所属している全国社外取締役ネットワークに寄稿した文章を3回にわたってご紹介します。今回は「企業は何を与えるものか?」というテーマです。


【4つの資本に対して何が対価となるのか?モニタリング制度の現状は?】


①産業資本について


★企業が支払う対価は何か?


これは単純であり、利用したサービスや財に対して適切な対価を与えればよいということになります。


この対価決定のメカニズムは価格競争があり洗練されており、会計監査の制度により透明性があるといえます。


また価格競争もインターネットで情報収集が容易になっているため透明性は増しているといえます。


★社外取締役以外のモニタリング制度はあるか?


会計監査がモニタリング制度として存在しています。


しかし、上場企業において、会計監査の網をかいくぐって、経費が水増しされる、循環取引がなされるという問題もおきたため、J-SOXなどでさらに規制されるようになったと考えることができると思っております。


この点は、外部コンサルタントも十分におり、昨今の規制強化によりさらに透明性が増しているといえます。


従って、社外取締役以外のモニタリング制度がかなり整ってきつつあるといえます。IFRSの原則論に基づいた会計制度が導入されることで、その運用はさらに洗練されると思います。



②金融資本について


★企業が支払う対価は何か?


金融資本は、銀行などのローン、社債などの市場性デット、株式などのエクイティに分かれます。それぞれについて議論します。


・銀行ローン

銀行ローンは利子という明確な対価があるためわかりやすいといえます。


しかし、ローンには貸倒という問題があるため、それが発生すると対価が著しく減少することになります。


このリスクを軽減するために、銀行自身が常にモニタリングしています。


そう考えると社外取締役がモニタリングすることの必要性は銀行ローンに関しては低いといえます。

上場企業にも同じことが当てはまると言えます。


・市場性デット


社債、サブプライムローンなどを利用した仕組み債は、基本的には利率とデフォルトで対価が決まります。


為替予約やヘッジなども市場性デットとして位置づけつことができます。


これらは常にモニタリングしている主体がおらず不特定多数の投資家に販売されるものです。

銀行の役割をしているのは、格付け会社や引き受けの証券会社ですが、サブプライムローン問題を見るとうまく機能していたとは言えず、その結果、格付け機関への規制強化が議論されていると整理することができます。


また、サイゼイリヤのように為替予約で大損をする場合もあり、この分野はまだモニタリングが発展途上であり、企業が発行する場合でも、企業が投資する場合でもモニタリングを補完する上で社外取締役の役割は大きいといえます。


・エクイティ


対価は投資家が求める資本コストを上回るリターンを挙げるかどうか、という視点で計測されます。


非常に難しい分野であり、モニタリングすることが困難です。対価すなわちキャピタルゲインと配当が将来どうなっていくのかを分析モニタリングするために必要な資質は、幅広いビジネスモデルの分析・及び実体験と資本コストや企業価値に対する理論的知識となります。


★社外取締役以外のモニタリング制度はあるか?


結論から言えば、銀行ローンはかなりあり、市場性デットと株式についてはあまりない、ということになります。この部分については社外取締役によって補完されれば、より理想のガバナンス体制に近づくことができるのではないかといえます。


株式については株式総会などがありますが、個人投資家などの影響力はよわく、オーナーや系列企業などが議決権の大半を抑えている場合は、株式総会は上場企業としてのモニタリング制度としては力不足の面もあります。


また、そもそも株式価値については、非常に分析することが困難であり、将来にわたるキャピタルゲインがどうなるのかモニタリングすることは並大抵のことではありません。


そのため、上場企業の場合は、上場審査時に非常に厳しくモニタリングされます。引き受け証券会社及び、証券取引所が厳格に審査します。


問題は上場後です。大企業であれば、証券アナリストがコメントを出していきます。しかし、中堅企業で証券アナリストがいない場合で、オーナーや系列企業などが議決権の大半を抑えている場合などでは、だれも資本コストに見合ったリターンを将来にわたって出し続けるのか、投資家の立場として体系的にモニタリングがなされていないということになります。


デットは少なくとも格付けがありますが、そのようなものが株式にはありません。あえて言えば会社四季報ということになりますが、これで株主価値を網羅的に分析することは困難です。


そういう意味では、論点からはずれますが、上場企業であれば必ず、独立系の証券アナリストレポートがだされることが必要とする規制も必要かもしれません。


企業から直接お金を利益相反の問題がでるので、証券取引所が認定して、独立系ののアナリストの会社が担当するということにすればよいかと思います。


この点を補う意味で幅広い会社経営経験、ビジネスモデルに対する深い造詣、企業価値理論に対する深い理解、などを持ち合わせた人物が社外取締役としてモニタリングすることは非常に有用ではないかと思います。


社外の方の方がより幅広い視点で物事を見ることができると思います。独立性のある社外取締役の強化はこの点を重視して議論すると建設的になるのではないかと思います。


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