「一大決心」と呼べる人生の岐路は
人が生きていくなかで、いくつくらいあるんだろう。。
 
そこで、過去の自分が選択した道と違う道を選んでいたら、
全く違う人生を歩むことになったのだろうか。
今、出会っている人達とも、出会うことができなかったのだろうか。
 
そう考えると、自分の選択に間違いなんてなかった。
今だからこそ、心からそう思える。

あの日の決心に後悔はないと。
  

 
●東京へ
 
「俺、東京で働こうと思うんだ。」
 
就職活動中の俺は、ずっと悩んでいた就職場所について
自分の結論を彼女に伝えた。
 
実家に戻って就職すれば、中学、高校の友達もいるし、
彼女とも遠距離にならなくて済む。
不満なんて何一つない。
 
 
でもなぜかそこに収まりたくない。と感じる自分がいた。
東京で自分を試してみたい。
もっと色んな人と出会いたい。
もっと色んなものに触れてみたい。
という気持ちの方が強くなっていた。
 
 
その言葉を俺から聞いた彼女は、間髪いれずにこう言った。
 
「私も行く。一緒に住もう。」
 
俺は相当悩んだ。
 
確かに彼女とはずっと一緒にいたいと思う。
これ以上、遠距離になるのは辛い。。
遠距離を乗り越えられる自信がないわけではなかったが、
とにかく一緒にいたい、、という気持ちが強かった。。
 
でも、まだ社会人として自立した生活を送ってもいない俺は
不安で一杯だった。
一人前にもなっていない男が、
大事な女性を幸せにすることができるのかと、、
 
しかも、彼女も東京に住むということは、
やっと軌道に乗りかけた彼女のダンサーとしての仕事を
辞めることを意味する。
 
色んなことを考えた。
 
色んなことを話し合った。
 
そんな時間の中で、俺の中での彼女は
もはや俺にとって欠かすことのできない存在となっていった。
「コイツとなら一生一緒にやっていける。」
と。
そう信じて疑わなかった。
 
若いから出来たこと。と言ってしまえばそれまでだが、
少なくとも、その時の俺は、
どんなことがあっても二人でやっていけるという
根拠のない自信を持っていた。
 
その自信にかけてみたんだ。

 
その頃はもちろん、失敗した時のことなんて頭にない。
ただ、二人で力を合わせれば、どんな壁も乗り越えられると、、
本気で思っていた。
本気でがんばろうと決意した。
それまでの人生で一番の決心だった。
 

 
無事、東京への就職が決まり、
俺が大学を卒業する直前の2月28日。
俺たちは籍を入れた。
 
ただ一人、最後まで心配していた俺の親父を説得して。