ。


まもなく、私のところにもメイドが来て、

「そろそろ、お出かけのお時間なのですが・・・」


私は支払いを終え、

「いってらっしゃいませ、ご主人様」

という声を背中で聞き、少し足早に店を後にした。


入場料 700円

オムライス 1100円

オリジナルカクテル 1000円

計 2800円也


帰り際、会員カードのようなもの貰ったが、

それを2つにパキッと折り曲げ、

道端に捨て、”秋葉原”にさよならを告げた。


もう、ここへ来ることもないだろう。